真面目な話をしよう
近付く程に、後退するような錯覚さえ覚えるのだ。希望は気高いので、追えど追えども追いつけぬ。笑む頬も、細める双眸も、緩やかな口も、鼻も目も眉も、私のものだと証明させておくれ。一つ一つに唇を寄せて、音を立てても足りぬ。恋い慕う私には余裕がない。揺らめく白旗が止むような、立ち込める霧が晴れるような、明確な印を見たくてたまらない。
私が彼の人のすべてを手に入れたならば、世界はぐるりと反転するのだろう。私の理の全てがひっくり返り、矯正のため、とてつもない力が働くのだ。私の歪んだ世界を、正してくれるのはひとりだけ。
嗚呼々この世に残る寿命から、あわよくば来世に待つ新命でも。カミサマホトケサマ、どなたサマにでも捧げましょう。代わりに、彼の人が欲しいのです。何故ならば。あの喉で貴方の意思を話せるなら、あの目で貴方の世界を臨めるなら、あの皮膚で貴方の命を包めるなら、私は消えても構わないのだから!
(信仰)