二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

INDEX|12ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 

 獣のような巨大な手が、異世界から伸び、漆黒の爪が両世界を繋ぐ空間をばりばりと破壊していく。やがて異世界から空間を破りながら、バルログに勝るとも劣らないほどの、強靭な体躯を持つ魔物が姿を現した。
「グラアアアア……!」
 バルログが異世界より召喚した魔獣の王、ザガンは地に下り立ち、天を仰いで身の毛がよだつほどの咆哮をあげた。
 ザガンは猿のような体をし、脚は猛牛のもの、背中には蝙蝠の羽を持ち、その頭は獅子のようであり、更には羊のように、ねじれた角が頭の両脇にあった。
 片手には身の丈ほどのハルバードを持っており、バルログに獣王と呼ばれるに足るほどの威厳を誇っていた。見ようによっては、バルログの方が手下に見えてしまうほど屈強な容姿をしている。
「……呼んだか、主よ?」
 ザガンは、地の底から響くような、非常に低い声を出した。
「我ら魔物に害をなす敵だ。ザガン、その力で捻り潰してやるのだ!」
「あい分かった、こやつらを倒せばよいのだな……」
 バルログのビーストサマナーの二つ名は伊達ではなかった。力だけなら、バルログに勝るほどの魔獣を、見事に手玉にとっている。
「ガルシア、どうやら奴は、本当にただの馬鹿ではないようですね。あれほどの魔物を従えるなんて……!」
「聞こえたぞ、青髪の男! 俺様はバカ呼ばわりされるのが一番嫌いなのだ! ザガン、あいつからやってしまえ!」
 バルログは激昂しながら命じた。
「いいだろう……」
 ザガンはピカードに向けて、得物のハルバードを構える。
「相手にとって不足はありません。僕がお相手いたしましょう!」
 ピカードは両手両足に、エナジーで冷気を纏った。
「……俺を相手に丸腰か。痛い目を見るぞ?」
「へえ、それは楽しみですね!」
 ピカードとザガンは睨み合う。
 次の瞬間、ピカードの手の氷の刃と、ザガンのハルバードの刃が鋭い音を立ててぶつかり合った。
「ほう、俺の得物と打ち合っても砕けんとは、そうとう強固な氷のようだな……」
「丸腰だと侮ってはいけませんよ。僕のエナジーは、氷を使って自在に攻撃、防御できる。言うなれば、この体そのものが僕の武器だ!」
「……面白い、ならば全力で行かせてもらう!」
 ザガンはピカードの氷を弾き、ハルバードを渾身の力で地面に叩き付けた。叩いた地点を中心に、周囲に衝撃波が走る。
「甘いですよ!」
 ピカードは宙を舞って衝撃波を回避していた。そして大振りし、隙だらけとなったザガンの背に向けて氷柱を放つ。
「甘いのは貴様だ!」
 ザガンはハルバードを一気に振り上げた。
「何っ!?」
 ザガンのハルバードから、空中にザガンを取り囲むように衝撃波が渦を巻いた。
 ピカードはとっさに、氷を凝固させて盾を作り出した。盾はザガンの放つ衝撃の前に、いとも簡単に崩れ去り、ピカードは後方に大きく弾き飛ばされた。
 ピカードは体勢を立て直して着地する。そしてすぐに視線をザガンへと戻した。
ーー隙がない……!ーー
 ザガンはハルバードを肩に担いだ。
 ザガンの武器は、一見すれば大振りで、隙の多いものであるが、ザガンの強靭な肉体が、それをまるで軽い棒切れを振るかのように、扱うことを可能にしていた。
「どうした小僧、威勢がいいのは最初だけか?」
 ザガンは挑発するように言う。しかし、これで終わるピカードではなかった。
「そんなに大きな武器を軽々と扱うなんて、驚きましたよ。これは、力押しでは勝ち目がありませんね……」
