魔法少年とーりす☆マギカ 第十二話
「お前、それで満足なん」
純銀の鈍重な兜割! 傷ついた右手を庇いフェリクスは退避! 剣劇の水子魔女程ではないがまともに食らえばただで済まぬ致死の純銀が、タイルと外壁の金属が剥がれ、コンクリートが剥き出しの展望台天井に容易くめり込んだ。 処刑人の背後、接近する二つの小さな藍が遠目に見える。 円周の縁を保護していた金属フレームは今にも落ちそうな程に剥がれ落ちていた。
「満足や、畏れ多いぐらいや! 俺みたいな殺人者の罪人が、汚れまくった手を、罪を償える一回こっきりのチャンスを授かったんやからな!」
純銀の殴打、フェリクスは左腕で受けるが装束一時消滅、強烈な衝撃と鈍い骨折音が彼を襲う! 緋の閃光で跳ね飛ばし、アントーニョの重い振りの隙を穿つ緋の針状をゼロ距離発射!
回避を狙うが間に合わず深緑は右脇腹に被弾、直撃だ! 深緑の魔法少年はバランスを崩すが寸でで柄頭を地に突き強引に姿勢修正! 空しく圧し折れた左下腕を高速治療するフェリクスに対し、アントーニョは未だ腹から鮮紅を流し暗緑カソックの裾が湿っていく。
魔法は強力無比、魔女を倒すにも、魔法少年を相手取るにも十二分過ぎる、中々の手練れ。
しかし治癒魔法は不得手か! 感覚が戻った左手を握っては開き、肩幅に足を開いた姿で、不敵に眉を軽く吊り上げ小さな口角を上げ― 小さな傷に塗れ、身体中を汚しながらも…
彼は駆けに出た。 いつもの小生意気ながらも、僅かな女王染みた不思議な風格を持った笑みを浮かべ、緋のソウルジェムは小さく瞬き、緋の魔法少年、フェリクスはざっくばらんに返した。
「魔女相手に、 …俺相手に、この腕で満足とか。 まじありえんわ」
新緑の瞳は一瞬子供らしい驚きに見開き、泥を被るように邪悪な憎悪に淀み潰れた。
「お前は俺に絶対に勝てんし。 お前、トモダチを信じてへんもん」
深緑の淀んだ光は激昂し、爆ぜた。
作品名:魔法少年とーりす☆マギカ 第十二話 作家名:靴ベラジカ