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真面目な話をしよう

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「そんなこと、俺にわかるわけないだろう」
 空を払うように手の平を返した竹谷が言う。
 私はめげることなく言い続けた。
「だが、私は知りたい。何故、何故……この身が雷蔵を愛しいと思えるのか」
 地面の一点を見つめたまま反らせない目で、縁側、竹谷の隣に腰を下ろして言い募る。昼下がりの陽気に、余す時間を溶かしながら。
「だから。そんなこと、わかるわけないんだよ」
 木の軋む音と共に立ち上がる竹谷は、手の一方を腰に、一方を頭の裏に当て、やれやれと息を吐いた。変わらず佇む自分は、目で追うこともできない。冷静を装って、本当はとても脅えていた。竹谷が厳しくその様を眺めていることは、慣れた空気で知っていた。
「ひとつ何かしようと思う時、理由はそれぞれ違うんだ。三郎は三郎。雷蔵は雷蔵。それで、いいじゃないか。どうして、そんなことをしてまで知りたがる。お前達には、そんなもの。今更、必要ないじゃあないか……だから、さ」
 言葉を切って振り向き、険しい表情を割って、竹谷は言う。
「そんなずるいことは、しなくていいじゃないか、雷蔵」
 竹谷が呼んだ。僕は観念して顔をあげた。困ったように笑いかける竹谷を見止めて、その眩しさに、僕はようやく罪悪感を浴びるのだった。背筋に寒く走ったそれは、脅え震え続けた胸の動悸を鎮める。凍えた僕は、自己嫌悪に苛まれた。
 それでも竹谷は、温かな手でいつものように僕の頭を撫で回す。卑怯な僕を、それでも許してくれる。僕はそれを知っていた。知っていたからこそ、そんな優しさが痛かった。
「ごめんなさい……」
 泣くように呟いた言葉に、しかし涙は付いて来ない。今日は雨が降らないことを、知っていたから。竹谷が太陽を振り仰ぐのを見て、僕は小さく吐露した。
「この情を持つ理由や衝動が異なるのならば、三郎と同じになりたい僕には、その違いがどうしても怖かったんだ」

(罵っておくれよ)
作品名:真面目な話をしよう 作家名:pima