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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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 立ち上がるヒースであったが、まだ僅かにくらくらした。思いの外受けた衝撃は重く、顎先にも掠り傷を負っていた。
「貴様、よくも……!」
 ヒースはようやく意識がはっきりしてくる。
「ひはは……! せっかくの男前が台無しで怒ってんのかァ? 顔に蹴りなんて卑怯ってかィ? だったらアマアマだぜ。オレ達がヤってんなァ、試合みたいな馴れ合いじゃねェ……。生死を懸けた命懸けの殺し合いだァ!」
 バルトはエナジーを詠唱した。
『ソニック・スラッシュ!』
 バルトの剣が旋風を帯び始めた。
「オラオラオラァ!」
 バルトは滅茶苦茶に剣を振り回した。振り抜かれた剣から風の刃が飛び出し、ヒースへといくつも襲いかかった。
『プロテクト!』
 ヒースは落ち着いて防御のエナジーを発動する。ヒースを包み込むように光の膜が出現し、ヒースの向いている方向からの攻撃を防ぐ。
 風の刃は防御膜に阻まれ、パシパシと消えていった。
「これ以上貴様に付き合ってられん! 畳み掛ける!」
 バルトの攻撃が止んだ瞬間を見計らい、ヒースはバルトに向かって走り出した。そして間合いに入った瞬間、地面を蹴り、空高く跳躍する。
『ヘブン・ライトニング!』
 ヒースは空中でエナジーを放ち、切っ先を下にして電撃と共に自らも落下した。
「おせェ!」
 バルトは後方に回転しながら下がり、ヒースの攻撃をかわそうとする。
「見くびるな!」
「うおっ……!?」
 ヒースが着地すると、電撃は広範囲に及んだ。バルトは感電し、動きが止まる。
 その大きな隙を逃すことなく、ヒースは急接近の後、真一文に斬りつけた。
「ぐあァ……!」
 胸から大量の血を噴き出し、バルトはその場に崩れ落ちた。今度こそ立ち上がることのできない致命傷を負った。そのはずだった。
「……ィイねェ!」
 またしてもバルトは起き上がってきた。しかしダメージは目に余るほどである。まるで効き目がないというわけではないようだ。
「ごはっ、げはっ……! ……ふひひひひ!」
 血を吐きながらもバルトは、狂った笑いを止めない。
「狂人が、何故倒れん?」
 最初から気味の悪い男だと思っていたが、ここまで傷を負いながら立っているバルトを見て、ヒースはさすがに気分が悪くなってきた。
「けははは……! そう簡単にくたばっちゃあ、せっかく気持ちイイのがもったいねェじゃねェか……がはっ! ……ヒース、オレァそろそろ終わり、みてェだ。だが最期に、ぶった斬る、気持ち、よさを、くれや……!」
 バルトはナイフを投げてきた。ヒースはやはりエナジーで反射する。跳ね返ったナイフはバルトに突き刺さる。
「うひひひ……!」
 バルトはのけ反りながら笑い、自ら傷痕を抉って、手を滴るほどの血に染めた。
「オレの血を吸ってでかくなれ!」
 バルトはその手を地面につけ、エナジーを発動する。
『マッド・ブライア・ブロッサム!』
 バルトの血を吸って糧とし、異常なまでに急成長を遂げたイバラがヒースに向かって一気に茂った。
「なっ!?」
 ヒースは同系統のエナジーを知っていたが、バルトの放ったエナジーはそれの最上級をも圧倒的に超えていた。
 ヒースは身の丈以上の、木と紛うほどの大きさに成長したイバラに取り囲まれてしまった。これほど大きくては、剣で切り払う事も難しい。
 何とか打開しようと周囲を見回すヒースであったが、全方位を完全に囲まれ、唯一の突破口は上空しかなかった。
