甘くて苦い・・・
「う...ん。」
馬村が次に目が覚めた時、
もうあたりは暗くなっていた。
「あれ?今何時?」
夕方の18時だった。
「お、大輝起きた?飯食える?」
大志がおかゆをもって部屋にやってきた。
「ん、サンキュー。兄貴。
なんか、すげえ寝てた。」
「なんだお前、与謝野さん来たの
気づかなかったのか?」
「は?アイツ来たの?」
「チョコ持ってきたんじゃないの?
バレンタインだし。約束してたんだろ?
なんか包みみたいなの持ってたから。」
包み・・・?
見ると、ベッドの下に、
何かの力でひしゃげたような
色のきれいな包みが紙袋から
半分出た状態で落ちていた。
「包みってこれ?なんでつぶれて...」
と言ったところで、馬村はハッとした。
「なんでオレ、上半身裸?
兄貴、パジャマ脱がした?」
「あー?俺が脱がすわけないだろ。
暑くて自分で脱いだんじゃないのか?」
ていうか、自分で脱いだ記憶がある。
暑いからって脱いで、
アイツに体拭けって言って...
ていうか、あれ、夢じゃなかったのか?
で、オレ、アイツを行くなって言って
ベッドに引き込んでキスして、
それから・・・
「~~~~~~~~~~!!!!!/////」
「・・・なんかやらかしたのか?」
「うるせえ!!!」
枕に顔を埋めて馬村はベッドに伏せった。
ボッボと顔が赤くなるのが
自分でもわかった。
と同時に血の気が引くような、
今まで上がってた熱が一気に下がるような、
そんな気分がした。
ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!!!
マジやらかした!
何が我慢強いだ。全然我慢できてねえし!
途中でアイツがチョコの包み
オレにぶつけて逃げたんだ。
やっとアイツの気持ちが
オレのほうを向いてくれたと思ったのに。
「なんかやらかしたなら、
早めに謝っといたほうがいいぞー。」
大志に言われて、ハッとして、
馬村は着替えて出かけようとした。
「って、オイオイ、お前病人!
とりあえず電話しろ、電話。」
こんなことで失いたくない。
すぐに馬村はすずめに電話した。
トゥルルルル、トゥルルルル、
何回コールしてもすずめは電話に出なかった。
「マジかよ...」
「最悪...」
馬村はこの世の終わりのような気持ちで
大きなため息をついた。
熱はすっかり平熱に下がっていた。