桂誕
「はっぴ~ばーすでぃじゃヅラ!!アハハハハハ!」
『よぉヅラ!おめでとう!』
「おめでとうさん。ヅラァ」
【誕生日おめでとうございます。桂さん】
3人のいきなりの登場に目を見開き驚いたが それぞれの祝いの言葉、それとエリザベスが上げた看板に目をやり敵ではなかった事の安堵と3人と1匹の行動に口元が緩む
「フッ………――ありがとう」
信頼している人にしか見せない心の底からの笑顔
エリザベスを信頼していない訳ではないが、幼い頃から一緒の友人 戦争を共に戦った友人に見せる笑顔は普段エリザベスに見せるものとはまた違っていた
そんな桂の笑顔を久々に見た3人は互いの顔を見合い"これは大成功だな"と確信して自分達も旧友にしか見せない笑顔で笑った
「さぁこれからドンチャン騒ぎじゃ!!!」
「酒も沢山あるぜ?祭りといこうじゃねぇか」
『甘いケーキもあるからよ!!』
「あぁ―――…そうだな」
桂はよほど嬉しかったのか目を閉じ微笑んでいる
【じゃあ準備しますね】
するとエリザベスは手早く皿やコップなどの準備をする
準備が整った頃 テーブルの上には銀時達が買ってきた物以外の料理も並んでいた
これはエリザベスが桂の誕生日のために内緒で作っていたのだろう
「こりゃ美味そうじゃのぅ!!エリザベスちゃんが作ったがか?」
【今日は桂さんの誕生日なので…】
「エリザベスお前まで…―――ありがとうなエリザベス」
【いえ…】
あり得ないかもしれないがエリザベスの頬がうっすらピンクになっている気がする
照れているのだろうか?
「さぁみんなで食べるぜよ!!」
辰馬の言葉を合図に誕生日会と言う名の祭りが始まった―――
『この料理めちゃくちゃ美味いぜエリザベス!』
「うむ…本当に美味い。また腕をあげたなエリザベス」
「こんな生物でも料理できるんだなァ」
「さっすがエリザベスちゃんじゃ!!」
【ありがとうございます】
そんなやりとりをしながらしばらく飲み食いしていたが銀時の言葉で一旦止まる
『そうだ。完全に酔いが回る前にプレゼント渡そうぜ?』
「そうだなァ」
「それもそうじゃな!」
プレゼントは二種類あり
まず片方の袋を手に持ち桂に差し出す
『んじゃヅラ!改めて誕生日おめでとう!』
「俺にプレゼント…?」
銀時からプレゼントを受け取り中身を確認する
すると中身は…
「これは…!〇〇店の蕎麦に△△△本店の蕎麦…□□の蕎麦まであるじゃないか!どれも名店ばかりだぞ!?」
目を輝かせニッコリ笑っている
「それだけじゃないきに!!もう一袋あるぜよ!」
辰馬と銀時は"ほら高杉 お前から…"と言わんばかりにプレゼントを押し付ける
「あ?俺がコレ渡すのかよ…」
少し嫌がってる高杉を見て桂は首を傾げた
そんな桂の仕草を高杉は不覚にも"可愛い"と思ってしまい 少し赤くした顔を背けながら桂に手渡す
「……ッ…――///ほら…プレゼントだ…。言っておくがこれは俺が選んだんじゃねぇからな……これは銀時が…」
「銀時が…?なんだ そんなに変なものなのか?」
不思議に思いつつも袋を開ける
中身を見た瞬間 先ほど見せていたキラキラした目とは一変。
目、眉は垂れてデレデレとした顔になりニタッと笑っている
「こ……これは…――素晴らしい…素晴らしいぞ銀時!!!」
桂に手渡されたものは―――
エリザベス柄の布団と枕とシーツと寝間着、抱き枕…。
置物に扇子、タオル、座布団、お皿にコップに箸………
私生活で使えうありとあらゆるエリザベスグッズであった
「おいヅラァ…そいつはさすがに趣味悪ぃと思うぜ…」
『ん…んなことねぇって。ヅラ喜んでるじゃん…?』
(言い出したのは俺だけどやっぱりひくわ…)
「アハハ!用意したのはわしじゃヅラ!!」
「本当に素晴らしい…。俺は感動したぞお前ら!!」
涙ぐみながらエリザベスグッズを抱えて喜ぶ桂
そんな中高杉はエリザベスに話しかける
「なァお前……あの姿見てなんか複雑じゃねぇか…?」
【………】
否定しないということはエリザベスの心境は複雑なのであろう…
「まぁ…良しとしようや―――。それだけお前さんはヅラに好かれてるってこったァ」
【は……はい…】
高杉とエリザベスがそんなやりとりをしてる事にも気付かずに自分の世界に入っていた桂がようやく我に返り改めて3人と1匹に向き直る
「エリザベス…」
【?】
「坂本…」
「お?」
「高杉…」
「あ?」
「銀時…」
『ん?』
「皆―――ありがとう」
『気にするなって!!』
「クククッ……あぁ銀時の言うとおりだ」
「なんじゃ急に改まって!!!さぁヅラも飲むぜよ!!」
「そうだな――…ではいただこう」
こうして再び宴会は始まった―――
かなり酔ってしまったのだろう
朝日が昇りはじめる頃には皆寝入っていたがエリザベスはあまり音を立てないように片付けをしていた
そんな些細な音に反応してか桂だけが起きてきた
「ん…エリザベス…?まだ片付けをしていたのか?」
【すみません。起こしてしまいましたか?】
「いや気にせずともよい。だが少しは眠らないと身がもたぬぞ?」
【大丈夫です。これを運んだら終わりますから】
「そうか…。それにしてもこいつらは…――」
目をやった先にはものすごい格好で寝ている辰馬と銀時
それと刀を手に座ったまま寝ている高杉の姿があった
「まったく―――……」
溜め息混じりに言ってはいたが その表情はどこか嬉しそうな…懐かしそうな顔だった
【そういえば桂さん。今日は名前の事怒りませんでしたよね?】
「あぁ…確かにそうだ」
【何故ですか?いつもなら…】
「それはなエリザベス。―――俺にあのあだ名をつけたのはあいつらなんだ。……その名で呼ぶのも、誕生日を祝ってくれるのも…今までずっとあいつらだけだった。」
【ずっと?】
「そうだ。幼少時代も攘夷戦争中も戦争が終わった今でもずっとだ―――」
少し笑いながら話す桂の言葉をエリザベスは黙って聞く
「日に日に変わっていくこの時代の中で昔と変わらずこうして祝ってくれる仲間が居る事に俺は感謝している。…だから年に一度くらいは言い返さずに受け入れようというわけだ」
【そうでしたか】
「この事は俺とエリザベスだけの秘密だぞ?こいつらに知られたら恥ずかしいものがあるからな―――」
ゴホンという咳払いで照れ隠しをした桂
【わかりました。では片づけてきますね】