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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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 ガルシアは魔導書を閉じた。ガルシアの活躍により、要塞化したマグマロックの外にいた衛兵的魔物は、殲滅された。
 ピカードは、繰り返す驚きのあまりに、口をぱくはくさせて腰を抜かしていた。
「どうしたピカード? せっかく作戦成功したんだ。いつまでも呆けていては、敵が立ち直ってしまうぞ」
 ガルシアは手を差し出した。
 ピカードは、はたと正気に戻る。
「……先程の急降下に、あの戦いよう、驚きすぎて寿命が百年は縮みましたよ……」
「お前もレムリアの民であろう。百年くらい、どうという事ないのではないか?」
「まあ、そうですが、むちゃくちゃな事言ってくれますね……」
 ピカードはガルシアの手を取り、腰を上げた。
「外の敵はガルシアに取られてしまいましたね。いいでしょう、内側の敵は僕がまとめて相手しましょう!」
「ああ、俺も敵の大将まで力を温存しておきたい。頼むぞピカード!」
 ガルシアとピカードは、要塞化したマグマロック内部へと駆けていった。
 侵入者は外部で討ち果たそうというつもりだったのか、内部の守りは非常に手薄で、外部での騒ぎが響いてか、こちらも統率が乱れていた。
「しし、侵入者だぁ!?」
「外の奴らは何をしていたのだ!?」
 魔物達は慌てふためいていた。
「これなら、僕一人で十分ですね。ガルシアは、まあ、流れ矢に当たらないようにだけ気を付けていてください!」
 ピカードは左半身に構え、両手両足にエナジーを込めた。
『フリーズ・チャージ!』
 ピカードの拳と脚が、冷気に包まれ青く光る。
「ふっ……」
 ガルシアは小さく笑い、腕組みして戦闘体勢を取らない。ピカードのエナジーを見て、ここは彼に全て任せることにした。
「ぜえいっ!」
 ピカードは大きく踏み込みながら、左拳を振り上げた。振り上げた拳から氷が作り出され、魔物達を吹き飛ばす。
『フリーズ!』
 ピカードは、続けざまに冷気を放ち、魔物の群れを凍てつかせ、動きを封じた。
「はあああ……!」
 気合いを込めながら、ピカードは右手に氷の塊を作り出した。そしてその拳を振って、凍結した魔物達に向けて塊を打ち出した。
 魔物達は、凍らされた五体ごと粉々に砕かれていった。
 敵の真ん中に入ったピカードは、回し蹴りを放って周囲の魔物を一掃する。
『バイオレントクール!』
 ピカードは地面を殴り付け、エナジーを発動した。ピカードを中心に、周囲に鋭く巨大な氷柱が展開し、魔物の群れを貫き通していく。
『アイシクル・ナックル!』
 右手に氷柱を纏わせ、ピカードは更に魔物に追い討ちをかける。ピカードは前方に突っ込みながら、魔物を次々に串刺しにしていった。
「とうっ!」
 壁際まで魔物を貫き通すと、ピカードは跳び、空中で冷気を全身に纏う。
『アイスミサイル!』
 ピカードは冷気を圧縮させ、縦横無尽に氷柱を、矢のごとく飛ばした。
「これでとどめだ!」
 ピカードはエナジーで氷の柱を作りだし、それを足場にした。その上で精神力を増幅させ、強力なエナジーを身に纏う。
 ピカードは足場から跳び、増幅したエナジーを解き放つ。
『オーバーフリーズ!』
 ピカードを中心に、強力な冷気が放射され、辺りにいた魔物全てを凍り付かせた。そして右手に全ての力を込め、落下の勢いと共に全力で振り下ろした。
『ダイヤモンドバーグ!』
