募る想い
目に涙を浮かべながら話すすずめを、今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られる。
「じゃあ…なんで?」
「なんでって…おまえが…」
触らせてくれないからだろ…なんて言えるはずもない。
ただ、沈黙のまま時間が過ぎていく。
「やっぱり…嫌になったんでしょ…」
口をアヒルのように尖らせて、ぷいと馬村から目をそらす。
「なんで俺が嫌になるんだよ?むしろおまえのが…」
「だって…」
「だって、なに?」
すずめはどうしても核心に触れられないのか、下を向いたまま言葉を発することが出来ない。
「私…変なんだ…」
どれくらい時間が経っただろうか、聞き取れるかどうか分からないほど小さな声ですずめが話す。
その沈黙の間に、潤んだ目から涙が溢れないように唇を噛み、その顔を手で隠すように口元に置かれている、そんなすずめの姿が可愛く思えて、また抱きしめたい衝動に駆られる。
(俺もよっぽどだな…)
すずめの話の先を促すように見つめると、やっと目があった。
「馬村に…触られると、おかしくなっちゃう…」
「はっ!?」
真っ赤になりながら、すずめが発した言葉は予想外で聞き返すが、これ以上は喋れないとでも言うように、首を振る。
「前に…公園で、知らない奴に見られたから、そういうの嫌になったんじゃないのか?」
「知らない奴…見られたってなに?」
あの時、気がついてもいなかったらしい。
「え…何って…。じゃあなんで?俺に触られると変になるから、触れなかったって?」
まだ納得のいかないような顔で詰め寄ると、すずめが一歩後ろに下がる。
馬村は、またか…という気持ちと、もう待ってられない気持ちが交差して、行動に出ることにした。
「部屋行くぞ…」
すずめの背中を押して、部屋に押し入るとドアを閉めた。
そのままベッドに押し倒すと、身体を硬くするすずめを無視して、頬にキスをする。
「嫌か…?」
フルフルと首を振るが、まだ身体を硬くしたまま、自分からは触れようとはしない。
唇を合わせるとおずおずと、すずめからも答えてくれる。
「っ…はぁ…」
室内に唇を合わせる音と、衣擦れの音、すずめの吐息が響く。
「んっ…あ…ダメ…」
息を切らして、もっと欲しそうな顔をしながら、ダメだと言う。
「なんで…?」
「だから…おかしく…なるから…。
気持ちよすぎて…何にも考えられなくなっちゃう…。
そんなの私じゃないみたい」
(そういうことか…。ほんと、大事にしなきゃな…)
真っ赤になった顔を両手で隠して、嫌だと首を振る。
「俺だって…おまえとキスしてるだけで、おかしくなる…。公園でも、ダメだって分かってたのに歯止めがきかなかった。
好きな奴に触ってんだから、当たり前だろ?」
「当たり前…なの?馬村もなる?」
「そりゃそうだろ…。つーか俺がそういうとき何考えてるか分かったら、たぶんおまえ引くぞ。」
「だって…触られると…変な声出るし…恥かしいし…」
「だから…そういうのも全部可愛いなと思って触ってんだよ!
もっと気持ちよくさせてやりたくてこっちも必死なんだよ!言わすな、おまえはそういうことを!」
「ごめん…」
「ってことで、問題解決な」
言うが早く、深く口付けられる。
「ちょ…ま…むら」
半年分とでもいうように、執拗に何度も何度も角度を変えて、口の中を愛撫される。
「はぁ…あ…ん」
飲み込みきれなかった、どちらのものかもわからない唾液が顎をつたい落ちる。
「も…おかしくなっちゃう…」
「うん…俺も…」
Tシャツの上から、指の腹で撫でるように乳首を弄られる。下着のせいでもどかしく、全て脱がしてほしいとさえ思う。
「あっ…ん…はぁ」
「してほしいこと…正直に言ってみ」
「そんなのっ…言えな…」
すずめが、焦らすように、優しく舐められるのが好きなのも、耳の下あたりがすごく感じることも知っている。
でも…言わせたかった。
「言わなかったら、舐めてやんない」
「ん〜…」
「ほら…言えよ。すずめ」
「…ここ…舐めて」
すずめは、自らTシャツをたくし上げ真っ赤になりながら指を指すと、馬村をチラリと覗きみる。
正解とでも言うように、舌を這わせると、すずめの身体はビクリと震えた。
「はっ…あぁ…ん」
「気持ちいい?」
頬を赤く染めてコクコクと必死に頷く様子が、可愛くて可愛くて、白い肌に花びらのような跡をいくつも残す。
「ま…むら…首はダメッ…」
「ダメじゃない」
「ひゃっ…あぁん」
すずめの感じやすい首筋に唇を落とすと、同時に胸の突起を指で弄られる。
「なんっ…か、ダメッ…もぅ…」
「ん?」
「なんか…ゾクゾクして…全部、触ってほしくなる…」
「全部触ったら…途中で終われないけど…いいのか?」
いいのかと聞いているわりには、耳元で囁くように、胸への愛撫の手は緩めることはない。
本当はもう引き返せないところまできているから。
すずめはゆっくりと頷いた。
今日のすずめの格好はTシャツに下は柔らかい素材のプリーツスカートを履いていた。
ちょっと足を捩っただけで、すでにギリギリのところまで、スカートが捲れていた。
それをチラリと見た馬村が言った。
「こういうの…他の男の前で履くなよ…?」
「な…んで?」
「ちょっと足あげただけで、こうなるだろ。エロいし…男はそういうの好きなんだよ…」
片方の膝を上げた状態で足を開かせると、指で中心部分を下着の上から触る。
すずめは堪らなくなり足を閉じようするが、馬村はそれをさせてはくれない。
「ひゃあぁ…や…そこ…」
すでに、下着の上からでもわかるほど濡れているそこを、焦らすようにクリクリと愛撫すると、指の動きに合わせてクチュクチュと湿った音が室内に響く。
「あぁっ…ん、も、なんっか、ジンジンする…あっ」
「すっげー可愛い…。指、入れたら…どうなるかな」
下着を脱がすことなく、上から直に手を入れてくる。指で感触を確かめるように敏感な部分を擦ると、シャツを掴む手がビクビクと震えた。
濡れているそこへ指を深く入れると、身体が一瞬ビクッと跳ねる。
「あぁっ!…っはぁ」
背中を弓なりにし大きく仰け反り、指をキツく締め付けてきた。トロリとした生温かい体液が馬村の指をつたい溢れてくる。
「は…はぁっ…ぁ…なに…これ」
「指だけで、イった?」
まだ入ったままの指を、内壁がキュッと締め付けてくる。ゆっくりと動かしてみると、指が奥に入るたびにグチュリと音を立てて、飲み込んでいく。何度も締め付けがキツくなる場所を突くと、たまらずすずめは馬村の背中に爪を立てる。
「ダメッ…ダメ…今動かさないでっ…変になっちゃうからぁっ…あっ!…あぁ」
すずめが、2度目の絶頂に達したのと、
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴ったのはほぼ同時で、馬村は内心舌打ちをしたい気分だった。
いや…内心ではなく、本当に出ていたかもしれない。
それぐらい馬村も余裕がなかった。
しかし、幸か不幸か2人共衣服はほとんど乱れておらず、すずめは慌てて呼吸と身だしなみを整えた。
(ったく…なんの嫌がらせだよ。ゆきちゃんめ…絶対わざとだろ)
すずめが馬村と約束があるため、お店の手伝いに出られないから、ちょっと頼まれてくれと呼び出されたのは今日の正午のこと。