HappyBirthday
ピンポーン。
2月10日。
平日なので、馬村は
学校から一旦帰って着替え、
すずめの家にやってきた。
「やあ、いらっしゃい。」
出迎えてくれたのは諭吉だった。
「ごめん、すずめは今大騒動で…」
ガシャーン!わあ!
という音と声が奥から聞こえてきた。
諭吉がこころなしか疲れた顔をしていた。
「あー。なんとなく想像つきました…」
家の中に通されたものの、
「キッチンは見せられないから
すずめの部屋で待っててくれる?」
と諭吉に言われて、
どんなすごいことになってるんだろう、
と思いながら、すずめの部屋で待った。
すずめの部屋に来るのは
今日で2回目。
おじさんがいる時じゃないとダメ、
と言われてるらしく、
家にはなかなかあがらせてもらえない。
改めて見ると、すずめの部屋は
意外とメルヘンチックで落ち着かない。
ベッドの横には
小さなフォトフレームが
たくさん並んでいた。
カメやゆゆか、ツル達と
運動会や沖縄で撮ったらしい写真の中に、
自分がリレーに出た時の写真が
1枚混ざって飾ってあるのに
馬村は気がついた。
「こんな無愛想な写真…」
照れてそう呟いたものの、
自分の写真を飾ってくれてるのが
嬉しかった。
コンコン。
「馬村?ごめん、ごめん、お待たせ。」
エプロンが、粉や牛乳などで
すごく汚れていた。
指と腕にはいくつも絆創膏をつけて。
「できたからどうぞ!」
「ふ…わかった。」
達成感なのか何なのか、
満面の笑みで言うすずめの姿を見て
馬村も自然と笑みがこぼれた。
「馬村くん、悪かったね。待たせて。」
「いえ…」
「一応、オレ監修だから。
大丈夫なはず。」
諭吉にそう言われながら
ダイニングに入ると、
ホワイトソースとチーズの
いい匂いがしていた。
テーブルの席につくと、
ちゃんとテーブルセッティングがしてある。
「すげえ。」
馬村が少し感動していると、
ピリリと諭吉の電話が鳴った。
カフェのほうで少しトラブルがあったようで、
「ちょっと行ってくる。」と
諭吉は出ていってしまった。
「すぐ帰ってくるからね!」
と少し睨みをきかせながら。
「じゃ、じゃあ、食べようか?」
「こんなちゃんとしてるとは
思ってなかった。サンキュ。」
作品名:HappyBirthday 作家名:りんりん