魔法少年とーりす☆マギカ 第十一話
草色の魔法少年の遠目で、逃げ遅れた一般人を無感情に斬り殺す剣劇の水子魔女。 遂に望み待ち焦がれた悲願を叶えられる感嘆に打ちひしがれ、草色のジェムの怪物は、深く尊敬し愛した友以外への関心を完全に失いつつあったのだった。
「そうさ… 俺達で名付けた【魔法少年十字軍】をお前の、キクの元に返す為に! 俺はずっとずっと待ってた! 本当はお前が魔法少年だと知って、すぐにでも俺も同じ魔法少年になって、お前と一緒に戦いたかったのに。 あのクソ銀髪妖精、俺は才能が無い、今はその時じゃない、契約の必要は無いだのほざきやがって!
くだらねえ説教のせいで、お前は【一度】死んじまった!」
共感を求める幼子の感情と、積年の凝り固まった愚痴が混ざりこくった暴露。 一年前の、第一次魔法少年十字軍に悲劇が起こる前の、菊が健在であった頃にかけた電話の様に。 アーサーは猫箱の中身を朗々と語りながら、生き返った無二の友と信じて疑わない、今も本能的な人間の殺戮を止めない水子魔女の元に、ゆっくりと歩み寄り、着実に距離を縮めていく。
「インキュベーターも他のいけすかねえ眼鏡もデカブツも、揃いも揃ってあのフェリクスとか言う奴には、お前にはすごい才能がある、契約をしたいなら慎重に考えろだの特別待遇だ。 漸く見つかった俺の居場所を重箱つついて追い出して、俺のキクを勝手にてめえらで奪いやがってよ…!
だが、だから、虫の好かねえそいつらを見て思いついたんだ。 キクが【一度】魔女になった、一年前のあの時。 俺の知る【最も人間に都合のいいインキュベーター】も、【最も強大な願いを対価に出来る魔法少年候補】も、【アレクサンドリアの商人】も都合よく丸め込んで連中全員、お前を助ける為に利用すればいいってな」
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第十一話 作家名:靴ベラジカ