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靴ベラジカ
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魔法少年とーりす☆マギカ 第十話「グリーフ・ラッシュ」

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 小型モニターにチラつく電子ノイズ。 アーサー邸敷地内、叢に巨大な二脚を打ち込み、伏射姿勢で構える、口径五十ミリ小型艦載砲のスコープを睨み、藍の魔法少年はトリガーガードに指をかけていた。
 ハルドルの戦装束は、新式ウプランド調の黒を基調とした、アンティークゴールドの刺繍と歯車様のフリルがあしらわれた脛までの上着。 その上から、煤け金の小さな翼の装飾付きのジェットパックを背負うと言う、まるで、スチームパンク世界の樞人形に着せるドレスを強引に宛がわれたかの様な異様ななりである。
 ギルべぇは魔法少年の傍らで数キログラム単位の巨大砲弾を整然と並べては、単装式砲側面に組み付けられた箱型弾倉へ丁重に弾を込めるルーチンワークを繰り返している。
 マナーハウス、魔術部室の周囲は魔女結界との同化を免れたが、それがかえって仇となり、曇った現実世界に魔女の姿は一匹たりとも見当たらない。 魔女の反応は確かに感知しているが、肝心要の魔女の視認が不可能な為、支援砲撃一つ行えずハルドルは歯を打ち鳴らしていた。
 右目の裸眼視界内でハンディキーボードにコマンドを打ち込み、ホワイトキャップの取得情報から、魔女の位置情報の割り出し、リアルタイムな魔女地点のマッピング等次善対応に当たってはいるが作業進捗は芳しくない。
 「… 改良しておかゆいばしがた(改良しておけばよかった)」
時折スコープ視界に戦友の赤黒が見え、彼は闇雲な一斉掃射には至れずにいた。
 彼固有の【技師(エンジニア)】の魔法は、設計図と相応の材料さえあれば維持に魔法的コストを殆ど必要としない、魔法と科学の合いの子、魔法工学とでも言うべき武装すら発明・製作出来ると言う、非常に回りくどく、かつ凄まじい将来性を秘めた魔法ではあるが、発明品は所詮科学との合いの子でしかない。
 彼は他の魔法少年の様に、普段は魔法で質量を消し去り必要な時に武装を生み出す、と言った魔法の基本中の基本すら殆ど行使出来なかった。
 銃弾一つすら先に物理的に製造し、必要な時だけ必要量を持ち出して、装備の重量に耐えながら扱うと言う、非常に鈍重で小回りが利かず、例え魔法が潤沢に残っていようが、弾切れの危険性を常に孕んだ能力故、魔術部員となってからは専ら魔女狩りに参加する事は無く、只管拠点の防衛に当たっていた程だ。
 例えときわ町上空を飛び回る、数機の報道ヘリが存在しなかったとしても、イオンの様に空中戦に持ち込む利点がある様な、際立った機動力を持つ魔法少年が居なかったとしても、恐らくハルドルは今現在の彼の様に静観を決めかねる他なかっただろう。
 マッピングの進捗五十パーセント。 魔法少年は舌打ちし、覗き込んだ銀髪の妖精は、短絡的に狼の様な低い唸り声を上げた。
 暗い空の下、少年の右手首内側に張り付く歯車型の藍は、鬼火の様に不気味な輝きを見せた。 魔法少年の手が届く範囲に無造作に並んだ、異様な産業革命時代風の有線ゴーグル、人工結界発生装置… 事態は間違いなく凝り固まり、地獄の淵へとゆっくりと転げ落ちつつあった。