ファーストステップ
3月も半ばを過ぎ、プロム当日。
馬村は先日、見事
大志のいる大学に合格を決めた。
すずめとは同じ学校ではないが、
学校が近い。
すずめはそれが何より嬉しかった。
ゆゆかも偶然、すずめの専門学校近くの
有名大学だった。
受かるまで教えてくれなかったので
知らなかった。
ゆゆかにもすぐ会えることが嬉しい。
泣く者、笑う者、それぞれだけど、
とりあえず今日はバカ騒ぎして
卒業を祝おう、ということになっていた。
諭吉のカフェに続々と集まってくる。
みんなそれぞれ、正装したり、
仮装したりで、思い思いの格好をしていた。
「プロムってさ、こんなのなの?」
「知らなーい。」
「なんでもいいじゃん?面白ければ。」
口々にそう言いながら
色とりどりの格好が見られる中、
馬村はごく普通の格好をしていた。
「馬村!正装か仮装って言ったじゃん!」
カメが馬村の格好を見て憤っていた。
「誰がするか。」
「ワガママか!」
そこに、猿丸がデカイ着ぐるみを着て
店内に入ってきた。
「おー。みんな揃ってんな。」
「お前、それ何なの?」
「え?鉄人28号?」
「どうやって仕入れてきたんだよ。」
「へへ。いいだろ?
コントローラーまであるんだぜ。」
「ちょっとそれ貸せ。」
馬村は猿丸の持っていた
鉄人28号のコントローラーを持って、
亀吉に、
「オレ、鉄人28号の操縦するやつの仮装な。
これなら文句ねーだろ?」
と言った。
「ぐ、馬村ずるい。そして猿丸のバカ。」
亀吉は仕方なくOKした。
「ごめん、ごめん、遅くなった。」
そう言って入ってきたのは、
ゆゆかに化粧を施された
すずめだった。
ドレス…とは言わないが、
そこそこに着飾っていた。
「わーっ!すずめちゃん、
やっぱり化粧映えするねぇ!
可愛い!」
「え?//そ、そう?
やっぱり緊張するけどね。」
「オイ、なんで化粧してんだよ。」
馬村は少しムッとしていた。
「え?そんなに似合ってない?」
「すずめちゃん、ちがうよ。
馬村はすずめちゃんが
あんまり可愛くなっちゃうと
他の人に取られないか心配になるんだよ。」
「バッ違うわ!////」
馬村はカメの解釈を
真っ赤になって否定した。
「またまたぁ。」
「ああ、それでかぁ。」
犬飼が思い出したように呟いた。
「何が?」
「ほら、前に与謝野さんが化粧して
偽彼女をするって提案した時、
妙に嫌がってたから
変だなぁって思ってたんだ。
好きだから見せたくなかったんだね。」
「違うっつってんだろ!///」
「真っ赤になっちゃって
馬村かわいー。」
「かわいいとか言うな!」
「はいはい、馬村はすずめちゃんが
最初から大好きってことで。
じゃあ、始めようかー!」
言えば言うほど墓穴を掘るので、
馬村は真っ赤になって
隅でうずくまった。
ついでにすずめも真っ赤になっていた。