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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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「地獄の眷属召喚、『サモン!』」
 ガルシアは詠唱と共に、右腕を挙げる。
『イビルホーク!』
 暗黒に生きる、黒い翼を持った鷹が姿を現し、ガルシアの腕に止まった。
「行け!」
 ガルシアは鷹を投げるように放った。ピーッ、という甲高い鳴き声を上げながら、鷹は弓を持つ戦士達に、その強固な爪と嘴で襲いかかる。
「ぎゃあああ……!」
 戦士達はあちこちを、鋭い爪で引っ掻かれ、矛先のような嘴で啄まれ、散々に逃げていった。
「ヒューイ!」
 ガルシアは、戦士達が逃げていくのを確認すると、指笛を鳴らした。
 鷹は戦士達をそれ以上追わず、ガルシアの所へ飛んで戻ってきた。そしてガルシアが差し出した腕の上に止まる。
「他にいないか……!?」
 ガルシアは、他に攻撃を仕掛けようとしている者がいないか見渡す。
「ガルシア、ここに留まるのは危険です。援軍が来るかもしれません。早く行きましょう」
 弓矢部隊が全員逃げ去り、前方は開いた。しかしピカードの言う通り、次はより多勢でやって来る危険があった。
「ああ、そうだな……」
 ガルシアも、一先ずこの場を離れるのに賛成する。
 この時、ガルシアもピカードも、他に敵はいないだろうと油断しきっていた。しかし、彼らの後方には、やはり茂みに身を隠し、毒矢が装填された吹き矢を構える部隊がいた。
 二人は、吹き矢の部隊にまるで気付いていない。吹き矢隊も、気配を察されていない事を確認し、今まさに矢を放たんとしていた。
 しかし、誰にも分からないであろうと思われる吹き矢隊の存在を、ただ一人、いや、一匹気づいているものがいた。
「ピーッ!」
 ガルシアの腕に止まっていた鷹は飛び、吹き矢隊に向かっていく。
「イビルホーク!?」
 鷹が飛ぶのと同時に、吹き矢隊は全員、矢を放っていた。
「ピィッ!」
 鷹は強く羽ばたき、巻き起こる風で吹き矢を全て落とした。そして吹き矢隊に向かって、襲いかかった。
「戻れ、イビルホーク!」
 ガルシアは、今度は声で直接指示を出し、鷹を自らのもとへ呼び戻す。
 鷹は指示通り、ガルシアの所へ戻ってきた。
「これは、少し本気を出した方がよさそうだな……」
 ガルシアは、鷹を腕に乗せながら呟いた。
「何をするつもりですか?」
 ピカードは訊ねる。
「大丈夫、手荒な真似はしない。少々驚かすだけだ……」
 ガルシアは、鷹を空に放ち、ネクロノミコンを開いた。
「深遠なる闇の翼、『ブラック・ウィング!』」
 ガルシアの魔導書、ネクロノミコンは、それが持つ色のまま黒く輝き、使役する鷹に、本来の姿へと変身させる。
 黒い翼を持つ鷹は、その本当の姿、イビルホークになった。これまでは、普通の鷹と大して変わらなかったが、黒を基調とする翼の縁が赤色に変色していた。また、巨大化した体は、ほとんど人と同じになり、まさに怪鳥と呼べる姿となった。
「蹴散らせ!」
 ガルシアの号令に合わせ、イビルホークは吹き矢隊へと飛びかかった。
「う、うわぁ!」
「化け物だぁ!」
 怪鳥の姿に恐れおののき、キボンボの戦士達は遠くへ逃げていった。
 ガルシアが魔導書を閉じて術を止めると、イビルホークはどこかへ消えた。
「……これでしばらく来んだろう」
 ガルシアは魔導書をしまう。
「ですが、彼らはキボンボの民でした。このまま突入しては、また襲われるのでは?」
