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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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「言ったであろう? 完全なものは存在しないと。お前も完全ではない、調子の悪いときは休むべきだ」
 それに、とユピターは付け足す。
「夢の中でマリアンヌ殿はひどい目に遭っている。病のない天界だが、怪我はある。怪我でもして心細いため、お前の夢に出てきたのではないか? お前もあんな夢を見て心配だろう。マリアンヌ殿に会いに行け」
 ユピターなりの心遣いであった。
「……しかし、まだ訓練は……」
「こんなところで使うべきではないが、団長命令だ。ヒース、お前はもう休め。命令違反は、連帯責任だ」
 ユピターは珍しく、悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「くっ、卑怯な……」
「ははっ、さあ早く行け。私の気が変わらぬうちにな」
 ヒースはマリアンヌに会いたい気持ち半分、訓練への義務感半分の、なんとも複雑な表情をする。素直になれないヒースの様子を面白そうに、ユピターは笑っていた。
「伝令! 伝令ー!」
 突如として、血相を変えた宮殿の近衛兵が、中庭に駆け込んできた。
 騎士団全員の視線が、近衛兵に集まる。
「町に異形のもの、魔性の存在が出現した模様! 騎士団に出撃をされたし!」
 騎士達は驚きざわめいた。
「静粛にしろ! 兵士殿、それはいずこに現れた!?」
 ユピターは騎士達を静め、詳細を訊ねる。
「ま、町外れの林道。湖へ繋がる道にての目撃証言が!」
 ヒースはこれ以上ないほどに驚いた。そこは間違いなく、マリアンヌの住む湖畔に近い場所だった。
 ヒースは何も言わず走り出してしまった。
「待て、ヒース!」
 ユピターが叫ぶ頃にはもう、ヒースは中庭を出た後だった。
「団長、出撃命令を!」
「くっ……!」
 ユピターも後を追いたかったが、彼までも出ていっては、騎士団の指揮を執る者がいなくなってしまう。
「一、二番隊はヒースに続け! その他の部隊は待機! 今後の事態に備えよ!」
「はっ! 行くぞ皆の者! 副長に遅れるな!」
「うぉー!」
 ユピターが指示を出した部隊は、連携してヒースの後に続いていった。
ーーヒース、マリアンヌ殿……!ーー
 無事でいてくれ、と喧騒の中ユピターは願うのだった。
    ※※※
 湖へと続く林道を、三人組の男達が歩いていた。
 この三人組は、前にマリアンヌに絡んでいたところを、ヒースによって撃退された男達だった。
 どうしてもヒースに一泡ふかせてやりたいと考えた彼らは、ヒースの周辺を徹底的に調べた。そして得られた情報が、マリアンヌとヒースがこの先の湖畔で、何度も逢い引きしているというものだった。
「なあ、お前の話本当なんだろうな?」
「間違いない、あの白髪野郎が何度もこの道に入っていくのを見ている。間違いなくあいつらデキてるぜ」
「あの白髪騎士、オレらじゃとても敵わねえ。だが、娘の方は普通だ。さらっちまえば、騎士の野郎も迂闊に手出しできねえだろうさ」
「ひひひ……、何も娘をさらって奴に何か言うこと聞かせるわけじゃねえだろ? あの女を慰みものにするのが一番の目的だろ、お前? 顔に出てるぜ」
「まあな、これでまさに身も心もスッキリ、ってやつだ!」
「カカカ……! 悪いやつだなぁ、お前。何でお前みたいのが天界にいられんだ?」
 男達はいやらしい顔で笑いあった。
「ふひひ……、ホントになァ、天界ってなァ、どうしてこんなにユルユルなんだろうなァ……!」
