この瞬間をいつまでも
すずめは、係員に見つからないよう、
お腹の中にビデオを隠して
コースターに乗り込んだ。
「そこまでするか?」
馬村はいい加減呆れ顔だ。
コースターが出発してから
ビデオを撮りだし、
キョロキョロと周りを撮影する。
「落ち着きねえな。」
すずめの様子を見て
馬村がつい口を出す。
「だっていろいろ撮りたいじゃん?」
「そんなにカメラ動かしたら、
視点がブレて、気持ち悪い
映像になるぞ。」
「そうなの?」
「高さ変えずに、ずっと同じ方向を
撮ってたほうがいいんじゃねえの?」
「わかった。」
そう言ってすずめはわきを締め、
ビデオの高さが変わらないように構えた。
その瞬間、コースターが
ほぼ真下に落ち始める。
「!…っうわーーーーーぁぁぁ!」
ビデオに気を取られていたので
すずめは本気で絶叫した。
馬村は、すずめがビデオを落とさないか、
手を離して飛ばして
後ろの人にぶつけたりしないか、
そっちの方に気を取られ、
別の意味でハラハラした。
「あーーーびっくりした。」
「……オレは乗った気がしねえ。」
アトラクションが終わり、
少し2人ともグッタリして
ベンチに座り込んだ。
「あ、馬村。
ちゃんとビデオ映ってるよ。」
すずめがさっき撮ったビデオを再生した。
作品名:この瞬間をいつまでも 作家名:りんりん