真面目な話をしよう
泣き声がする。涙を晒すまいと顔を覆い泣く子に、触れも声を掛けることもせず、隣に腰掛けて共に泣いた。
「なんで、おまえが、なくの」
嗚咽混じりの声で肩を世話しなく震わせた子が問う。顔を隠す手の平が、何度か涙を払うために動いた。
私も嗚咽混じりに答えを返す。
「私たちは、将来双忍になるのだぞ。雷蔵が泣く時は、私も泣く。雷蔵が笑う時は、私も笑うんだ」
「そんなの、へんだよ。三郎は、三郎でいいのに」
泣き声がする。悲しい寂しいと叫ぶように。自身に起こったことでも無かろうに、寧ろ祝福を交わしたいことなのに、この子はいったい何を嘆いているのだろうか。ようやく外した仮面の下に、お前と生きる決意を彫り込んだだけなのに。
涙の通った頬に一つの嘲笑を乗せて、「なんでおまえがなくの」と問い返す。
泣き声がする。「三郎が、いなくなっちゃたから」雷蔵は顔を上げることなく言うのだった。
(涙の濾紙)