こらぼでほすと プラント5
これだけの防御があれば、さすがの変態でも手を出せまい。まず、変態と二人にならなければ問題はない。これだけの人数をスルーするのは難しい。もし、やったら最終的にタリアが鉄槌を食らわす気は満々だ。やらかしやがったら、足腰立たない程度に痛めつけるつもりだから、非常に満面の笑顔だ。
お茶で小休止すると、ニールとリジェネは寝室に引き上げた。さすがに丸一日、移動しているのでニールはダウンだ。それを見送ってから、本格的な打ち合わせに入る。
「ニールの発信機からデータは拾えるように手配しているから、もし、見失ったらオーヴの、この番号に連絡すればいい。これから、あちらに出向いて打ち合わせはしてくるから。」
ニールの身体には、本人も知らない発信機がとりつけてある。微量の特殊な電波を出すので、オーヴのレーダーなら拾える。それもあるから、トダカは大使館と話をつけている。こういう時に、トダカのウヅミーズラブのアイドルという地位は使える。トダカの頼みごとなら、大抵が通るからだ。
「大使館からの応援は断ってください、トダカさん。敵か味方か判別がつかないのが、最も危険です。」
「ああ、それは言ってある。タリアさん、一緒に来てくれるかい? あっちに紹介させていただきたいんだが。」
「ええ、ご一緒させていただきます。シン、レイ、ルナマリア、打ち合わせはきちんとしておきなさい。後で報告を。」
「了解です、タリアさん。」
ということで、トダカとタリアは外出した。あとは四人でお菓子を食べながら雑談しつつの打ち合わせだ。ほとんどプラントに戻っていないシンたちでは最新情報には疎いので、そこいらはルナマリアが補足する。
「一応、スケジュールはチェックしたけど、移動する時間は、もう少し短縮できるから余裕はあると思うわ。あと、ザフトアカデミーのほうなんだけど、シミュレーションを使いたいなら午後からにして欲しいって。えーっと、時間は、このくらい。だから、午前中に行って適当に見学して、アカデミーで昼食してからって感じ。オッケー? 」
「ああ、それでいいぜ。・・・あれ? ギルさんとこでディナーって、なんだよ? ランチって言ったのに。」
ルナマリアが時間調整したスケジュール表では二日後は午後から訪問してディナーという予定になっている。シンもレイも、それだけは阻止してくれるようにリクエストしておいたのだが、見事にスルーされている。
「それね、午後まで公務が入って時間が空けられないってことだった。翌日も、同じように予定が入れられてて、夜しか空いてないっていう返答でした。」
「バレバレの言い訳だな? 」
「そうだよねぇ。飲ませて酔わせてお泊まりって王道パターンすぎるので、グラディスさんが参加してくれます。・・・まあ、あたしも泊るつもりだし、おねーさまはリジェネと一緒でしょ? だから、なんとかなるかな、と。」
つまり、午後のランチの時間を最初から潰すように予定を組み込んで、どっかのお寺の奥さんに、ちょっかいかけるつもりであるらしい。
「想定内だ、シン。俺がママのところで寝る。なんなら、悟空も参加すればいい。」
「俺、寝相が悪りぃんだよ、レイ。」
「ツインベッドの部屋にすればいい。」
「いや、いっそ、床で雑魚寝しようぜ。そのほうが警戒しやすい。誰かの身体を踏んでくれれば起きるからさ。」
「それでもいいな。」
「え? それ、ありなの? 悟空。」
「ありだろ? 絨毯ひいてあるんなら、そこへ毛布で十分。俺は野宿は慣れてる。リジェネだけだと、かなり不安だ。」
「おもしろそー、あたしも参加しようかな。みんなでキャンプ気分で楽しそう。」
軍人なんて男女の区別は怪しい。野宿なら、みんなで訓練でもやっているから、ルナマリアも参加する。
「いいんじゃね? ママが寝てから、俺らは部屋に入ればいい。寝たら朝まで起きないからさ。なんなら一晩、みんなでゲームとかでも楽しそうだ。」
一晩くらいの徹夜なら、若者組には苦ではない。むしろ、どんとこいっっ、という勢いなんで、議長宅への宿泊で盛り上がる。他の日は攫われないようにすれば問題はないので、議長宅での一泊は、そういうことに決まった。
翌日から、首都の観光というか散歩なんかをして、楽しく過ごした。市街地を歩く分には私服でいいので、みんな、気楽な恰好だ。ルナマリアも私服なので、怪しくはない。見学できるところは適当にやっているので、慌てることもない。適当に休憩したりお茶をしたりと時間は余裕をもたせてあった。ニールはプラントの観光は珍しいから興味津々で、ルナマリアに質問したりしている。
「あれが、最高評議会の開かれるとこなのか? ルナマリア。」
「そう、一月に一回はやってるかな。」
「警備が、あんまりされてないけど? 建物に簡単に侵入できそうだ。」
「そうでもないんです、おねーさま。セキュリティーは最高レベル。まず、エントランスに入る前にセンサーでチェックされるし、そこからも順次、きついチェックが入るの。どこかで不具合があれば、すかさず警備が飛び出てくるって感じ。身体をセンサーでチェックしているから武器や爆薬なんかも持ち込めません。キラさんが作ったシステムだから、今まで破られたことはないのが自慢でーす。」
「キラ? あーそういえば、こういうのの専門家だったっけ。・・・でも、キラは入れるってことだよな? 危ねぇーな。」
「キラさんとアスランは入れるでしょうね。入りたくないって言ってたから大丈夫でしょう。会議とか面倒臭いって。」
「というか、キラなら、どこでも入れるんじゃない? ママ。それにプラントを破壊するなら、わざわざ、ここに入らなくてもSフリーダムで外からぶった切るよ? たぶん。」
さらりとリジェネが物騒な発言をしてジュースを吸い上げた。ただいま、その委員会が開かれるという建物の前の公園で小休止中だ。
「それ、可能だから厄介だな、リジェネ。でも、そうなったら、俺がディスティニーで阻止するぜ。レイもレジェンドがあるし。」
「俺がアスランを阻止する。シンがキラさんを阻止すればいい。その間に、オーナーに連絡して、何が不満なのか聞きだしてもらえば、なんとかなるだろう。あの人の怒りの矛先を聞きださないと止めようがないからな。なんなら、刹那にも手伝ってもらえばいい。」
「刹那? こらこら、おまえさんたち、それは禁じ手だろ? うちのが武力介入なんかしたら、たちまち戦争だぞ? 」
「そうでもない。まず、キラさんがSフリーダムで出て来た瞬間から、臨時の演習ということになる。ザフトは、その瞬間に臨戦態勢に入るし、そこに刹那がダブルオーで出てきても正体不明の敵機(仮)ということになって騒ぎにはならない。キラさんを止めるためなら、なんでもオッケーになるからさ。・・・・あの人、本気で迷惑だから、真面目にキラさん襲撃のシミュレーションって組まれてんだよ。いつ何をするかわかんない人だから、ザフトでも対処は考えたんだってさ。俺のところにもマニュアルが一式送られて来たぜ。たぶん、ハイネなんか地上でキラさんを止めるとかの依頼されてるはずだ。」
作品名:こらぼでほすと プラント5 作家名:篠義