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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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「ケビン、お前の意志、しかと受け取ったぞ」
 ヒースはケビンの亡骸に背を向け、再び業火の中を走り出す。その瞬間だった。
「っ!?」
 ヒースはとてつもない殺気を感じ、後ろに飛び退いた。ヒースの立っていた地面に、ナイフが三本突き刺さる。
 ヒースはすぐさま、ナイフの飛んできた方に目をやる。
「うひゃひゃ……!」
 血濡れたサーベルを携え、くしゃくしゃに縮れた髪を振り乱す、狂人としかいえない男がそこにいた。
「貴様、バルト!」
「おォ、覚えててくれたか、天界の騎士さんよ……! はっはは、嬉しいぜェ?」
 デモンズセンチネル、バルトは空を仰いでサーベルを舐めまわし、充血しきった眼をヒースに向けた。
「どけ、今は貴様に構っている暇はない!」
「冷てェなあ……、せっかく人が真っ正面から来てやってるってのによォ」
 バルトはモジャモジャの前髪をかきあげる。
「まっ、どのみちテメェは逃げらんねェよ。ここァもうオレ達のシマだ。もうすぐデュラハンもここに来てイリスとかいう女神をヤりに来る……」
 バルトはよほど余裕があるからなのか、相変わらず敵を目の前にして彼らの目的を口外する。
「……だがよォ、聞いてくれや。デュラハンの野郎、オレには誰もヤらせてくんねぇんだ。この辺で待機してろってよ。何でもオレがイリスとかいう女神様をうっかりヤっちまわない様にってなァ。正直欲求不満で爆発しそうだァ……。溜まりに溜まってんだよ……」
 イリスがこの程度の狂人に、負けることなど絶対にあり得ないことだった。
 イリスへの侮辱に少し腹を立てたが、ヒースは怒りを圧し殺し、一言も発することなく、無言でバルトを見続けていた。
「だからまァ、ここらで一発しけこみてェワケよ。ヒース、オレと一発付き合ってくんねェか? なァに、濡れてなくても大丈夫だ。オレがこれから血で濡らしてやるからよ!」
 バルトは突然に斬りかかって来た。しかし、バルトのサーベルはヒースに掠りもしなかった。
 ヒースは上空高く飛び、バルトを無視して進もうとしていた。
「逃がさねえぜェ!」
 バルトは猛毒のナイフを投げ付ける。
 ヒースはエナジーを身に纏い、飛んでくるナイフを跳ね返した。
「おおっ!?」
 ナイフは、放ったバルトに突き刺さった。毒が一瞬で利いたのか、バルトは地面に倒れ込んだ。
「下衆が!」
 ヒースは言い放ち、先を急ごうとした。
「……なァんてなァ!」
 ナイフで倒れたはずのバルトは飛び起き、辺りに不気味な波動を放った。次の瞬間、周辺は妙な力に包まれ、ヒースの行く手を阻んだ。
「何だこれは!?」
 ヒースは妙な力に跳ね返され、それ以上前に進めなくなってしまった。
「ふひひ……、結界を張ってやったぜ! この中にいられんなァ、オレとお前だけだ。そしてこのオレ様を倒さないことには、この結界は消えねえぜ!」
「くそっ! この時間のないときに……!」
 ヒースはもう戦うより他なかった。仕方なくヒースが身構えると、バルトは嬉しそうに、しかし狂った笑いを上げる。
「ひゃははは……! ここなら邪魔は入らねえ、思いっきり行くぜェ!?」
 結界の中、聖騎士と狂戦士の戦いが始まった。
 バルトはサーベルを大振りに斬りかかって来た。ヒースはなんなくかわす。
反撃に出るヒースであったが、バルトは横に大きく武器を振るった。
 仕方なくヒースは距離をおいた。
