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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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「ふはは! バカめ、最早万策つきたようだな。行け、魔の蜂どもよ!」
 バルログが手を振って合図すると、魔虫の大群が一斉にガルシアへと襲いかかった。
 ガルシアは徐に、押し寄せてくる群れに手を向けた。
『デス・バインド!』
 死神の力で、黒い塊を六つ出し、空中に六角形になるように配置した。そしてガルシアが空中に指で六角形を描くと、その軌跡が黒い線になった。
 更にガルシアは、空中の六角形の中に十字の軌跡に、加えてばつ印の軌跡を描いた。すると、空間に展開された軌跡は、巨大な蜘蛛の巣のようになった。
 魔虫の大群は、まさに巣にかかる獲物のように、次々に縛り付けられていった。
「魂の破壊……!」
 ガルシアは自らのもとに、魔虫一匹一匹の小さな心臓を集める。
「ハートブレイク!」
 ガルシアが指を鳴らすと、集合した魔虫の心臓が、一瞬にして全て弾けた。
 活力を失った魔虫の群れは一気に死に、次々と消滅していった。
「そ、そんな……! 俺様のとっておきが……!?」
 勝利を確信していたバルログは、目の前に広がる、最後の手段が消えていくのを見て、開いた口が塞がらなくなっていた。
「毒に耐性を持つ魔物を召喚し、俺の広範囲魔術を無効化したのはさすが、と言っておこう。だが、残念だったな。いくら魔物と言えど、心の臓を壊されれば死ぬだろう。そして、それは貴様とて同じこと……」
 ふと、ガルシアは手の上に、黄色く光る物体を浮遊させる。
「な、何だそれは!?」
 ガルシアは、ゆっくりとバルログへと歩み寄った。それだけの事なのに、バルログに得体の知れない恐怖を与える。
「これは貴様の心臓と直に繋げるものだ。俺がこれを壊せば、貴様の心臓も破裂するだろう」
 ガルシアは、手の上の物体を軽く握りしめた。
「ぐあああ! む、胸が、苦しい……!」
 ガルシアが黄色い物体を握ると同時に、バルログの胸に激痛が走った。
「安心しろ、まだ殺さない。少し俺の質問に答えてもらう」
 そう言うとガルシアは、物体を握る力を弱めた。同時にバルログの苦しみもやわらぐ。
「ぐうう……、質問だと? そんなもの答える義理は、ぐああ!」
 バルログの胸に痛みが走る。
「口の利き方に気を付けろ。貴様など今すぐにでも殺せるのだからな。言え、シバはどこにいる!?」
 ガルシアはすごんだ。
「うう、知ら、ねえ……。ぎゃああ!」
「隠しても無駄だ。もう一度だけ訊ねる。貴様らがアネモスの巫女と呼んでいるシバはどこにやった!?」
 バルログは苦痛に耐えかね、ついに口を割り始めた。
「アネモスの巫女は、今頃もう死んでるだろう……」
 ガルシアは眉をひそめ、バルログの心臓と直結する物体を握り潰そうとする。
「ま、待ってくれ! やっぱりまだ死んでない! デュラハン様はイリスと融合するおつもりだ。そのためには、媒介する器が必要だった。それがアネモスの巫女だ!」
 ガルシアは表情を変えず、更に追求する。
「まことであろうな? その媒介する器は、死んでいても問題はないという事はなかろうな?」
「デュラハン様は生きた媒体が必要とおっしゃっていた。まだイリスとの融合は済んではいない。だからアネモスの巫女の身は安全だ!」
 バルログの話が本当ならば、シバはまだ生きている可能性が高かった。
 デュラハンがイリスとの融合を成し遂げていれば、間違いなく彼の計画は最終段階を迎えている事だろう。
 しかし、世界は瘴気に満たされているものの、デュラハンはまだ出現していない。シバの命はどうなっているか、まだ分からないものの、最悪の事態、デュラハンによる世界滅亡は起こされていないようだった。
「分かった、もういい……」
 ガルシアは黄色い物体を握り潰しにかかった。
「消えろ、バルログ!」
「うわ、た、助け……!」
「がはっ!」
 突如として、ガルシアとバルログから離れたところに、傷だらけのピカードが地面に叩きつけられた。
「ピカード!」
 ガルシアは意識がそちらへ向かってしまった。ガルシアに生じた隙を逃さず、バルログはガルシアを突き飛ばした。
「うっ!」
「食らえい!」
 不意を打たれ、隙だらけとなったガルシアに向け、バルログは大槌を振り上げる。
ーーまずい、これは防げない!ーー
 ガルシアが動けずにいると、『サモンクロス』が解け、タナトスが身代わりになった。
 タナトスは大打撃を受け、消えていってしまった。
「タナトスが!?」
 タナトスとの融合が解かれた事により、ガルシアから死神の力もなくなってしまった。
「ごほっ! げほっ……!」
 ピカードは何とか体を起こしたが、これ以上戦える状態ではなかった。
 そこへザガンが歩み寄り、ハルバードの先をピカードに向けた。
「なかなかやるようだが、俺を倒すにはあと一歩及ばなかったようだな……」
 ザガンはあと一歩と評するが、ピカードと比べるとほとんど傷をおっていない。
 ガルシアは早くピカードを助けようと、魔道書を開いて魔術を発動しようとした。
「魔との融合、『サモンクロス・ハウレス』!」
 しかし魔術は発動しない。
「何故だ、何故発動しない!?」
 答えはすぐに分かった。ガルシアにはもう、魔術を使えるだけのエナジーが残されていなかった。どうやら、タナトスとの融合は、相当エナジーを消費するものらしかった。
「くそ、こんな時に……!」
 ガルシアは急ぎ、ピカードの所へ駆け寄った。そして、ふらふらのピカードの体を抱え、ザガンから距離をとった。
 ザガンはあえて追わなかった。この戦いの勝敗はもう、決しているようなものだった。
「ピカード、大丈夫か!?」
「……っく! すみません。ガルシア、あいつ……、かなり強い……!」
「しっかりしろ! 今はこの場を去るぞ、歩けるな?」
「バカめ、今更逃げられると思っているのか?」
 いつのまにやらバルログが退路を塞いでいた。更に後方には、ザガンがハルバードを構えている。
 ガルシア達は挟まれてしまった。
「貴様、バルログ……!」
 ガルシアに後悔の念が宿った。
 このような事になるなら、シバの事を追求せずに、すぐにバルログを殺すべきだった。あの時のガルシアにはそれができた。それ故後悔の念は非常に強かった。
「よくも俺様をこけにしてくれたな! 倍返しだ、二人まとめて地獄に落としてやる! 行くぞ、ザガン!」
「御意……」
 前にはバルログが大槌を構え、後ろにはザガンがハルバードを振るわんとしている。
 ガルシアにはもう、一切のエナジーを発動することはできない。ピカードは立っているのがやっとの手負いである。
 まさに絶体絶命の危機が訪れんとしていた。
「くそーっ!」
 ガルシアは固く目を閉じた。しかし次の瞬間、異変は起きた。
「ぬおっ!? な、なんだ、あれは!?」
 バルログは空を見て驚愕した。紅蓮に輝く何かが、こちらにむかって飛翔していたのである。
「まさか貴様、まだ何かできたのか!?」
 バルログの驚きようは普通ではなかった。先のように、下手な芝居を打っているようではない。そもそも今、芝居をする必要性もない。
 ガルシアも空へと目を向けた。ザガンもピカードも、そこにいた者全てが空を見上げる。