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靴ベラジカ
靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第十話「グリーフ・ラッシュ」

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 ときわ中魔術部室、アーサー邸マナーハウス一室。 フェリクスのソウルジェムを持ち去った犯人を探すでもなく、ギルべぇは何とも付かぬ巨大な砲弾やら機材やらの搬出を手伝わされ、ハルドルは穢れ観測装置・ホワイトキャップの吐き出す数値のオーバーフローを見届けるまでもなく魔女の探索― ホワイトキャップに内蔵された隠しカメラのライブ映像を外付け接続モニターに表示し、システム化した斥候の視界と睨み合っていた。
 既に見当の付いているジェム窃盗犯の動向も気になるが、予想よりもすぐ傍に差し迫っていた魔女のパンデミックへの対応に追われ、藍の魔法少年が生み出してきた発明品と共に、魔法の影響で機械的な思索の増えたハルドル自身も、歯車の一つとしてキリキリ舞を踊らされる羽目になっている。 掃除の時間ではない為、アーサー仕えの家政婦は今日はいない。
 ときわランドマーク全周をぐるりと塞ぐ様に産まれた魔女の反応。 ただの復讐魔がそのような、儀礼的に小奇麗にグリーフシードを並べるものだろうか。

 《《ダス・ウィルド・イン・フルーテン・ウンド・トリフテン(荒れ地、畑を跳ね回る獣たち)、デル・アア・イン・ウォルケン・アンド・ラアウフテン(広い空の雲の切れ目に鷲が飛ぶ)―》》
魔女的怨念のノイズにやられ、数個の小型アンプの内一つがエラーを起こし異様な歌を高らかに謡う。 窓から遠目に見える、空へと伸びる細い黒煙と火の球に、つい手を止める銀髪の妖精を横目に、ライブ映像を中継された小型モニターを抱え、歯車を頂点に掲げたソウルジェムは、藍色の光を放った。
 「あの魔法の正体は【強化(エンハンス)】か。 興味深い力だ」
幼子の様な無感情な声。 傍観する白い猫の様な生物は、ギルべぇに似た巨大な尾をくねらせて言った。