 ピカードは落ち着いて考えた。
 巨大なハルバードを軽々と振るザガンではあるが、やはり得物が大きいだけあって小回りは利かない。ならば速さで翻弄すれば、どこかに必ずや隙が生じるのではないか。
ーーよし……!ーー
 ピカードは策を立てた。
『バイオレントクール!』
 ピカードはエナジーを発動した。地面から次々と氷柱が出現し、ザガンを貫かんとする。
「小賢しい!」
 ザガンは地面を打ち、衝撃波で氷柱を吹き飛ばした。
『フリーズロック!』
 ピカードは目の前に、巨岩のような氷塊を作り出し、それを押しながらザガンへと駆け寄っていく。
 そしてザガンの間合いに入る前に、拳で氷を砕いた。破片がザガンに向けて飛び出していく。
「無駄だ!」
 ザガンはハルバードを振り、飛び込んでくる氷の破片を砕いた。飛んでくる氷の先には、ピカードがいるはずだった。
「いない!?」
 砕けた氷塊の先に、ピカードの姿はない。
「こっちだ!」
 ザガンが振り返るより先に、後ろから殴打を受け、ザガンは地を二転三転した。
「貴、様……!」
 ザガンは自らが転げて起こした砂埃の先を睨む。その向こうには、ピカードが立っていた。
 ピカードは巨大な氷塊の後ろに姿を隠し、そしてあえて砕かせることにより、ザガンの目を眩ませた。
 ザガンが目の前の氷に気をとられている隙に、ザガンの背後に回り、拳を振るったのだった。
「どうですか、これはかなり効いたでしょう!?」
 ザガンはハルバードの柄先を杖にして立ち上がった。そして首を捻り、コキコキと音を立てた。
「味な真似をしてくれる……。ふん、俺を吹き飛ばしたのは称賛しよう。だが、まだまだ軽いな。その程度では俺は砕けぬぞ……」
 ザガンの言葉ははったりではなかった。ピカードは渾身の一撃を与えたつもりであったが、ザガンに大きなダメージがあるようには見えない。
 頑丈そうなのは見た目だけでなく、中身も伴っているようだった。
 これでは闇雲に攻撃しても無駄である。的確に急所を攻めなければ、ザガンを打ち倒すことはできないであろう。
「……何やら考え込んでいるようだが、ゆっくりはさせんぞ。次はこちらから行かせてもらう!」
 ザガンはハルバードを担ぎながら、ピカードに攻めかかった。その巨躯からは想像できないほどに速い。
「……っく!」
 ピカードは後ろに飛び退いた。そのすぐ後に、ザガンのハルバードが振り下ろされた。
「ぬうん!」
 間を置かずにザガンは、ハルバードの先端で槍のように突いてきた。
 ピカードは避けきれず、氷の盾を作り、ザガンの攻撃を受けた。しかし、盾は簡単に壊され、ザガンのハルバードはピカードの頬を掠めた。
『バイオレントクール!』
 ピカードはエナジーで牽制しながら、更に後ろへ下がった。
「どうした、逃げてばかりでは戦いにならんぞ!」
 ザガンはハルバードで地面を打ち、衝撃波を起こしてエナジーを相殺した。
「……逃げる? とんでもない、これくらい想定内ですよ!」
 ピカードは頬の血を手で払いながら、余裕の表情を見せた。
「ちょっとあなたの力を推し量っていただけです。これからが本当の戦いですよ!」
 ピカードは半身に構えた。
「ふはは、そうでなくてはな! 行くぞ!」
 ピカードとザガンの激しい戦いが始まった。
 空中に大きな魔法陣が展開された。
「地獄の破壊炎、『ハーデス・ブレイズ』!」
 ガルシアの詠唱と共に、魔法陣から大火球が落ちてくる。それは一瞬にして爆ぜ、周囲を炎に包み込んだ。
「おわっ、あちち!」
 バルログは炎に巻かれた。しかし、熱がるものの、炎はバルログに十分足り得るダメージを与えない。
「毒川の流れ、『ポイズン・ストリーム』!」