ひとりじめ
「オレも。」
「え?」
「オマエのこと、失い難いって思ってっから。」
「う…うん。ありがとう。」
いい雰囲気になって、
思わずキスをしようとしたら、
「あっ!あれは?なのだ、の悪役のぬいぐるみ!」
と、逸らされてしまった。
「……。」
わざと?それとも気づかないだけ?
「捨ててはないはずだけどどっかいった。」
「そうなの?」
すごく残念そうな顔をする。
「…大地が持ってっかも…」
「えっ!見たい!
私のは、おじさんにもらってすぐ、
新幹線に忘れてっちゃったんだって。」
急にパァっと顔が明るくなる。
「多分このへん…」
大地の部屋に入り、
ベッドの下の衣装ケースの中を探した。
使わないもの、遊ばないものは
ここに突っ込んでくことが多い。
ていうか、あのぬいぐるみは
オレが昔ここに隠した。
母親が家を出て行った時、
もうこれは見たくないと思ったけど、
捨てるに捨てられず
とりあえず大地に内緒で入れたんだ。
ただ入れたのがずいぶん昔なので、
記憶に自信がなかった。
「あ、マジであった。」
少しホコリを被って
布地もちょっとだけ褪せているが、
ガキの頃気に入っていつも持ってた割に
キレイだった。
「懐かしい!」
アイツが心底嬉しそうに笑った。
「いるならやるよ。」
「えっ、ダメだよ。馬村の想い出じゃん。」
「どうせしまいこんでたもんだしな。
オレ持っててもしょうがねえし。」
コイツとあの話をするまで
存在すら忘れていた。
「…いいの?!」
「そんなんでいいなら。」
「ありがとう、馬村!大事にする!」
アイツがふわっと笑ったので
すかさずキスをした。
「お、お父さんいるのに…!」
「なんだよ、そんなこと気にしてたのかよ。」
「//気にするよ!」
「見せてるわけじゃねえし。」
「あっ……当たり前じゃん…///」
だんだん興奮して大きくなる声に気付き、
アイツが声のトーンを落とした。
やっぱり居ない時のほうがよかったか?