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こらぼでほすと プラント18

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「そうだね。まあ、二、三日したら考える。きみは、まだ動けないのかい? ティエリア。」
「そうだな、フェルトが戻ったら少し時間が取れる予定だ。俺はユニオンを希望する。」
「わかった。」
 ティエリアは、リンクが切れるような辺境地には行けないので、どうしても都市部が旅行先になる。だから、辺境地に出向く場合はティエリアが留守の時ということになるから、次のアレハレたちの予定は人革連の奥地を考えていた。それなら、まず、ティエリアとユニオンへ出かけて、それから人革連の奥地に赴くか、という、ざっくりした予定を立てていた。
 居間の卓袱台に座っている坊主に、リジェネが戻ることを告げると、おう、という鷹揚な返事だけが返ってきた。


 ティエリアがリンクして連絡したら一足遅かった。リジェネは、すでにタクシーに乗り込んでいたからだ。たぶん、このままだと夕立の最中に寺に到着することになるのだが、リジェネは構わない、と、微笑んだ。

・・・だって、ママ、ダウンしてるでしょ? ティエリア。僕、ママに早く逢いたいから・・・・

・・・それなら、それでもいいんだが・・・・・

・・・ありがと、大丈夫。レイのほうは? ・・・・

・・・明日には戻るだろう。これからシャトルに搭乗する・・・


 どちらもリンクしての会話だから目を瞬きする時間ぐらいで済む。自動のタクシーに目的地は入力したから、移動中で、誰もいないので気楽に外を眺めていた。確かに、ものすごい光と音だが、リジェネは音が遮断されていて、それほどのものとは思っていない。寺の山門の前に辿り着いて、タクシーのドアが開いたら、物凄い音と振動にビビることになった。
「なっなに? 」
 ドアを出れば、勝手にタクシーは走り去る。山門にいるが、音と光は強烈で足が竦んで動けない。ピリッと空気が動いて、けたたましい音がする。山門から家の玄関までは三十メーターほどだが、それが走れないのだ。家で夕立は、度々体験しているのに、外では初めてで、これほどの迫力があるとは知らなかった。というか、こういう時はママがダウンしていて、そちらの看病をしていたから、気付かなかったらしい。

・・・・どうしよう・・・こんなの怖すぎる・・・・

 ピカッ、ドーンと激しい光と音で身体が竦むなんて知らなかった。ひぃっと声を出して耳を塞いで小さくしゃがみこむ。落雷の音が怖くて無意識に自分が大声を出して誤魔化していた。
「助けてっっ、助けてっっママっっ。いやーーーこわいっっっ、こわいっっ、たすけてぇぇーーーー」
 途中で咳き込んで、ゲホゲホと息を吐いた。叫ばないと音がする。叫ばないと、と、顔を上げたら眼の前にはマリーが駆け寄ってくるところだった。


 雷鳴が激しくて、マリーですら、ちょっとビクッとする振動と音だった。これが落ち着かないと気圧も安定しない。早く通り過ぎてくれ、と、内心で願いつつ、ニールママの手を握っていたのだが、それまでくったりしていたニールママは目を開けた。
「・・・マリー・・・外で・・子供が泣いてるみたいだ。ちょっと探してくれないか?・・」
「え? 」
「・・たぶん・・山門・・・ごめん、起きれなくてさ・・・」
 なんの戯言だろう? と、思ったが、実際、ニールママは起き上がろうとするので、慌てて障子から飛び出した。山門のほうに目をやったら、本当に人影が在った。確かに、山門の下で小さくなっている。
「いました、ニールママ。保護してきますっっ。」
 そう部屋に叫ぶと回廊を駆け下りて玄関へ走る。脇部屋の前からでも降りられるが、こちらからだと靴がなかったからだ。たったかと走って玄関から飛び出たら、大きな音がする。どこかに落ちたのかもしれない。一瞬、マリーも怯んだが、山門の人は小さくなっている。こりゃヤバイと駆け出して近寄ったら、よく見た顔だった。ただし髪型だけが違う。

・・・ということは、この子がリジェネ? ・・・・

 咳き込んでいるリジェネが顔を上げたので、その手を握って家に引き返した。足が覚束ないで、ひょろひょろするので、えいやっっと担いだ。その時に物音に気付いたアレルヤが玄関から顔を出している。
「マリー? うわっ、どうしたの? 」
「アレルヤ、この人は、リジェネですか? 」
「そうだよ。そろそろ到着するとは思ってたんだけど・・・びっくりしちゃったんだね。」
 担がれているリジェネの靴を脱がせると今度はアレルヤが担いで廊下を走る。こうなると精神安定剤のところに連れて行かないと、どうにもならない。回廊を走り脇部屋に入ったら、ニールは布団から這い出していた。動こうとしたらしいが、そこいらが限度だったらしく、肩で息をしている。
「ほら、リジェネ、ママだよ。・・・・ニール、無理に動くと熱が出るよ? マリー、ニールを戻して。」
 ニールを布団に戻すと、アレルヤが、その側にリジェネを下ろす。けふけふと咳をして顔を上げたリジェネは眼の前のニールに飛びついた。
「・・おかえり・・・びっくりしたのか? ・・・」
「・・うん・・・・」
「くくくくく・・・そうか・・・大丈夫だよ・・・家に居れば・・・安心だから・・・」
「・・うん・・・・」
 リジェネの抱きついたママの身体は体温がある。やっと帰って来たと実感できたら、今度は涙が止まらない。あうあうと泣いて、縋りついて言葉が出てこない。
「・・・どうしたんだ?・・・」
 あんまりピーピーと泣くのでニールも目を開ける。ヴェーダで何かあったのかと気になるのだが、リジェネがピーピーと泣いて喋らないので苦笑した。雷でビックリしてパニック状態らしいから、しばらくは落ち着かせることにした。
「ニール、重くない? 」
「・・ああ・・・ちょっと落ち着かせるよ・・・」
 どっかりとしがみついているリジェネを見てアレルヤがニールに声をかける。トントンと背中を軽く叩いているニールは微笑んでいるから大丈夫らしい。それなら、家事のほうに戻るよ、とアレルヤは部屋を出る。大きな雷の音が何度か続いて、今度はザァーッと雨が降り出した。マリーは気配を消して、脇部屋の隅に座っていた。ティエリアには、同じ遺伝子情報で作られたイノベイドが存在することは聞いていた。確か、生まれたのはティエリアのほうが後だったはずだ。だのに、リジェネは雷が怖くて泣いている。お子様のようだ、と、ちと呆れた。えぐえぐと泣いて、ニールママにしがみついている。ニールママは苦笑して、リジェネの背中を軽く叩いたり撫でたりしている。大丈夫だよ、怖くないよ、と、声をかけているのを聞いていると、心がほわりと温まる。これが、お母さんというものらしい。マリーにも親というものは存在しないから、なんとなく泣けてくる気分だ。ちょっと落ち着いてきたのか、リジェネがポソポソと話し始めた。
「・・・ココア・・・」
「・・はいはい・・・ちょっと待っててくれ・・・」
「・・・ダウン? ・・・」
「・・ああ、夕立が通り過ぎたら・・復活するから・・・」
「一人でヴェーダにいたら、寂しくて・・・僕・・・初めて・・ホームシックになったんだ。」
「・・ティエリアは? ・・・」