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こらぼでほすと プラント16

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 痛みもなく医療ポッドから出た。リジェネが案内する方向に歩いても、何も変わらない。何重かのロックされた扉を開いた場所に、それはあった。大きな容器に電極をつけられた脳が静かに固定されている。周囲には付随した装置が並んでいるが、それだけだ。
「これが、今の俺か? 」
「そうだよ。きみの脳。きみそのものだ。頭蓋骨から外したから多少、肥大しているけど、これがきみ。」
 人間の脳を見るのも珍しい。ましてや、自分の脳と対面するなんて、有り得ないことだ。だが、それだけが、レイのもので、この肉体はイノベイドのものだ。
「・・・・信じられない。」
「うん、まあ、肉体とリンクさせているから、今まで通りに動けるよ。人間に近いものにしたから、怪我もするし疲れもするから、何も変わらない。」
 灰色の脳は、眼の前にある。それを見ているのはレイだが、レイ本体ではない。不思議な気分だ。新しい身体は、きちんと体温もあるし心臓の鼓動もわかる。なんだか騙されている気がして笑えた。
「これで、二十年。俺は変わらずにいられるんだな? 」
「うん、老化はするけどね。何もかも人間の肉体と変わらないので、生殖活動もできるよ? まあ、精子は作れないから妊娠させたりは無理だけど。」
「それは元から無理だった。・・・・くくくくく・・・そうか。なんだか、呆気なくて驚くな。」
「呆気なくはないんだけど? 僕が十日かけて、せっせとシステムとにらめっこしたんだからね。」
「今日は何日だ? 」
「お盆ウィークに突入した。少し、ここで運動したり、リンクが外れた場合の対応を試して、問題なければ完了。」
 レイの遺伝子情報を元にしているから、それほど問題はないはずだが、一通り、試してみる必要はある。
「まずは着替えさせてくれ。この恰好じゃ心許ない。」
「了解。着替えを持ってくる。さあ、対面は終わり。ここはロックするから。」
 レイの脳はヴェーダの深層部に保管している。ここなら、攻撃されることがあっても破壊されることはない。連邦が接収して使用しているが、深層部には辿り着けなくしてある。今もヴェーダは連邦の技術者が多く、乗り込んできて試験運用している。そことリジェネたちのいる区画は完全に隔離されている。
「なんだか、実感がないな。」
「でも、変わってるのは事実。僕とリンクできるようにしたから、携帯端末を使わなくても会話もできる。」
「なるほど、そこは違うんだな。」
「万が一、レイが素体とリンクできない状況になったら、僕が、きみの素体を動かすためだ。心が覗けるわけじゃないからね。」
「了解した。」
「まず、何をやってみる? 」
 機能障害がないのか確認するため、一通りの日常動作はやってみる。うーん、と、レイは考えて、「アイスココアが飲みたい。」 と、言い出した。それはレイの好物で、ニールが作るものだ。
「それはいいな。僕も、ママのココアが飲みたいよ。・・・・ここで作るのはレシピ通りで、ママのとは違うんだよね。」
「あれは、少しだけインスタントコーヒーの粉を混ぜてあるんだ。だから、ママのは違う。」
「ああ、そうなんだ。じゃあ・・・ああ、ダメだ。インスタントコーヒーがないよ。」
 そりゃ、そんな安物は、ここにはないだろう。それを聞いて、レイは笑った。あの日常に戻れるのだと思うと嬉しくなってくる。
「リジェネ、それは特区へ帰ってからのお楽しみにしよう。俺もママのココアが一番おいしいと思う。」
「だよねぇ。僕、こっちで食事も食べたけど、やっぱり味気ないんだよ。もうすっかり、ママの味に慣れちゃったんだとわかった。」
「俺も、そうだ。・・・・不思議なものだな? ママの顔を拝めると思うと嬉しくなるんだ。」
「あははは・・・僕も。仕事が終わって寂しくて、こっそりスーパーの警備システムを乗っ取って、ママの姿を見てた。もうね、ママの笑顔を見てるだけで泣けてくるんだよ? たぶん、これってホームシックっていうんだ。僕、イノベイドなのにね。」
「俺だってコーディネートされたクローンだが、ママだけは別格だ。・・・早く逢いたいと思う。」
「じゃあ、さくさくとテストして帰ろう。」
「ああ、カリキュラムをこなせば特区だ。」
 二人して、扉をいくつか通り抜けた。テストに問題がなければ、すぐに逢える。それだけで気分が明るくなる。


 
 オーヴでは、例年通り、カガリの別荘で好き勝手な漁業したりテニスをやったり、とにかく動きまくる。大人組は、全てに付き合わないので、のんびりプールサイドのデッキチェアで日光浴をしていたりする。
 年少組は午前中は、ヨットで漁業だった。本格的に泳ぐ用の機能性重視な水着でマリーは、ヨットのデッキに立っている。
「マリー、今日こそは潜水だ。」
「わかりました、カガリ。ビシビシ鍛えてくださいっっ。」
 ニールが来ないのでカガリはマリーに水泳を教えるほうに専念している。ラクスのほうは、キラとフェルトとシュノーケリングを楽しんでいた。メイリンも参加しているので女性陣が増えている。
「メイリンもカガリに鍛えていただきますか? 」
「いえ、まったりと浮き輪で遊びます。」
 メイリンも、それほど泳ぎは得意ではないが、あの体育会系の鍛錬には参加したくない。どっちも肉体派なので、倒れるまで動いているような過激さだから怖い。ヨットで少し沖合いに出ているが、まだ珊瑚礁の内だから波も穏やかで、浅瀬もある。そこいらを水中メガネをして覗いているだけでも、いい癒しになる。
 で、カガリとマリーは、足ヒレもつけて本格的に潜水している。初日は、ほとんど潜れなかったマリーも、どうにか沈めるようになってきた。
「シン、これ、食べられる? 」
 アレルヤが水中から、でかいタコを引き上げてきた。体長はアレルヤ以上だ。
「食えるぞ、アレルヤ。・・・アスラン、網の袋ある? 」
「あるぞ。投げていいか? 」
「オッケー。」
 でかすぎるので網の袋に入れて、ヨットから海中に沈めておくことにした。タコを網に入れるのに、ちょっとてこずっていたら、悟空が、真っ赤なでかい魚を抱いて上がってくる。
「アスラン、これ、食える? 」
「ああ、それはおいしいんだ。もう少し近寄ってくれるか? 悟空。」
 一メーターは悠に超えた魚は、諦めたのか抵抗しない。緩々と悟空が泳ぎつつ、ヨットに近寄ったら、アスランが鉤詰めのついたフックで引っ掛けてヨットの水槽に投げ入れる。ここいらはカガリの私有地なので、勝手に魚を獲っても問題はない。だから、ついつい漁業に勤しむことにる。
「アレハレ、ちょっと手伝え。シャコ貝が重くて持ち上がらないんだ。」
 カガリからのヘルプのお願いに、はいはい、と、アレルヤも近寄る。数メーター下の海中で、マリーが、大きなシャコ貝と格闘中だ。海底にへばりついているので、揺すって外さないとならないし、かなり大きいので持ち上げるのは力仕事だ。
「あれも食べられるの? 」
「ああ、うまいぞ。三人で順番に揺すって貝を海底から引っこ抜いて、そこからは、おまえに任せる。さすがに、あの重さだと私では持ち上がらない。」
「結構、海は食べられるものが多いなあ。」
「毒があったり針で攻撃するのもいるから気をつけてくれよ? 」
「うん、わかった。」