魔法少年とーりす☆マギカ 第十二話
少年達の有象無象の思考を、混濁する意識を、深緑と魔法なき英雄を繋ぐ純銀を穿つ藍の閃光。 もう一人の闖入者、真鍮翼の天使。 広狭二本のスリングベルトをたすき掛けし、右に超重量を抱えながらもジェットパックから藍を散らし…
高度二百メートル、1キロメートル程遠方から、ほぼ健在の藍の魔法少年、ハルドルは左の重機関銃を構え、制圧射撃と共に最後の魔女三体目掛け突撃する! 巨大猛禽の呪いと骨肉が、光に裂かれた影の下踊り狂い爆発四散!
黒煙は鈍重に引き千切られ、真鍮調ゴーグルと右手首の藍を輝かせ、機械仕掛けの天使は三のグリーフシードを左奥歯で咥え自称御使いへの一斉掃射をぶちかます! 容赦も良心も無い藍色の一斉砲火、宣教師を守る何重もの純銀チェーン! 藍の雨霰は消し飛ぶが、表面装甲以外に魔法力を持たぬ弾丸は其のまま発射エネルギーを維持、連なる荒い鎖を蹂躙破壊していく!
咄嗟にフェリクスはトーリスを庇い射線の反対側へ駆ける!
「畜生ォ! 野郎、あの野郎はシメに潰したる!」
単純明快な爆発エネルギーと質量による正面突破、しかし藍の火砲の長射程は圧倒的! 例え深緑が手の三日月斧を全力投球した所でその飛距離は百メートルにも届くまい!
ハルドルは有効射程の長さを活かし完全にアントーニョの射程外から一方的に攻撃する! 接近を許せば藍の魔法少年に手は無いからだ!
弾を切らし空打ちする重機関銃トリガーから手を離し、魔女反応の無い特殊ゴーグルを擦り上げ、右の超重量を左脚で蹴り上げながらデウス・エクス・マキナもどきは五十ミリ小型艦載砲の安全装置を解除!
百キロ級全長二メートル超の異常巨大砲身がこの日何よりも重い風を切り、暗い砲口が魔法少年宗教裁判のジャッジ・ガベル染みて畏怖を煽る!
正真正銘最後のカンバン、最後の一発が、悪魔の処刑人を討つ、藍の魔性が凄まじい咆哮を上げた!
「Ta denne!」
藍の魔法装甲を帯びた、回避不可能の対戦車クラス・超重量五十ミリ徹甲榴弾が衝撃波を纏い唸りを上げる! ニューロンが極限まで加速された緋は親友を抱き締め保護結界を展開、深緑は極限まで斧頭を肥大化させ弾頭目掛けて振り下ろす!
魔法少年の身体能力は強力であるが完全無力化とはいかず、魔法装甲を失った徹甲榴弾は真っ二つに裂けV字状に爆破! 爆音と共に科学の紅蓮が吹き荒び、安普請の展望台強化ガラスが一斉に飴細工様に粉砕していく!
燃え上がる深緑の宣教者、しかし動きを止めず、そのジェムからは深緑の濁った妖光が放たれる! 周囲を覆い炎を一掃していく! まだ息があると言うのか! 藍色は死角のときわランドマーク地上へジェット噴射を断続的に切りながら、衝撃と魔法力消費を軽減しつつ高速下降し姿を消した。
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第十二話 作家名:靴ベラジカ