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HappyBirthday

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「フツーに食える。」

「ホント?」

「うん。正直期待してなかった。」

「やった。」

すずめの顔は、不安そうな顔から
嬉しそうな顔に変わった。

「おじさん、スパルタでさ。
 一人ではさせてもらえなかったけど。」

たぶんすずめが一人で作っていたら
こう美味しくはできなかっただろう。

「あ!」

「なんだよ。」

「馬村、17歳おめでとう!」

「え…」

馬村はすずめに改まって言われて
顔が赤くなった。

「……ありがとう。」

馬村にありがとうなんて言われたの、
初めてかもしれない。

「…オマエも食えば?」

「あ、うん。」

馬村に促されて
ようやくすずめも席についた。

あ、よかった。普通に食べられる。

おじさんに何度もやり直し
させられたもんな。

「今日、お父さんと食事とか
 予定なかったの?」

去年は築地に一緒に行ったけど。

「今日仕事遅くなるって言うから明日行く。」

「え、じゃあ、大地、今家にひとり?」

「いや、兄貴が来てくれてるから。」

「そか。よかった。」

大地のことまで考えが至らなかったことに
すずめは申し訳なく思ったが、
こうしてゆっくり二人ですごせるのは
嬉しかった。

「たまにはこういうゆっくりもいいね。」

「そうだな。」

「今日馬村、何時頃まで大丈夫?」

「いや、あんまり遅くならないように
 しようとは思ったけど。」

おじさんの目もあるし。

とは馬村は言わなかった。

ピリリとすずめの電話のメール音がした。

「?おじさんだ。」

「なんて?」

「なんか遅くなりそうって…」

と言いかけて、すずめの顔が赤くなる。

「?なんだよ。」

馬村がすずめの携帯を取り上げ
諭吉からのメールを読むと、

『そういうことになりそうだったら
 逃げなさいね!』

と書いてあった。

「は?///オレ、信用ねえな…」

「////ごめん…」

「大事にされてんだろ。」

「本当の父ちゃんよりうるさいよ。」

「いいじゃん。心配してくれる人がいて。」

あ…馬村、お母さん、いないんだっけ。

「私がいるよ!」

「は?」

すずめは急に席を立ち、
馬村の手をギュッと握った。

「あ、えと。馬村を心配する人。」

自分で何を言ってんだと思い、
すずめは恥ずかしくなって頭を掻いた。

「オレに心配ばっかりかけといて
 どの口が言ってんだ。」

馬村はすずめのほっぺたをつねった。

「そ、そーれすね。」

言われてみれば、
馬村が私に心配かけたことなんて
一度もなかったや。

それに比べて自分は、
心配や面倒をかけてばかりだ。

ガタッ

と馬村が立ち上がり、
つねった頬を離したと思ったら
顎をクイッと持ち上げ、

「これくらいは誕生日だし、いいよな?」

と言ってキスをしてきた。


すずめはボーッとして
馬村の顔を見続けた。

と、ふいに頭を押されて
席につかされる。

「オマエ、見すぎ。」

馬村も席について、
またグラタンを食べ始めた。

耳まで赤い。

まだすずめはじっと馬村の顔を見ていた。

「なんだよ。」

「いや、馬村の誕生日なのに、
 結局自分が嬉しいばっかりだなって…」

「は?」

「せっかく喜ばそうと思ったのに…」

馬村は俯いて顔を覆った。

「馬村?あっ!何か変なもの入ってた?」

「ぶっ」

「えっ」

「もうダメ!たまんねぇ!」

顔をあげた馬村から、
極上の笑顔が飛び出した。

「あ、笑った…」

「バカ。嬉しいに決まってんだろ。
 笑いがとまんねーわ。」

「え、そうなの?」

「サンキューな。」

馬村が笑ってる。

自分にも人を幸せにできた喜びで、
すずめは胸がいっぱいになった。

作品名:HappyBirthday 作家名:りんりん