 キボンボの戦士達は、あからさまな敵意を示していた。ピカードには、自分達の話をまともに聞いてくれるようには思えない。
「大丈夫だ。あれほどの力の差を見せ付けられたのだ。それでも尚攻撃してくるほど、彼らも愚かではなかろう」
 こうした文明の低い地に住む者は、絶対的な力を持つ者にひれ伏す。
 あの見るからに細身で非力なアカフブが、いかにも屈強な戦士達を束ねられたのも、エナジーという圧倒的な力を持っていたために違いなかった。
「行くぞ、ピカード。生け贄の少女も助け出したのだ。彼らも悪い顔はしないはずだ」
「そうだと、いいのですが……」
 ピカードは最後まで不安を拭えなかった。
 ガルシアとピカードは、キボンボの集落に足を踏み込んだ。
「これは……!?」
 かつて訪れたときのキボンボ村の姿はもう、どこにも無かった。
 家はいくつも廃墟と化し、人の気配がまるでない。本当にここに、人が住んでいたのか、疑いたくなるほど村は荒廃していた。
「なんと、ひどい……」
 ガルシアは絶句するしかなかった。
 ギアナ村のように、ここも一足先にデュラハンによって滅亡させられたのか、そう思えるほど惨たらしい風景が広がっている。
「あれは……?」
 ガルシアは見つめる先に、何かを見つけた。それは、首を落とされたガンボマ像と、そのすぐ前に無惨にも転がる死体。
「あっ、ガルシア!」
 ピカードが呼びかけたのは、ガルシアがもう駆け出した後だった。
 ガルシアは、ガンボマ像の傍らに転がる死体に近付き、腐臭に顔をしかめる。
 泥だらけで、顔の肉は腐れ落ちてしまい、骨の露出した体には、見るだけで胸の悪くなるほどの蛆が集っていた。
 しかし、その人物の特徴であった、赤いアフロヘアーはほとんどそのままの形で残っており、それがこの死体の人物を思わせる。
「アカフブ……」
 レムリアで見た風景にて、磔にされ、人々から拷問を受けていたアカフブは、今はもう、物言わぬ肉塊へと変貌していた。
 不意に、ガルシアに殺気が迫った。
「ガルシア、突然走り出して、一体……」
「来るな、ピカード!」
「うわっ!?」
 ガルシアとピカードの間の地面に、白羽の矢が放たれ、地に揺れながら刺さっていた。
 ガルシアは矢が飛んできた方を見る。家の屋根の上に、弓を構える戦士がいた。
 気が付けばいつの間にか、二人は戦士達に包囲されていた。
 ガルシアとピカードは、攻撃に対応できるよう、背中合わせになる。
「どうします、ガルシア?」
 ピカードは耳打ちする。
「彼らは人間だ。話は伝わるはずだ」
 ガルシアは言うが、とても話し合いなど通用する場面ではない。少しでも妙な動きを見せれば、一斉に矢を射かけられてしまう。
「……とはいえ、これでは何を言っても、聞き入れてもらえんかもしれんな。今度は、少し痛い目にあってもらうか……」
 ガルシアはネクロノミコンを取り出した。
「ガルシア! まさか殺すつもりですか!?」
「いくら驚かしても、彼らはまたやって来る。ならばしばらく眠っていてもらうしかなかろう……!」
 状況が状況なだけに、悠長に話している暇などない。戦士達から、ガルシアを仕留めるべく、キリキリと弓を引く音が聞こえる。
「はあああ……」
 ガルシアは気合いを込め、エナジーの力を黒魔術へと転換する。
 ガルシアの手の中に開かれた魔導書は、漆黒の輝きを放ち、上空に魔方陣を展開した。そして魔法の詠唱を始める。
「地獄の大火……」
「お前達、何をしている!? 弓を下ろせ!」
 殺気立つ戦士達を止める者の声が響いた。その声の主は、戦士達の間を潜ってガルシアへと姿を見せる。
「なっ!?」
「そんな、バカな!?」
 二人はこれ以上ないほどに驚き、言葉を失った。
「アカフブ様、どうしてお外に!? 早くお逃げください!」