 しかしその上空には、なんとバルトが烏のような翼を広げて飛んでいた。
「うおおお!」
 バルトは空中でありったけのエナジーを解き放ち、高熱に転換していた。ヒースをイバラごとエナジーで焼き付くそうというつもりであった。
「行くぜェ!?」
 バルトは一度身を翻し、刃を真下にして急降下した。
「マッドネス・ダイブ!」
 ヒースに逃げ場はない。迎え撃つより方法はなかった。
『スクランブル・ビーム!』
 ヒースは電気で発火した炎をビームとして打ち出した。しかしバルトに直撃するものの、勢いを全くくじくことが出来ない。
「くそっ……!」
 ヒースはなすすべなく、防御体勢を取った。同時に『プロテクト』を発動したが、迫り来る刃の威力の前では気休めにしかならなかった。
「おらああああ……!」
 バルトの剣がイバラに触れた瞬間、熱によって発火し、周囲にも次々と引火し、爆発的に燃え上がった。
「ふひひ……!」
 イバラの燃え滓が残り、煙が充満する中、狂人の笑い声が響いた。
 バルトは立っている。腹を抉られ、胸を斬られたというのに、それでもまだ生きていた狂人は、今もまだ生き延びている。
 そして、バルトの目の前には。
「…………」
「ひっ、ひひ……!」
 バルトは空を仰ぎ見て、喉を枯らさんばかりの笑い声を上げる。
「イッヒャヒャヒャァ!」
 最高に狂うバルトの前には、両腕に僅かな傷を作り、無表情で立つヒースがいた。
 ヒースは眉ひとつ動かさず、バルトに手を向ける。
『スパーク・プラズマ!』
 エナジーで何度も雷を落とし、バルトに浴びせた。
「プラズマチャージ!」
 ヒースは剣を上空に向け、剣に雷を宿した。そして、連続して落雷を受けてなお、笑うのみで倒れないバルトにとどめを刺す。
「フラッシュ・ソード・ラッシュ!」
 ヒースは高速でバルトの周囲を飛びながら、すれ違う度に斬撃を加えた。
 バルトを斬る度に雷が同時に落ち、刃と電撃で、バルトはぼろぼろになっていった。
 そして最後の一撃が、バルトを打った。
「ぬぐァ……! ふっふふ、ヒー、ス……」
 最早虫の息のバルトは、背後に回ったヒースへと振り向いた。
「アンタ、最高……、だった、ぜ……げはははははは……!」
 最後の高笑いをすると、どしゃ、っとバルトは倒れた。その瞬間、辺りを囲う結界も消え去った。
「…………」
 ヒースは一言も発する事なく、振り返ることもせずに先を急ぐのだった。
    ※※※
 林道を燃やす炎は、今や最大級のものとなっていた。
 火の粉が空気中を漂い、辺りはものすごい熱気に包まれていた。それはもう、その場に少しでも止まるだけで、全身が焼け爛れそうなほどである。
 そんな業火の中を、ヒースは一心に駆けていた。風が吹く度舞い上がる火の粉が服を焦がすが、そんなものは気に止めなかった。
 ただ一人の少女の無事だけを願い、ヒースは炎の中を駆け抜ける。
ーーマリアンヌ、どうか無事でいてくれ……!ーー
 灼熱地獄と化した林道を抜けると、ひらけた場所にたどり着く。マリアンヌの住む家が建っている湖畔である。
 いつもはとても長閑な場所であるが、今はそんな面影すら残っていなかった。
 周囲の炎を照らし、真っ赤に染まった水面は血の池のようで、暗くなった空も相まって、地獄の一部分かという錯覚を持ってしまう。そんな恐ろしい場所と化していた。
 ヒースはマリアンヌの家に向かって全力で走った。
「マリアンヌ!」
 ヒースは力任せにドアを開いた。
「はあっ、はあっ……!」
 ヒースはここまで走り続けた疲労に息を切らし、暗い部屋の中を見渡した。
 そしてヒースは、ベッドの横に倒れる影を見つけてしまった。
「マリ、アンヌ?」