もしもの話
ほんというと大輝とて
そんなことになったら
逃げ出したい気持ちになるかもしれない。
でも、そうなったらすずめのほうが
いろいろ不安だろうと思ったのだ。
すずめを幸せにするのは
いつでも自分でいたいから、
どうすればアイツが幸せかというと
それしか思いつかなかった。
もちろん自分が学生である間は
そうならないのが一番だが。
「馬村は与謝野とはどうなんだよ。」
と猿丸にいろいろ聞かれたが、
「言いたくない。」
と、かたくなに黙秘した。
そういう想像を他の男にされるのは嫌だったし、
自分の中だけにしまいこんでおきたかった。
馬村があまりに口を割らないので
結局飲み会は他の話題で盛り上がった。
というよりも、ほぼ猿丸の報告会というか
独壇場だった。
「親父になるんだぜ…」
「どうしよう…」
「俺で大丈夫なのかな」
猿丸は随分と苦悩してるようだった。
その話を聞きながら
大輝は自分も気をつけようと思った。
猿丸が大輝の口を割らせようとして、
いろいろ飲まされたからかもしれない。
馬村はいつもはあまり酔わないが、
少し悪酔いしたらしかった。
「オレ、帰るわ。」
と、日付が変わった頃に
大輝は立ち上がった。
「え?久しぶりなんだから
泊まっていけよ。」
そう誘う猿丸に、
「いや、明日一限からだし。
酔い冷ましながら帰る…」
ボーッとしながら大輝は猿丸の家を出た。
「あ~やべえ。飲みすぎた…」
少し足がフラつく。