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タイムスリップ (2)

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「おじさん、さっきからこの人何?
 おじさんの友達?カフェのお客さん?」

すずめはわけがわからず
諭吉に尋ねた。

「すずめ、その人は馬村くんだよ。」

「は?」

「えっと、彼は22歳の馬村くんで、
 俺も今42歳…なんだけど…」

「???!!!」

すずめの目がぐるぐる回っている。

「オマエが混乱するのも仕方ねえな…
 オレ達だって信じられねえんだから。」

今すずめの目の前にいる男性は、
背や髪型、着てるものが違うが、
馬村にそっくりではある。

でも兄弟かなと思うほど似ているが、
すずめが知っている馬村ではない。

「ホントに馬村…?」

「高校も大学も卒業して
 社会人してるオレだよ。」

「ウソだ…今…今って西暦何年?」

「20○○年。」

「…6年後だ…信じられない。」

おじさんも言われてみれば、
少しだけ老けている気がする。

「目が覚める前、
 オマエ何してたんだよ?」

大輝に言われ、すずめは思い返す。

「学校に行こうと家を出たら…
 こんな猫を知らないかと
 変なお婆さんに写真を見せられて…」

「さっき見たと答えたら、
 腰を悪くして歩けないから
 連れてきてと言われて…」

「猫を見た場所に戻ったら逃げられて…
 捕まえようとしたら
 公園の木の上に登っちゃって…」

「なんか時間かかりそうだから
 学校に風邪休むって電話して」

「何やってんだよ、オマエ。」

すずめから話を聞いている途中で
そうだ、こいつはよく遭難したり
迷子になったりする奴だったと
大輝は思い出していた。

「木登りとか東京来てから
 やってなくて久しぶりだったから
 なんか嬉しくて。」

テヘヘとすずめは頭に手をやる。

「猿かよ。」

「あ、そういうツッコミは
 馬村っぽいね。」

「ぽいって…。」


すずめは構わず話を続ける。

「でも登ってみたら
 手入れしてある木で
 なんかツルツルしてて…」

「バランス崩して
 落ちたとこまでは記憶あるけど、
 次目が覚めたらここだった。」

すずめは気を失った経緯を
自分の覚えている範囲で説明した。


「こっちの世界のすずめは、
 職場の階段から転げて
 頭を打ったらしい。」

「こっちの世界のすずめ?」

「22歳で社会人やってるオマエ。」

「未来の自分と
 入れ替わったってこと?!」

「たぶんな。」

「頭打ってしばらく職場のやつと
 会話もしたらしいけど、
 とりあえず病院行けって言われて
 早退して帰ったみたいなんだけど…
 その辺の記憶は?」

「え…頭打って…朦朧として。
 与謝野さんって誰かに何度も呼ばれて、
 病院行ったほうがいいって
 帰れ帰れ言われて、
 とりあえず家に帰って
 寝たような気もする。」

大輝は大きくため息をついた。

「もうその時には
 入れ替わってたんだろうな。」

「諭吉さんから、オマエが
 家で寝てるけど目を覚まさない
 って連絡もらって来たんだ。」

「どうやったら戻るの…?」

「昨日観た映画では、
 過去にとんだ主人公と、
 今の時代に来た主人公が、
 同時に強く帰りたいと思えば
 帰れてたけど…」

「同時にとかって
 どうやって?」

「22歳のオマエを感じる
 テレパシーみたいなのは
 ないのか?」

ブンブンと頭を横に振る。

「痛…」

頭を振るとズキズキと痛む。

「無理しなくていい。
 オレが帰る方法をみつけてやるから。
 ちょっと休んでろよ。」

言い方はぶっきらぼうだが、
優しさが自分の知っている馬村と
同じだとすずめは思った。

そしてさっき抱きしめられた時、
石けんの匂いがした。

馬村なんだ。


すずめは想定外のことに
不安もあったが、
馬村がいてくれると思うと
思ったより落ち着くことができた。

作品名:タイムスリップ (2) 作家名:りんりん