Angel Beats! ~君と~ 日向編
入江と関根と初音ちゃんがキャーキャー騒いでいたり、直井は冷ややかな目で見ていたり。遊佐が嘲笑してる。藤巻は頬をなんか指で掻いてるし、岩沢は何か食ってるし、ひさ子は呆れていたり、
高松は眼鏡を上げるだけだし、小枝は何か顔を赤くして大山の後ろに隠れて…いや、しっかり抱きついてんな。
松下に至っては青春だなって…!? 松下ってこんな痩せてたか!? 丸い顔に柔道に持って来いの身体行方不明になってる!太い眉毛細くなっちまって……綺麗なモデル体系っぽくなってるし!
って何で俺別人みたいな松下のことを…分かってたんだ…?
そんなこたぁどーだっていい!
な、なぜなんだ! 何故お前ら居るし!!
「どうしてってお前とユイにお土産をだな…」
「音無くんどうやらその必要は無いみたいだし私らだけで食べて見せ付けるとしましょう」
「賛成だな。音無さーんこんなむさ苦しい二人をほっといてこのロケット饅頭を二人だけで食べましょうー」
「もーゆりっぺ! どうして貴重な場面を台無しにするー! キスしてるところ見世物にしようと思ってたのにぃー!!」
「だめだよしおりん!」
「関根さんまるで何とかの貴重な産卵シーンみたいなことを…」
「そうだよ! 貴重だよ! ヒ・ナータは今正に愛をユイにゃんとぶりぶり産卵しているんだヨ!!」
「な、なんか汚い…? 産卵ですね」
「愛は時として汚いものですよ。浮気が発覚したら泥沼化しますしね初音さん」
(……私も、大山くんとそうなったら…そうなるのかな…。あー、ダメだ考えただけで恥ずかしい……)
「小枝さんできたら後に行かずに横に来てくれたら……いててて」
「って、違う!! いつからそこに居たんだよ!」
『結婚しようぜ』
「……」
竹山がパソコンの画面を俺達に見せ付けていた。
しかも割とキスする一歩手前ら辺か。
どうやら映像は撮れなかったらしく、心電図みたいな音の波長のみのものが写し出されていた。
どうしてこんなに冷静に分析出来てるのか俺には知りましぇーん。
「おおおー!! 竹山っちナイス! ぃよーし、これをみんなの着メロにして日向っちに恥かかせてやろうずぇーーー!」
「やめろぉぉぉおおおおおおおお!!」
「竹山あたしにも後でケータイのメールで送信してくれないか」
「良いですよ、それとクライストです」
ユイが顔に両手を当てて恥ずかしがっている。
俺にこの事態をどう収集させるのか、知らない。
「ま、冗談はこの位にして、はいユイ。これお土産」
ゆりっぺがユイに歩み寄ると、小さい紙袋を手渡した。開けてみてと促し、セロハンテープで封されているのを剥がして袋に手を入れる。
「これ手作りですか?」
ユイの手には色とりどりの貝のブレスレットが乗っかっている。
「ええ、そうよ。穴開けるの難しくてお気に入りの貝殻潰しちゃったり、ね。苦労したけどこうして渡せて嬉しいわ」
「ありがとうございます!」
数分前には考えられないくらいだなユイ。でも、これで良かった……のかな。
と、あれこれ考えていると関根と岩沢の携帯から俺の本気の告白が流れ出ていた。
「何ちゃっかり貰ってんだ!」
「岩沢さん日向っちのこの無駄にイケメンな声ムカつきません?」
「そうだな削除するか。悪(わり)ぃ竹山せっかく送ってくれたのにな、スマン」
「構いません。それとクライ」
「ひどすぎんだろ!! 俺の本気を何だと思ってるんだアホンダラ!」
「うわぁ…ムキになることはないんじゃないかな」
引き目になりながら削除していかれた告白。短い間関根と岩沢のケータイにお世話になりました。
「そうさせてるのは誰なんだ!」
まったく!!
横目でユイを見てみる。初音ちゃんと嬉しそうに笑ってくれている。見た目は変わらないだろうけど、ユイに重みが取れた気がした。
キスは…しなくとも良かったなぁ……いや、したくなかったと言うと嘘になる。こういうのは大人になってからの方が良いよな。その場の雰囲気に流されてするなんて持っての外だ。こういうパターンは後々になって後悔するんだ…。でもユイとなら、俺は、後悔はしないな…。
こんなドラマチックなことなんて滅多に経験はしないだろうな。でも何となくこんなことを前にしたことがある。デジャブってやつかもな。
「こんなにブレスレットあったらどこに着ければ良いかわかんないや」
ユイの周りにゾロゾロとメンバーがお土産を渡していく。
……ん? 俺の分は?
「あたしの他に作ってたのいたわね……ダブらせたら駄目ってのに」
「嬉しいですよー」
「そう、なら良かった。足首にも付けてみる?」
「手にしときますよ」
「私のは……ごめん、貝殻だけで」
「どうかしたんですかい?」
「あーっと、私ぶきっちょでさ、そのー、ごめん」
小さくて何かの秘宝を入れる宝箱を小枝が渡していた。
こいつ変なところで器用なのになー、昔もそうだったな。投球はピカイチなのに小物を作るのは苦手だったよなー。
「お前女子力ねーなー」
俺の土産はどうやらないみたいなのでちょっと意地悪なことを言ってみる。
「うぐっ……ぅー、返す言葉もありません……」
「もー折角こんなにいっぱい綺麗な貝を詰めてくれたのに、酷いですよ先輩。ね小枝さん」
「そっそうだ、ユイちゃんのゆーとおりだ! もっと敬うんだ日向!」
ふんす、と無い胸を張って威張る。………ユイの方があ―――
ドガァ!!
「げっふぇぁ!!?」
小枝が急に接近してきて俺の腹にボディーブローを!
なんつー速さだ!
「何しやがんだバカ!」
「………私分かるんだよ?」
「え?」
「日向がおっぱいのこと言ってるの………」
「思ってねえよ!」
「私は一言も思ってたなんて言ってないよ?」
こ、こいつ……誘導尋問を……。
「私まだ見込みあるもん! ひさ子さんが異常なだけだよ!!」
小さいお手てでひさ子を指差す。ひさ子は小枝に音を立てずに忍び寄る。残念だ小枝、御愁傷様だ。
視線が痛いが気にしないぞ。
「何だと! このチビ助!!」
「あだだだだ!! ごめんなさいいいいい!!」
「ユイにゃんあちきからもプレゼントだぞ、受け取ってくれまいか?」
コメカミをグリグリされているのを尻目に関根はユイにプレゼントをする。
「中身は?」
「開けてからの楽しみだぞ、ささ、開けるんだ」
漫画でよくある、小綺麗に包まれリボンがされている箱。白い箱に赤い蝶々結びリボンだった。
「うー、痛いよー」
「ったく、良いか、大きいからって言ったって得なんて無いんだぞ。肩凝るし、演奏の邪魔になるし」
「いっ嫌味かあああああああ!! うわーーーーーー!! 何で私は小っちゃいんだあああああああああああ!!」
頭を抱えて地面に座り込む小枝。心の痛みなのか、グリグリされら痛みなのか、見ればわかる。
確か十年後の小枝って無かったことになったんだっけな。だったら見込みも何も無いんじゃないのか、って言ったら殺されるから胸にしまっとこう。
「それ音無に聞いたほうが良いんじゃないのか? ほら、この医院長の息子だしな」
作品名:Angel Beats! ~君と~ 日向編 作家名:幻影