「逃がさねェぞ!?」
 間合いを離れると、バルトは毒のナイフを投擲してきた。
「小賢しいっ!」
 ヒースは全て叩き落とした。
「オラオラオラァ、まだまだあるぜェ!」
 バルトはどこに隠し持っていたのか、ナイフを次々に投擲する。
 ナイフがいくつも迫っているが、ヒースは微動だにしない。その代わりに右手を突き出した。
 エナジーを発動し、掌からバチバチと電気を放電させた。そして電気が空中の塵を発火させた瞬間、光線へと変換した。
『スクランブル・ビーム!』
 電撃と炎は巨大な光線と化し、飛んでくるナイフを一瞬にして消し炭にした。
 ナイフを燃やし、更に威力の上がった光線がバルトへと迫る。
「うおうっ!?」
 バルトは光線を横に跳ねてかわした。
「……へっ、やるじゃ……!」
 バルトの言葉は喉の奥で止まってしまった。エナジーを放ってすぐだというのに、ヒースはすさまじい速さでバルトへと斬り込んでいたからである。
 姿勢が崩れたバルトには、いや、そもそも実力差がものすごく離れていたために、ヒースの速さにはとても対応できなかった。
 間合いに入ると、ヒースは切っ先を突き出した。剣先は狂いなくバルトの腹を抉る。
「っんぐ……!?」
「貴様に付き合っている時間はないのだ。早々に消え去れ……!」
 ヒースが突き刺した剣を抜くと、バルトは腹から噴水のごとく血を噴き出し、そのままぐらりと倒れ落ちた。
 バルトは倒れた。これで周囲を包む結界は消失するはずだった。
「っ!? 何故だ?」
 結界を張った元凶は絶ったはずだが、結界は何故か消えていない。
「……簡単な話だぜ!」
 ヒースが驚いていると、バルトは攻撃を仕掛けてきた。完全な不意打ちであり、さすがのヒースも避けられず、背中を掠められてしまった。
「くっ!」
 ヒースは大きく回転しながら、バルトから距離をおいた。
「……オレがまだヤられてねェからさ!」
 バルトは口元に滴る血を吐き飛ばし、にやっ、と不気味な笑みを見せる。
「僅かに急所を外したか? いや、しかし……」
 ヒースは確かな手応えを感じていた。確実にヒースの剣はバルトの内臓ごと貫いたはずだった。
「ふへへ……、さすが天界最強の騎士だ。久々に効いたぜ、あァ、気持ちよかった!」
 致命傷に近い傷を負ったはずなのに、バルトはヘラヘラし続けている。おまけに傷に快楽を感じている。バルトの狂気は想像を絶するものだった。
『キュアベスト』
 バルトはエナジーで傷を癒した。
「回復エナジー持ちか……!」
 更に厄介な相手だと、ヒースは顔をしかめる。
「あーあ、痛ェのもいいが、やっぱ相手を痛め付ける方が気分爽快だなァ! よォヒース」
 バルトは構えた。
「今度は、おめェが斬られる番だ。いい声聞かせろよ? うひゃひゃ……!」
 バルトはかん高い声で笑いながら、ヒースに飛びかかってきた。
 単純な突進である。ヒースは返り討ちにすべく、剣を横に振った。しかし、刃は空気を斬るだけであった。
「なっ!? ぐっ……!」
 気が付くとヒースは地面に腰を落としていた。
 バルトは斬りかかると見せかけ、寸前でヒースの攻撃を屈んでかわし、同時に蹴りを放っていた。
 ヒースは反射的に避けようとしていたが、バルトのあまりにも変則的な動きに対応できず、顎先を蹴りあげられてしまった。
 頭部に衝撃を受けたせいでヒースの意識が一瞬飛び、後から自分が尻餅をついている事に気が付いたのだった。
「食らえや!」
 バルトはヒースの顔面めがけ、突きを放ってきた。ヒースはまだ僅かに残る目眩を感じながらも、首を傾けて突きをかわす。
 しかし避けきれず、バルトの切っ先がヒースの頬を掠めた。
 ヒースは後ろに受け身を取りつつ転がり、ひとまずバルトの間合いから外れる。