 三人組のうち、誰のものでもない声が響いた。すると、上から何者かが落ちてきて前を歩いていた男の首を飛ばした。切断面から血が勢いよく噴き上がる。
「なァ、アンタらもそう思わないかァ?」
 狂人、というものを絵に描いたような男が、野獣の姿をした魔物を取り巻いて現れた。
 その狂人は痩身で、モジャモジャの髪をしており、サーベルを手にしていた。
 血走った眼をしており、狂気に満ちた表情で、顔にかかった返り血に舌舐めずりをしている。
「ひ、ひいっ!?」
「な、なんだお前は!?」
 異形の男は、サーベルに着いた血も舐めている。
「ああん? オレか? オレァ、デモンズセンチネル、バルトだ……。まっ、覚えなくていいぜ、てめェらも死ぬんだからなァ!」
「ぎゃああああ……!?」
 残り二人の男も、バルトと名乗る者の狂刃の前に斬り刻まれた。
「ふひ……、あーあ、ついつい斬っちまった……。こりゃまたデュラハンに怒られちまうかなァ……? おう、テメーらァ! 今日はあくまで偵察だ……。あんまりハデに暴れんじゃねェぞ!」
 狂ったような笑い声を上げ、バルトは魔物を町へと進めようとした。
「あん? 誰かこっちに来やがるなァ? 仕方ねえ、もてなしてやんな!」
 バルトは取り巻きに後を任せ、自らは木の上に身を隠した。
 銀髪の騎士、ヒースが、湖に繋がる林道へ駆けつけた。
「これは……!?」
 天者が三名地に伏し、それを魔物が囲む光景が、すぐにヒースの視界を支配した。
 よく見れば、倒れて事切れる男達が、先日マリアンヌに絡み、ヒースにちょっかいを出してきた者だと分かる。
「あやつらにやられたか……!」
 因縁のある相手ではあるが、魔物の手にかかった姿を見ると、ヒースは憐れまずにいられなかった。たとえ彼らが無法者であっても、天界に住む者を守ることが、ヒースの役目であったからである。
「よくも天界に現れたな! 俺が粛清してくれる!」
 ヒースは剣を抜き放つ。するとほぼ同時に、魔物は一斉にヒースへ襲いかかってきた。
 一閃、剣閃が煌めく。次の瞬間魔物の群れは血飛沫を上げて倒れた。
「せいっ、はっ!」
 ヒースの神速の刃が、残る魔物を次々と斬り倒していく。
 それほど数がいたわけではないものの、一匹一匹、それなりの力を持つ魔物が、ヒースによって僅か数秒の内に倒されてしまった。
「雑魚どもが……、こうしてはおれん、早く行かねば!」
 ヒースはマリアンヌの無事を確認すべく、湖畔に続く林道を進もうとする。
 不意に、ヒースは頭上からものすごい殺気を感じ、飛び退いた。
 ヒースが下がると、何者かが飛びかかり、地面へと湾曲する刃を突き立てた。
 現れたのはモジャモジャ髪の、痩身で、充血しきった眼をしている狂剣士であった。
「よォ、テメェ、なかなかやるじゃねえか……? オレ様の部下どもを瞬殺するなんてなァ……!」
 狂剣士、バルトはサーベルの刃を舐めながら、おぞましい笑みをヒースに向けた。
 新たな敵の出現にヒースは身構えた。
「貴様、何者だ!?」
「オレ様ァ、デモンズセンチネルのバルトってんだ。よろしくなァ……?」
 バルトはサーベルを担ぎ、眼を剥いてヒースを見た。
「……んで、天界の騎士さんよ、テメェは何て言うんだ……?」
「聖騎士団、ガーディアン・ナイツ副団長、ヒースだ」
 ヒースは名乗りを上げた。
「聖騎士団? 副団長!? あひゃひゃひゃ……!」
 バルトは空を仰ぎ見て、両手を広げ、いかにも狂人らしい、狂った笑い方をする。
 攻撃する最大の隙であったが、ヒースはバルトの持つ狂気に怯んでしまっていた。
「ひゃはは……! そりゃつえェはずだぜ! オレ知ってんぞ……。天界では最強の騎士、剣を取らせれば、神だって超える力を持つ奴がいるってなァ! まさかこんなトコでお目にかかれるとはな……」