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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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 デーモンの肩は、イビルホーク体当たりを弾き返し、ハウレスの毒爪を簡単に折ってしまった。
 デーモンの渾身の体当たりはバルログにも届いた。
「があっ!」
 バルログは体当たりをまともに食らい、尻餅をついた。
「ぐうう……、うおっ!?」
 バルログは涎を垂らしながら、痛みに悶絶していた。地獄の炎を食らっても、あらゆるものを溶かす毒水を受けても、大したダメージを受けていなかったバルログが、初めてまともにダメージを受けていた。
 攻撃を終えると、デーモンは魔道書に帰還した。
「魔との融合、『サモンクロス・タナトス』!」
 この好機に、ガルシアは間髪いれずにタナトスと融合した。
 タナトスとの融合は、身に付けたガウンの裾が少し伸びた程度で、他の融合と比べると、見た目の変化はほとんどない。
 しかし、ガルシアは溢れんばかりの魔力を感じていた。謎の声が言っていた死神の力とはこれのことであると分かるのに時間はかからなかった。
 他の眷属との融合の時には、体内に吸収されている魔道書も、今は手元にある。つまりは、融合している間も魔術を使用できるということである。
 魔術に特化した融合、それがタナトスとの融合であった。
「早く立て、バルログ」
 バルログはまだ痛みに苦しんでいた。
「勝負はまだこれからだ!」
 ガルシアは口元に笑みをうかべ、バルログを指さすのだった。
    ※※※
 死神の力が得られ、ガルシアの魔道書の内容が、大きく変わっていた。
 召喚する類のものは消え、もとあった呪文も全く異なっていた。
「うぐぐ……、調子に乗りおって。行け、ハウレス、イビルホーク!」
 しかし、そこにはハウレスも、イビルホークの姿もなかった。
「何故だ、あの程度の体当たりで消えるはずが……」
 バルログは、どうして二体の魔獣が姿を消したのか、訳がわからなくなっていた。
「混乱しているようだな? なら教えてやる。俺のネクロノミコンの内容ががらっと変わったからだ」
 イビルホークとハウレスはどちらも、バルログの手に落ちていたといっても、召喚されたのはガルシアの魔道書によるものだった。
 タナトスと融合し、魔道書の内容が死神の力で構成されるようになったため、その二体の魔獣の記述が消え、その結果二体は在るべき所に帰還したのである。
 ガルシアは説明したが、バルログは理解できていないのか呆けていた。
「うぐぐ……、分からん! 何故だ、魔獣ならば俺様の言いなりになるはず!」
 ガルシアの魔道書から、ハウレスを無理矢理召喚した時と同じように、魔獣を召喚すること、そして使役することに関して、バルログは納得がいかない様子である。
 脳まで筋肉のような愚か者に見えるが、召喚の腕に関しては並々ならぬこだわりがあるようだった。
 ガルシアはそのこだわりさえも打ち砕いた。
『デス・バインド!』
 ガルシアは死神の力の魔術を詠唱する。すると、影のような塊がバルログを縛り付け、一切の身動きを止めた。
「ぐお、体が、動か、ん!」
 バルログの体はしっかりと影に固定されていた。
 ガルシアの手も影に包まれている。
 ガルシアの手が、バルログを縛る影の縄と結び付く。そしてガルシアがゆっくり手を上げると、バルログも同じように、上へと持ち上げられた。
『デス・ウェイブ!』
 まるで物を投げるように、ガルシアが手を振りかぶり、下ろすとバルログは放物線を描いて吹き飛ばされ、壁に激突した。
「ぐっ、ふぉ……」
 バルログは、ぶつかった壁の、バラバラ落ちる破片と共に地に伏した。
『シャドウ・スルー!』
 ガルシアは影と一体化し、瞬間的にバルログとの距離を詰めた。
 バルログは驚きながらも、立ち上がるのと同時に拳を振るう。しかし、その攻撃は全くの無駄だった。
『デス・キネシス!』
 ガルシアはバルログへと手を向けた。今度はガルシアから発せられる、目に見えない力によって、バルログの動きを封じ込める。
「うう、おおお……!?」
 バルログはその力により、空中に浮かび上げられた。
 そしてガルシアは詠唱する。
『ブラッド・レイン!』
 地獄で拷問を受ける、大罪人の血を召喚し、バルログの上から雨のように降らせた。
 ガルシアの降らせた血の雨は、当たった者の生気を吸いとり、バルログから体力を大幅に奪っていった。
「ぐおぅ……」
 脱力しきったバルログは、真っ赤な血を浴びたまま、地に崩れていった。
 しかしすぐに、バルログは体を震わせながら立ち上がってしまう。
『デス・ウェイブ!』
 ガルシアは、地に転がる岩をいくつも浮かび上がらせ、それをバルログへと放った。それらはバルログに命中し、一つは顔面に激突した。人間であれば、卒倒するほどの威力である。
「ぬうう……、まだよ……」
 バルログはやはり倒れない。大きな図体に見合うだけ、もしくはそれ以上の頑丈さを持っているようだった。
「ちっ、さっさと倒れればよいものを……」
 ガルシアは、バルログの頑丈さに嫌気が指し始めていた。
 不意にバルログは、ザガンを召喚したときのような動作を始めた。
「魔に潜む毒蜂の群れよ、我が前に大軍を成せ!」
 空間に魔法陣が展開し、バルログはその中央部を大槌で叩き付ける。
 魔法陣と共に空間が割れ、現れた異世界の一部から、数え切れないほどの蜂が出現した。
 まさに蜂の巣をつついたように、魔の蜂は大量に飛び出し、辺りが恐ろしい羽音と共に真っ黒になった。
 魔の蜂は一匹、一匹が自然に存在するものより遥かに大きく、紫に黒の縞模様の腹という見るからに毒々しい姿をしている。
「はははは……! どうだ、巨大な蜂の群れに遭ってしまった気分は!? 怖いだろう? こいつらは俺様が召喚する魔物の中じゃ一番弱い。だが、群れられたらどうだ? いくらお前でもひとたまりもあるまい!」
 バルログはうるさい笑い声を上げた。
「こいつらは弱い。が、それは力が弱いだけだ。こいつらの一番恐ろしいところは、猛毒の針だ!」
 バルログ曰く、この蜂が持つ毒は非常に強く、巨大な魔物もその毒で倒せるほどのもの、とのことであった。
 力が強く、巨体を誇る魔物でさえも、この蜂に刺されれば死に至る。その相手が非力な人間であれば、刺された瞬間に、全身が腐敗するほどの、強い毒を持っていた。
「さらに悪い事を教えてやろう。こいつらには、あらゆる毒を無効果にする力がある。貴様の得意な毒攻撃は通じない。まして焼き払おうにも、数が多い上素早い。終わったな、わはははは……!」
 ガルシアの広範囲に及ぶ魔術、『ポイズン・ストリーム』では退けることができず、地獄の炎で焼き払おうにも、全てを焼くことはできないだろう。必ず何匹か残り、ガルシアに瞬く間に死を与えることになろう。
 かなり危険な状況であるが、ガルシアに慌てた様子は見られない。
「毒川の流れ、『ポイズン・ストリーム』!」
 ガルシアは、猛毒を含む水の波を立てた。猛毒の波は、恐ろしく低音の羽音を立て、群れを作る魔虫に押し寄せる。
 少し触れただけで、大きな魔物も一瞬にして溶かしてしまう毒水を受けても、魔虫の群れは一匹も死なない。
「確かに、貴様の言う通り毒は効かないようだな」