こらぼでほすと プラント14
アスランが買出しを提案してくれたが、寺の日用品とか常備食なんかも切れているので、ニールも買い出しに出かけたい。ということで、まず、アスランが来てスーパーまでクルマで出かけることに決まった。
「マリー、買い出しに行くから付き合ってくれ。」
「了解です。それなら、まず食事をっっ。・・・アレルヤからニールママの看護はレクチャーを受けておりますので。ほほほほほ。」
「え、それって・・・」
「食べない場合は、口に突っ込めと。」
「はいはい、食べるよ。うちの亭主は? 」
「私が寺に戻った時はいらっしゃいました。」
しかしだ。居間に顔を出したら、もぬけの空だった。通常営業らしい。庭には、たくさんの洗濯物が干されてたなびいている。どうやら、ニールが寝ている間に、家事はしてくれたらしい。
マリーのほうは携帯端末でアレルヤに連絡している。まだ、マリーは食事の準備なんかは無理なので、呼び戻した。すぐにアレルヤが麦藁帽子にクビにタオルという恰好で走りこんできた。
「おはよーニール。そして、ただいま。」
「おかえり、アレルヤ。ごめん、俺のメシって、どれ? 」
「ああ、冷蔵庫なんだ。よく眠れた? 」
「うん、ぐっすりだった。ちょっと顔を洗ってくる。30分したらアスランが来る。スーパーへ買い出しに行くから、マリー、貸してくれ。」
「僕も行くよ。」
「いや、あいつのクルマだと五人は乗れないんだ。」
「じゃあ、僕、バイクでついてく。」
「まあ、いいか。荷物持ちは必要だな。」
洗面所に、ニールが向かったので、アレルヤのほうはニール用の食事を準備する。チンするものもあるので、そこいらから始める。
「アレルヤ、手伝えることは? 」
「これ、卓袱台に運んで。・・・・退屈だった? マリー。」
「いいえ、のんびり読書したわ。」
「うふふ・・・布団に近寄らなかったね? 」
「ええ。どうして、わかるの? 」
「傍に居ると、ニールが引っ張って布団に寝かせてしまうんだ。本人は無意識なんだけど、抱き枕が欲しいみたい。」
「あら、残念。そういうことは先に教えてくれないかしら? 」
「ごめんごめん。」
ニール当人は知らないが、マイスター組は、よく知っている。刹那が、ぴたっとくっついて寝ているのは、よくあることだが、あれは刹那だけが悪いのではない。ニールも安心するらしいからだ。だから、寝入りばなに傍に座っていると、体温を感じて引きずり込むのが、ニールの寝癖になっている。
そんな話をしていたら、ニールが戻って来た。
「さあ、ニール。食べられそうなものから食べて。僕、悟空に買出しして欲しいものを聞いて来るから。マリー、よろしくね? 」
アレルヤは、勝手知ったるなので、まず悟空にお伺いだ。在庫がなくなっているものが多いらしいので、悟空も行くかもしれない。
「え? こんなに? 」
卓袱台には、ホカホカしたおじやの他に、ちょこまかと惣菜が入った、お弁当がある。これは食べられないだろ? と、ニールが内心でツッコミしたら、横から木の匙が出て来た。
「はい、ニールママ。私、初めてなので、よろしくお願いします。」
「いや、マリー? 自分で食うから。・・・おい、そのフォークに刺さったのを放せ。」
木の匙には、おじやだ。そして、フォークには肉がブッ刺さっている。
「炭水化物だけでは栄養は摂取できません。はい、どうぞ? ティエリアからも口に投げ込めと言われてます。」
なんかいろいろと指示を出しているらしい。おまえらは、俺を病人かなんかと勘違いしているのか? と、ツッコミを内心で入れて、木の匙はマリーから貰い受けて手にした。さすが本宅のシェフが作ったものはおいしい。あっさりしているが、栄養はありそうなものだ。
「これは、なんですか? 」
「オクラの酢の物。味見してごらん。」
「うわぁー、ネバネバしています。」
「苦手? 」
「食べられますが・・・・ちょっと。」
「ティエリアたちも苦手なんだが、それ、栄養はあるんだよ。こっちは、ゼンマイの煮物。特区の野草らしい。これは、味噌漬けの魚の焼き物。ほうれん草のおひたし。じゃがいものこふきいも。・・・これは・・・白和えだな。豆腐って食ったか? マリー。それの和え物だ。俺用だから、あっさりしたものが多い。味見していいよ? 」
「こういう料理は、あまり試してません。いろいろと種類が多いんですねぇ。・・・これは美味しい・・・ニールママ、これは好きです。」
「じゃあ、豆腐はオッケーだな。大豆で作られた加工品なんだが、これも植物性のたんぱく質。おじやも味見するか? 」
はい、どうぞ、と、冷ましてマリーの口に放り込むと、これもおいしいらしい。ニコッとマリーが笑顔で頷く。そして、フォークとナイフで魚をバラして突き刺す。自分で食べると思っていたら、口に運ばれた。
「はい、ニールママ、誤魔化そうとしてもダメですよ? さあ召し上がりましょうね? うふふふふ。」
「バレた? 」
「みんなに食べさせて、自分は食べないという作戦を使うから気をつけろ、と、ティエリアが。」
ティエリアから、ニールが、よくやる誤魔化しについても教えてもらった。なんでもいいから、口に投げ入れてくれ、と、お願いされていたので、マリーは気付いて口に運ぶ。
「本当に入らないんだよ、マリー。」
「では、おじやは半分残して、惣菜も召し上がりましょう。ひとつずつ、少しずつでいいので食べていただきます。」
「厳しいなあ。」
「うふふふ・・・・楽しいですわ。ニールママって、私のことも子供扱いしてくれるんですもの。」
それほど親しいと思うほどの付き合いはしていないはずだが、ニールは最初からマリーにも、ざっくばらんに相手をしてくれている。超兵だから、とか敵軍だったとか、そういうものはスルーしてくれているし、長年、仲良くしているような雰囲気で接してくれる。それだけで、マリーは嬉しくて笑顔になる。ティエリアからも、あの人は、子供に甘いから散々に甘えてやってくれ、と、アドバイスはされていたが、本当に、その通りだ。
「当たり前だろ? アレルヤのツレなんだから、俺にとっては子供のツレだ。一々、気遣いとかしなくていいから。実家に帰ったと思って、好きにしてればいい。」
「はい、そうさせていただきます。はい、あーんですよ? ニールママ。」
こふきいもを半分にしてフォークで差し出すと、ぱくっと食べてくれる。なんだか、餌付けみたいで楽しい。
「おまえさんも味見しな? 俺は食いきれない。」
「じゃあ、少しだけ。・・・あ、でも、今、満腹すると晩御飯が食べられるかしら。」
「大丈夫だ。今から買出しで腹は減る。ホームセンターとスーパーと両方だから、結構歩き回る。それでも減らなきゃ寺の周辺をランニングでもすればいいさ。・・・今日は、そうめんだけど経験は? 」
「それは食べました。冷たくておいしかったです。」
「うちのは、野菜も肉もたっぷりだ。」
「それは嬉しいかも。一人前だと、すぐにお腹が空いて困りました。」
「お店のは、そうだろうな。・・・はい、オクラ。」
「いやですっっ。ニールママの意地悪っっ。」
「あはははは・・・マリーも面白いなあ。」
作品名:こらぼでほすと プラント14 作家名:篠義