独占欲 その2
「あのぉ…お化け屋敷入りたいんですけど。」
無愛想に輪をかけていた馬村だが、
意外にもそこがウケて
声をかけたい女子がどんどん釣れる。
あっという間にお化け屋敷は盛況を迎えた。
休憩前より客の入りペースが速く、
すずめを含む、中のお化け達は
忙しくなった。
しかし、だんだんと驚かない女子率が高くなり、
「さっきのドラキュラの人、かっこよかったね!」
「早く出てまた話しかけてみようよ!」
とキャッキャッいいながら、
こちらに気付かず、驚きもせず
出て行ってしまう。
「…ドラキュラ…?」
猿丸くんがやけにモテてんだな。
と、すずめは意外に思いながらも、
自分の職務を全うしていた。
すずめが2回目の休憩をもらい、
お化け屋敷から出ると、
受付には女子がすごい並んでいた。
「!すごいね!何事?!」
人だかりを見ると、
女子にいろいろ話しかけられ、
うんざりしている馬村がいる。
「まっ馬村!?なんで受付に?」
「猿丸が腹壊しちゃってさ、
馬村と交替させたの。
すずめちゃんと後夜祭回らせてあげる、
って言ったら飛びついてきたよ。」
「え…」
そんな取引、いつの間に?
馬村の目が不機嫌を通り越して
死んでいた。
が、こんな女子の人だかりから
馬村を連れ出すなんて、
そんな恐ろしいことできるわけがない。
でも馬村が多勢の女子に
囲まれているのを見るのにも
すずめはモヤッとした。
わかっちゃいるが、
つい「むぅ…」と、ふてくされ、
馬村を放置して、
ゆゆかと休憩に入ってしまった。
「アンタ、よかったの?」
「な、何が?」
「何がじゃないわよ。
人に散々素直になれだの言っといて。
馬村くん、アンタといるために
引き受けたって話じゃない。」
「だったらなおさら最後まで仕事しないと…」
「ま、私には関係ないけど?
こじらせないでよ?
アンタ後々面倒なんだから。」
そう言って呆れるゆゆかの横で、
ブツブツと「だってどうすればいいの」
とすずめは独り言を言っていた。
「あ。」