三つ巴
「外はやっぱり寒いね。」
まだ雪は降らないが、
さすがに12月に入った外気は冷たく
喋ればそこが白くなる。
大輝は手をつなぐために
すずめの右手をとった。
そして手袋の上から触れて
薬指に2つボコボコと
ふくらみがあるのに気がついた。
「何だこれ?」
大輝に尋ねられ、すずめは手袋を取り、
指輪を見せた。
そして1つは諭吉に、もう1つは父に
それぞれ幸せになれと貰った、
と説明した。
「二人から同じもの貰うと思わなくて。
だから重ねづけしてみた。」
と笑って言うすずめを見て、
大輝は「マジかよ...」と言いながら
微妙な表情をした。
「?大輝?どうかした?」
家族からとはいえ、
やっぱり他の男の人から
指輪っていい気しないのかな?
「あのさ。」
「うん?」
そう言ってからしばらく
ためらったような沈黙が流れた。
大輝はガシガシと自分の頭を掻きながら
ゴソゴソとコートのポケットから、
包みを取り出して開けた。
それもまさかのシルバーリング。
「えっ?!大輝も?」
大輝はすずめの左手の手袋をとって、
薬指にそれをはめた。
「3つも要らねえだろうけど。」
「オレもオマエの幸せ願ってるし。」
「っていうか、オマエのおじさんより父親より、
オレが一番オマエを幸せにしたいと
思ってるんだけど。」
すずめは信じられない、という顔で
大輝の照れたような顔をジッと見た。
「同じもんやるとか、サイアクだな。
家族と張り合ってどうすんだっつの。
まぁ、今度違うもん用意すっから。」
「えっ?これでいいよ!」
「ううん。これがいい…」
そう言いながらすずめは
大輝がくれた左手の薬指の指輪に口づけた。
「ありがとう!大輝。嬉しい。」
「おじさんのも父ちゃんのも
もちろん嬉しいけど、
やっぱり大輝からのが一番嬉しい!」
すずめは左手をイルミネーションの灯りに
照らしてみて、銀色が光るのを眺めて笑った。
大輝はそのすずめの姿を見て、
思わず後ろから抱きしめ、
髪をアップにして見えるうなじに
キスをした。
「だっ大輝?//人いっぱいいるよ?」
大輝はすずめを抱きしめたまま言った。
「さっき、手づかみでメシ食ったじゃん?」
「え?うん。」
「なんかこう、貪り喰う感じが
たまんねかったっつーか。」
「え?//何言ってんの?」
「オレ、すずめのこともそうやって
喰いたくなったんだけど…今。」
「ナニソレ?!///どういうこと?」
「どっか入らねえ?」
「そっそれはそういう…ことですよね?」
「うん。ダメ?」
かぁぁぁぁっとすずめは真っ赤になった。
大輝がそんな風に誘ってくるとは
思いもしなかった。
「ダメ…じゃないけど…」
それを聞いて大輝は腕をほどき、
指輪のついた左手を包むように握って、
すずめを歩かせた。