こらぼでほすと プラント17
ギルバート・デュランダルの持つ目的のために活動していただけのレイは、その鎖を断ち切った。断ち切った原因はキラだが、その先の時間をもぎとったのは、レイ自身だ。遺伝子情報によって選別され生かされていたとしたら、こんなことは起きなかったはずだから、議長様は感動する。これがキラが自分で作るべきだと主張した人生というものだからだ。
「そうですね、俺も、自分が、こんなに挑戦的な面があるとは知りませんでした。でも、ママの愛情は、挑戦に値するものだと思います。・・・とても・・・とても嬉しい。ママを泣かさずに、これからの時間が確保できたことは嬉しい。不慮の事故がない限り、俺はママと暮らします。」
「ああ、そうするべきだ。たまに戻って来て欲しいな? レイ。できれば、きみのママと一緒に。」
「確約はできませんが、約束はいたします。こちらなら、ママも家事から解放されて身体を休められるので、俺も連れて来たいとは思うんですが・・・・ご亭主が許してくれるかが不明です。」
「今回のように、なんとかしておくれ。」
「今回は、初めてだったから許可が出た部分が大きいんですよ、ギル。それに、度々、プラントに遠征なんていうと、歌姫様とカガリも連れ出すことになるでしょう。そうなると許可が出ません。」
カガリは寺ごと移動して欲しい、とかなんとか言い出しているし、歌姫様はツアースタッフとして同行して欲しいとか、ガンガン予定を入れようとするので、そうなると坊主は暴れるに違いない。レイも、それには反対だ。寺の夫夫は、本当に仲睦まじいので、一緒にいてほしいとは思うからだ。
「なるほど、やはり、ネックは、レイのママさんのご亭主か・・・」
「いや、ママもご亭主と一緒に居るのが好きなんです。だから、何度も旅行は難しいでしょう。一緒じゃないと寂しいと言います。今回だって、ハイネからメールで、ご亭主の近況は報せてもらっていました。直接連絡するな、と、ご亭主から命じられていて、それしか方法がなかったんです。」
「え? 」
「ママは、ご亭主がいないとダメだって言うから、あの人を連れ出すのは難しいんですよ? ギル。」
「でも、レイのママさんは肉体関係はないとおっしゃっていただろ? 」
「ないですね。なんせ、俺やリジェネが普段の抱き枕ですから。精神的に繋がっているみたいです。」
だからこその信頼関係なんだろうとレイも思う。友情よりも深いが恋情ではないものが、二人にはあって、どちらも、それが楽しいらしい。
「だから、嫁入り道具に、ご亭主がついているのか。・・・なるほど、それは大変だ。」
「あははは・・・・ギル、甘いですね? それだけではありませんよ? 間男と恋人と子供たちもついてきます。あと、トダカさんもです。トダカさんとキラさんと悟空が、確実に阻止することでしょう。」
ご近所に居てもらわないと困るので、たぶん、『吉祥富貴』の関係者とマイスター組が、プラントへの嫁入りなんて阻止するはずだ。そう考えると、レイも想像して大笑いだ。かくいうレイだって、特区に居てほしいので、議長様を凹るつもりだ。
「レイのママさんは高嶺の花だ。あはははは・・・そうか・・・これが、きみの身につけた力の原因でもあるんだね。もちろん、そんな無謀なことはしないさ。いつかまた、訪れていただいて、ゆっくりお話したいと思うぐらいにするよ。もしかしたら、こちらからお伺いするほうが早いかもしれない。」
「ええ、特区に降りられるなら歓迎いたします。」
「レイの他の手料理もお願いしたいな。」
「はい、もちろんです。ギルも、俺のママとご亭主の様子を、ご覧になれば納得できると思いますよ? 」
「ああ、楽しみにしているよ。」
詳しい話はしないで、そんな先の話になった。レイにとっても議長にとってもできないものより、次の予定のほうが楽しいと思ったからだ。
カガリからの荷物は予定通り、翌日に、どかんと届いた。どうにもならないので仕分けして、店の冷蔵庫と冷凍庫に叩き込み、適度に持ち出して消費することになった。さらに、その翌々日に、さらに、とんでもない荷物が届いたので、ニールは、あんぐりと口を開けた。山門に停車した宅急便のトラック丸ごと一個分の荷物だったからだ。置き場所がなくて、とりあえず本堂に運んでもらった。贈り主は、プラントの最高執政者様で、坊主と二人して、たはーと荷物を見上げた。本堂の半分くらいが荷物で埋まったからだ。
「土産にしては多いな? ママ。」
「俺のは、お盆前に届いたやつですよ。これは、ギルさんが送ってくれたものですが・・・・てか・・・これ、単位がおかしいだろ? 全種類がダース単位って・・・」
つまり、レイが貰ったリストの全種類が一種類に付き箱単位で届いたのだ。在庫を置く場所がないほどに送られるとは思わなかった。カガリも性質が悪いが、さらに議長様は性質が極悪だった。賞味期限は長いので、今すぐどうということはないが、保管する場所が問題だった。さすがに店にも、これだけの置き場がない。アスランに連絡するとキラと共にやってきて、こちらも絶句した。
「なんですか? これは。」
「だから、贈り物なんだとは思うんだけどさ。どうしようか? アスラン。」
「バラして配布するしかありませんね、ママニール。アレハレたちは? 」
「今、散歩に出てるから呼び戻すよ。キラ、カリダさんは食べないかな? 」
「食べるとは思うけど・・・ちょっとでいいと思う。カガリのところの養護施設に寄付してもらおうか? あそこなら消費可能だ。」
「ああ、そうだ。ラクスの関係している養護施設もありますから、そちらにも寄付させてもらいましょう、ママニール。とりあえず、俺たちも配布して・・・ということは、やっぱり仕分けは必要になるな・・はあ・・・人騒がせな。」
好意なのだから、全部丸投げするのも申し訳ないので、いくつかはバラして店で配布することにした。リストがあるので、それを元にして箱を仕分けすることから始めた。
連絡して、十数分でアレハレたちがバイクで戻って来た。遠方ではなかったらしい。もちろん、アレハレとマリーも絶句した。うずたかく詰まれた箱は、かなりの数だったからだ。
説明して、箱を開いたが、とても出勤時間までに終わるとは思えない。
「これ、無理じゃない? アスラン。」
「そうだな。適当なのを店に運んで配布して、後は宅配の手配をしようかな。ママニール、それでもいいですか? 」
「なんでもいいよ。本堂が埋もれてるのはマズイ。三蔵さんの仕事の邪魔になっちまう。」
「じゃあ、キラ。とりあえず箱を開けるから、うちで消費できそうなのだけ教えてくれる? 他は、そのまま送ってしまおう。」
「そうだね。似たようなのが多いから、そうしよう。・・・・ポテチ関係だけでも十個以上あるもん。これじゃあ、消費も時間がかかるし、うちでは出せないね。」
作品名:こらぼでほすと プラント17 作家名:篠義