甘えてほしい
「なんだよ。」
馬村はすずめがチラ見したのに気づいた
「馬村は何をお願いしたのかなって。」
「……。内緒。」
「えー。」
「そういうオマエは何だよ。」
「えっ」
改めて聞かれると恥ずかしい。
「…私も内緒?」
「なんだそれ。」
馬村は笑っていた。
あ、笑顔…
今年は馬村がたくさん
笑ってくれるといいなぁ。
すずめは願うならそれだな、
と思った。
「あ、甘酒配ってる。もらう?」
すずめがそう言うと、
「いや、オレいい。パス。」
馬村が嫌そうな顔をした。
「もしかして甘酒苦手とか?」
「あんまりな。」
「なんだ。」
すずめが残念そうな顔をしたので、
「欲しいならもらってくれば?
待ってっから。」
と馬村が言うと、
「いいの?」とすずめの表情が
パァァと明るくなった。
まったくアイツは
食べるもんや飲むもんなら
なんでもいいんだな、
と思いながら
馬村は壁にもたれて
すずめを待った。
見ていると、すずめのちょうど前で
一つ目の鍋が終わってしまったらしく、
すずめがガックリきている。
もう一つの鍋がくるまで待て、
と言われているようだった。
「ん?」
そこへ見知らぬ男が、
俺のをやると、
小さいコップをすずめに
渡していた。
「アイツ何やってんだ。」
馬村がすずめの元へかけよるより早く、
すずめはコップの中身を
一気飲みして、クラっとして
倒れそうになっていた。
「オイッ」
馬村はすずめを支えると、
「どうしたんだよ?!」
とすずめに声をかけたが、
赤い顔をしている。
「あっ俺、こっちの
試飲してた日本酒のほうを
渡しちまった。」
そう言って悪い悪いと、
到底そう思ってないような顔で
その男はどこかに行ってしまった。
「マジかよ…」
わざと?
まぁそれはどうでもいい。
「オイッオイッ!」
顔を軽くたたいてみるが、
すずめは
「うーん」というだけで
歩けそうにない。
「くそっ」
「オマエはホントに
年末年始まで面倒かけるな!」
そうブツブツ言いながら、
馬村はすずめを抱えて
境内の裏へ連れて行き
座らせた。