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不安の行方

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「よう。なんだ?一人で難しい顔して。
 まだ帰らないのか?」

優しい声がして顔をあげると、
獅子尾が教室に入ってきた。

「あ…先生。まっ、馬村を待ってて…」

ん?これって言っていいのか?

「ああ、馬村は委員会か。
 まぁ暗くならないうちに帰れよ。」

「はい。」

そう言って獅子尾は何やらファイルを取って
教室から出て行った。

至って普通の、教師と生徒の会話。

すずめが馬村の名前を出しても、
表情ひとつ変えることもなかった。

すずめはホッとした。

これなら馬村を不安にさせることもないだろうと。

そこへ馬村が教室に入ってきた。

「あ、馬村。終わった?」

すずめが席から立ち上がろうとして、
ビクッとした。

馬村の顔が、悲しそうに見えた。

「ま、馬村?どうかした?」

馬村はハッとして、すぐに

「なんでもねえよ。待たせて悪ぃ。帰るか。」

と言って、背中を向けた。

「う、うん…」

すずめはバッグを握りしめ、
馬村の後をついていった。

やましいことは何もしてないのに、
なぜだか帰り道は気まずくて、
会話もすぐ途切れてしまう。

途切れるたびに、チラッと
馬村の顔を見上げるが、
視線が合うことはなかった。

『不安なのは馬村くんのほうでしょ?』

ゆゆかが言った言葉が頭をよぎる。

ど、どうしよう。どうすれば?

いつもの分かれ道まで来て、
「じゃあまた明日学校でな。」と、
目を合わさないまま馬村が帰ろうとする。

なんで?

「馬村!」

思わず呼び止めて、
すずめはギュッと馬村に抱きついた。

「わあ!////なっ、なんだよ!」

なんて言ったらいいか、
すずめからは言葉が出ない。

ただただ、ギュッと抱きついたまま
馬村のシャツを握りしめた。

「なんかごまかしてんの?」

「えっ?!」

馬村が口を開いたけれど、
すぐには言ってることの
意味がわからなかった。

「なんかあった?さっき。」

「へっ?」

「さっき、教室でアイツと二人でいただろ?」

「二人…?あっ!」

一瞬だけ。一瞬だけだった。

ゆゆかが帰って、獅子尾が入ってきて、
挨拶程度の会話をして、すぐに出て行った。

出て行ったと同じくらいに、
馬村が帰ってきたんだった。

馬村から見れば、
獅子尾と二人きりで教室にいたように
見えなくもない。

「ちがっ…先生は入ってきたけど
 挨拶してすぐ出て行ったよ?
 なんにもないよ!」

「……。」

抱きついたまま、
必死な顔で見上げて弁明するすずめの顔を見て、
馬村はまた悲しそうな顔をした。

そして黙ったまま
ゆっくりすずめを抱きしめ返した。

本当は早くすずめを自分のものにしたい。

でもそれは言えなかった。

諭吉と約束したことでもあるし、
ただそれは自分の不安を払拭したいからで、
すずめのためではないとわかっていたから。

「ごめん…わかってる。
 ただオレが自信ないだけで。」

「っ…」

どうしたら不安にさせずに済むのだろう。

「先生はたぶんもう何もしないよ?」

すずめのその言葉に、馬村が少しムッとした。

「オマエ…なんでオレが好きとか言っても
 不安になるくせに、アイツの言うことは
 そんな信じられんだよ。」

「えっ、違っ…」

そんなつもりで言ったんじゃないのに。

すずめが泣きそうな顔をしてるのを見て、
馬村はギリッと奥歯を噛んだ。

こんなことが言いたいんじゃない。

こんな顔をさせたいんじゃない。

馬村のその表情ですずめも悲しくなった。

馬村を待ってる間、すずめは考えていたが、
どうにもわからなかった。

そもそも自分だって、
馬村がどんなに自分を好きと言ったって
大事にしてくれてたって、
やっぱり不安なものは不安なのだ。

この先もずっと、
自分一人を見ててくれる保証なんて
どこにもない。

きっと馬村も同じ気持ちなのだろうと
すずめは思った。

作品名:不安の行方 作家名:りんりん