こらぼでほすと プラント11
「ママニャン、三蔵さん、自分の女房を盗られるのは断固拒否だぜ? アスランなら止められるけど、あの人は俺らでは無理だからな。」
ディアッカたちは知っている。寺の女房拉致事件の時は自ら名乗り出て、女房の奪還に走った。それを知っているから、ディアッカは怖い。坊主とサルに本気を出されたら、ザフトは破滅する可能性もある。
「そうだな。気をつけるよ。」
で、さらにレイに抱きつかれた。大丈夫だよ、と、ニールが背中をポンポンする。
「親殺しの汚名を覚悟しました。」
「こらこら、レイ。」
「何もされてませんか? 」
「されてないよ。そういや、おまえさんの幼少時の写真があるんだって。もらってもいいか? 」
「いいですが・・・可愛くないです。」
「そんなことはない。きっと可愛い子供だったに違いない。私邸に行った時に気付けばよかった。・・・・レイのパパさんは、おまえさんを俺に預けてくれるってさ。」
「ええ、俺も、そのつもりです。」
「その話をしてただけだ。・・・・とりあえず座りませんか? みなさん。」
「そのすっとこどっこいにパンチしてからでいいか? ねーさん。」
「シン、悪かったって。ごめんごめん。何もされてないから。」
「おねーさま、あたしはキックで。」
「いやいや、ルナマリア。明日は買い物に付き合ってくれんだろ? もう、どこにも行かないから。」
代わる代わるニールに文句を垂れているので、大騒ぎになっている。そこを通り過ぎて、トダカとタリアが視線で合図して議長の前に立つ。
「すいませんね、ギルさん。」
「ごめんさいね? ギル。」
と、おっしゃってから議長様に二人でパンチだ。報復しておかないと騒ぎの収拾がつかないから、大人たちでやっておくことにした。ダブルパンチで議長様は二メーターほど吹っ飛んだ。
「うちの娘は居なくなると大変なんです。今度からは、きっちりとアポイントをとってください。」
「プロポーズするな、と、私は言ったわよね? 耳がお留守なのかしら? ギル。」
てめぇーが暴走するから、こうなったんだよ、という笑顔の背後からのオーラに議長様も平謝りするしかない。二人の手加減したパンチで済まさないと、悟空の半死半生パンチとかシンの大怪我必死のパンチとかルナマリアの足腰立たないキックなんかが待っていたからだ。ニールが駆け寄ろうとしたら、レイに止められた。
「ギル、俺のママは最強です。これからは気をつけてください。」
と、声をかけて議長様の背中に足を踏み下ろす。どすっと入って、さすがに議長様も、しばらく意識を飛ばした。
ほどなくお茶が届けられて、応接でお茶になった。人数大目に頼んでくれたので、全員に行き渡る。これといって難しい話をしていたのではなく、単なるレイについての話をしていた、と、ニールが説明すると、なんとなく落ち着いた。
「そんなに心配しなくてもいいだろ? 30分くらいで戻るつもりだったんだよ。」
「何かあっては問題です。俺は、ママの身体に傷がつくのは困ります。本当に、何もされてませんか? ママ。」
「これといっては何も。」
「キスも抱擁も? 」
「ないない。だいたい、おまえらさ、俺みたいなおっさんが襲われるって考えるのが、そもそもおかしいだろ? 」
「おまえが無自覚すぎるんだ。ハイネは本気だ。」
「イザーク、あれは同居してくれって誘いだろ? 」
「でもさ、プラントに駆け落ちしたいって言ってるじゃん? あれは本気だろ? 」
「三蔵さんに拒否られてるから諦めてるよ。」
「レイのママさん、それは本当ですか? 」
「はい、みんなが冗談でプロポーズするんです。一種のスキンシップみたいなもんです。鷹さんに到っては、キスはするわ尻は揉むわで。キスは、かなりやられてます。」
「キラもしてたよね? 」
「あいつは性質が悪い。舌をつっこみやがる。他はフレンチかバードまたは頬だな。」
「俺、やりたくねぇー。」
「俺もー。」
「やらんでいい。慣れたから驚かないけど、やりたくはない。」
「やはりフェロモン垂れ流しなのですね? レイのママさん。」
「いや、垂らしてません。タリアさん、イヤですよ? 」
タリアが立ち上がろうとしたので、先にニールが止めた。ものすごく楽しそうな三日月の目で笑っている。あれはからかうつもりの目だ。
「あら、残念。可愛いからフレンチまでならオッケーなのに。」
「あたしもフレンチまでなら。」
「ルナマリア、そういうのは好きな人とやりなさい。挨拶は頬だろ? 」
「おねーさまなら唇もオッケーでーすっっ。もしかして、うちの妹とは挨拶キスはしてますか? 」
「いや、メイリンとは、なかなか逢えないんだ。彼女は、ラクスについてるから、仕事で飛び回ってるんでさ。ラクスが休みだと、メイリンも休みだから顔を合わせる機会が少ないんだよ。」
「そうなんですか。でも、結構、おねーさま情報は送られてくるんですよ? 」
「そりゃラクスから聞かされてるんだろ。うちにも遊びに来てくれたらいいんだけど。」
「こっちからメールしておきます。あの子は遠慮してるんだと思いますよ。」
「遠慮はいらないよ。そう言ってくれ。」
「りょーかいっっ。」
すかさず、ルナマリアは携帯端末でメールを送りつける。リジェネはココアじゃない、と、文句を言い出したので、後で用意するから、と、ニールが宥めている。
「もう退屈。どっか行きたい。」
「どっか・・・うーん、イザーク、近場で俺らで行けるとこってないか? 」
「近場と言われても、ここいらは軍施設しかないからな。商業ゾーンまで出ないと、何もないぞ。」
「それじゃあ、あたしと散歩がてらにショッピングしますか? おねーさま。どうせ、シンたちは続きをやりたいだろうし。イザークたちは途中でしょ? 」
まだ見学中のシンたちは、シミュレーションで遊びたいだろう。イザークはトダカから意見を聞きたい。そうなると、空いてるのは
ルナマリアということになる。
「そうだな。悟空の夜食は用意しておいたほうがいいな。あと本屋とか行きたいけど、いいか? 」
「それぐらいなら楽勝です。」
携帯端末で、散歩するのに良さそうなところをルナマリアがチェックしていると、おかしな場所から手が挙がった。
「いや、ちょっと待ってください、レイのママさん。それなら、私も参加させてください。」
「「「「はあ? 」」」」
どっかの議長様が手を挙げたので非難轟々の視線だ。
「仕事はいいんですか? ギルさん。」
「夕方までの時間は確保しているんです。ですから、お供させていただけませんか? 」
「でも、警護とか大変じゃないんですか。」
「いえいえ、適当に変装していればバレません。本屋なら私も行きたい。」
「俺はいいんですが・・・・イザーク? 」
「別に予定さえ問題ないなら構わないんだが・・・スケジュールは問題ないんですか? 議長。」
「ああ、午後一杯の予定をスルーしたんだ。夜にアプリリウスに戻れば問題はない。タリアも参加しないか? 」
「私はニールくんたちの護衛だから構わないわよ。警護のほうに連絡してちょうだいね? レイは、どうするの? 」
ニールの横に座っているレイにタリアが尋ねたら、もちろん参加の方向だ。
作品名:こらぼでほすと プラント11 作家名:篠義