二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
誕生日おめでとう小説
誕生日おめでとう小説
novelistID. 53899
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

りーなとレスポール

INDEX|2ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 


 部屋はキチンと整頓されていて、前川みくの性格が滲みでているようだった。家主が動物番組の海外ロケに出張中のため、今は李衣菜が寝泊まりして管理している。
 ベッドにロック星人を立てかけると、李衣菜はカーペットに尻餅をついた。
「で、そのロック星人さんが何なんですか」
「信じてくれたか少女よ」
「信じる、信じるからもう絶対あんなことしないでよね! あぁあ〜〜明日のニュース見たくないよぉお」
 李衣菜は頭を抱えて己の運命を呪った。
「それでロック星人さんだっけ? もう元気になったんなら、今直ぐ帰ってくんない? 色々あってもう私クタクタだよ」
「先程から救難信号を送っているのだがどうやら届かない距離に仲間がいるようだ」
「な、なんか嫌な予感がするんだけど……」
 機械的に言うロック星人に李衣菜は青ざめた。しかしそれは杞憂だった。
「最期のお願いだ。ワタシをハードオフに売っぱらってくれ。この星のロックCDを購入するくらいにはなるだろう」
「ハードオフとか知ってるんだ……じ、じゃなくて、え、どうしてそんなこと」
「これ以上君を巻き込みたくない。買われた者に頼むとする」
 李衣菜は返事をしなかった。
 考えるような間の後、神妙に頷く。
「……わかった」
「短い時間ではあったが感謝する。できれば少女の名前を教えてほしい。君のロックな魂にワタシは助けられた。それを忘れたくないんだ」
「私は多田。多田 李衣菜。ロックなアイドルを目指してる、346プロ所属の新人アイドルだよ」
「多田 李衣菜。いい名前だ。そしてありがとう多田 李衣菜。ワタシが星に帰ったら君の銅像をこしらえさせて名前刻んで讃えよう。申し訳ないがハードオフで力尽きなければの話だ」
「そんなのいらないよ」
「そうか。それ以外となるとワタシの星のロックを君に聴かせるくらいしか考えつかない。我々のロックは地球よりも四半世紀以上進んでいると思われる。君にも聴かせたい」
「あのねぇ」
 我慢できないと李衣菜はおもむろに立ち上がった。
「ロックってのはさぁ、見返りを求めないんだよ。ロック星人ともあろうお方が、そんなことも知らないわけぇ?」
「多田 李衣菜が言っていることを理解できない」
「ロックってのは音楽じゃない。生き様ってことだよ」
「生き様」
 ロック星人が吟味するように繰り返した。
「そう。だからさ。熱いソウルを持っている私が、困ってる人を見過ごす訳ないんだよね」
「すまない多田 李衣菜。ワタシは地球の言語がよくわかっていないようだ。君の言っている言葉の意味が一つもわからない。熱いソウルとはなんだ」
「え? そ、それを訊いちゃうかぁ、え、ええと……」
 シワを寄せた眉間に人差し指を当てて、李衣菜は瞼を閉じている。
 パッと目を見開いた。
「そう! 言葉を言葉でしか感じ取れない時点でロックじゃなんだよなぁ。わかんないかなぁ〜〜、この抑えきれないビートがさぁ」
「なるほど。教えてくれ」
「こ、こういうのは教えられるもんじゃないの。自分で掴み取るもんなんだよ、わかる?」
「感じ取れということだな」
「なーんだ、わかってるじゃんか。そういう、ことぉ! ふぅー……」
 こっそりと安堵の溜息をつく李衣菜。胸を張ってロック星人に向き直った。
「というわけでロック星人さん、私があなたを助ける! よろしくね!」
「なに。いいのか多田 李衣菜」
 思っても見なかったことだったのか、ロック星人の平坦な声に驚いているようなニュアンスが混じった。
「おうよっ! で、でも、あんなこともう二度としないでよね。命がいくつあっても足りないからさ……それだけは約束してよ」
「ありがとう多田 李衣菜。ワタシはとても嬉しい」
「りーな、って呼んで」
 晴れ晴れとした笑顔で、李衣菜はロック星人に手を差し伸べる。
「わかった約束しようりーな。それならばワタシのことはレスポールと呼んでくれ」
「へえ、レスポールって言うんだぁ……なんか、ロックっぽい響きじゃん!」
 李衣菜はロック星人、レスポールのネックに握手した。