 最高の硬度を誇るという石、ダイヤモンドをも打ち砕くほどのピカードの拳が、凍り付いた地面に打ち込まれると、凍った魔物にも衝撃が伝わり、粉々に砕け散っていった。
 砕けて散っていく氷は、全方位へと散らばっていく。まるでそれは、強力な冷気がなせる現象、ダイヤモンドダストのようであった。
 ピカードの、息をもつかせない連続したエナジーと体術による攻撃により、マグマロック内部の魔物も一掃された。
「ふう、終わりましたよ。ガルシア」
 ピカードは、魔物を殲滅したものだと、完全に思い込んでいた。
 ガルシアは違っていた。ダイヤモンドダストのように、氷がきらきらと輝き散っていく中、ただ一匹だけ生き残っているのを見付けていた。
「ガルシア……?」
 残った魔物にまるで気付いていないピカードは、険しい顔をしているガルシアを見て首をかしげる。
「魔との融合、『サモンクロス・ハウレス』!」
 ガルシアに、豹のような悪魔の姿が重なり、ガルシアの手は毒を持った鉤爪に変化した。機動力も人間のものを超え、一瞬にして魔物へと迫った。
「ガルシア!?」
「ひ、ひいっ!」
 ガルシアが捕らえた魔物は、キボンボとマグマロックを隔てる川にて相手取ったオークであった。
 ガルシアはオークの首を掴み、紅の鉤爪の先端を、オークの顎へと突き付ける。
「お、お助け……!?」
「騒ぐな、貴様に訊きたいことがある」
 ガルシアは鋭い目付きで問う。
「わ、分かった! 何でも話す、話すから助けてくれ!」
「ふん、貴様の答え次第だ。では、訊こう。貴様らの主はどこにいる?」
 オークは震えながら答える。
「お、奥に行った先に、バルログ様は向かわれた……」
 要塞と化したマグマロックであるが、その中心部は変わらず火口があり、そこに火のエレメンタルパワーが溢れていた。
 その火の力が満ち溢れる場所に、バルログは暗黒錬金術を生み出すための礎を築いていたのだった。
 デュラハンの手下の一人、ビーストサマナー、バルログは、恐らく礎だけは守るために行ったのだとオークは言う。
「……まことであろうな?」
 ガルシアは、爪先を更に突き付けた。爪先はオークの皮を切り、少し血を出した。
「ほ、本当だ! バルログ様は、これからここを離れようというつもりなのだ!」
「なんですって!?」
 ピカードは、ガルシアへ駆け寄って言った。
「ガルシア、もしそいつの言ってることが本当なら、急いでバルログを追うべきです!」
 ガルシアの答えは否であった。
「まだ、こやつから聞き出すことがある。おい、貴様、シバという少女を知らぬか?」
 オークは恐怖にひきつった顔を横に振る。
「し、知らねえ! オレは何も……。ぎゃああっ!」
 ガルシアは、爪を一本オークの顔に突き刺した。
「隠すと楽には死ねんぞ? 苦しみたくなければ、知っている事全て話せ」
「ほ、本当に、知ら……。っは!?」
 オークは何か思い出したように言った。
「……この要塞の地下牢に、一人女がいる!」
 シバか、と一瞬思うガルシアであったが、早合点せずに、より深く締め上げて情報を捻り出す事にした。
「どんな女か言ってみろ。俺の知っている者と少しでも違っていたら、殺す」
 ガルシアは首を握る手を、ぎりぎりと強める。
「ぐっ! か、褐色の肌で、巻き毛の奴だ!」
 ガルシアやピカードの知る少女と全く違っていた。彼らの知る少女、シバは、どちらかといえば色白で、金色の短髪である。
 ピカードは、今締め上げられているオークの命は終わった、そう思っていたが、何故かガルシアは殺そうとしなかった。
「ほう、ではもう一つ訊こう。そいつはエナジーを使うことができるか?」
 ガルシアは更に質問した。
「え、エナジー……? あ、ああ! 使えるぞ、爆発のエナジーを! 何度もバルログ様に向かって撃っていた!」
 オークは必死に答える。