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同調率99%の少女(1) - 鎮守府Aの物語

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--- 2 できて間もない鎮守府



 那美恵は電車に乗り、となり町で降りた。駅や町中では鎮守府がどうのこうの艦娘がどうのこうのという触れ込みや雰囲気はない。まだ町の人は自分らの町で鎮守府の運用が始まったことに気づいていない人がほとんどである。
 腕に付けたスマートウオッチで地図とルート案内を確認した。40年以上前の骨董品に近い物だがまだ運営会社もあるので使える。祖母からもらったそのスマートウオッチを彼女は非常に気に入っていた。那美恵は物持ちがよい。

 鎮守府Aがあるという場所まで来た。
 そこには○○建設という看板とともに、ところどころ工事中になっていた。発注元は防衛省鎮守府統括部となっている。まだ工事中なのかよ!と那美恵は突っ込んだが、ちゃんと案内がされていた。工事中の区画と区画の間を抜け、本館と思われる町の町民会館くらいの小規模の建物の前に辿り着いた。そこが鎮守府Aの中心地と判断した。
 ちなみに道路を挟んだ向かいには本館よりも立派そうな建物がある。そちらは直接海に面していた。何か港だろうか。那美恵はそれ以上の興味を示さなかった。

 決して長くも広くない表門から建物までの道を通り、本館と思われる建物の前まで歩いてきた。開けていいのかどうか那美恵がマゴマゴしていると、本館と思われる建物の右手裏から一人の少女がやってきた。紺の制服を着ている。自分と同じ学生なのだろうか。それともここの職員の人?などと、那美恵の色々疑問はつきない。
 彼女は那美恵に気づくと、トテトテと走って近づいてきた。

「もしかして、見学の方ですか!?ようこそ鎮守府Aにいらっしゃいました!私、秘書艦の五月雨っていいます。これから鎮守府の中を案内しますね!あと提督にもぜひ会ってください!」
 可愛らしい声の少女。この少女があの電話の主だと那美恵は気づいた。彼女が艦娘だ。しかも秘書艦。
 初々しくて頼りなさげに見えるが、きっと彼女は凄腕の艦娘に違いないと、那美恵は勝手に想像する。


 那美恵が来た鎮守府Aは、開設されてからまだ2〜3ヶ月しか経っていない。所属する艦娘はまだ7〜8人足らずでそのうち五月雨と同じ学校の生徒が3人いて計4人、他の学校の学生が1人、通常の艦娘が2人という構成だ。

 鎮守府内を案内される間、五月雨と那美恵は自身の学校のことについても会話していた。
「へぇ・・・光主さんの高校ってとなり町なんですかぁ!近くていいですね〜私なんかそのさらに2駅行ったところの中学校なのでここへの勤務ちょっと大変なんです。」
 不満を漏らしているはずなのだがまったく不満気ではない。くったくのない笑顔で五月雨は言う。彼女の本名は早川皐という。
「早川さんの中学校からだとそのくらいかかるよね〜。ところでさ、あなたはどういう艦娘なの?」

 その質問に五月雨はすぐに答えた。
「実は私、ここの鎮守府の最初の艦娘なんですよ!提督と一緒にここに配属になったんです。いわゆる初期艦というやつです。」
「え!?最初は提督と二人っきりだったの? じゃあ何かも大変でしょ〜?」
 那美恵はそれを聞いたら誰もが思うであろう疑問を投げかけた。
 それに対して五月雨は答える。

「はい!最初のうちはなんとかやれてたんですけど、私だけじゃ辛くて、そうしたら提督がうちの学校と提携するようにしてくれて。学校で仲良い皆を誘って艦娘部を作って、今は時雨ちゃん。あ、時雨ちゃんは本名も時雨って言うんですよ!夕ちゃん、真純ちゃん。この三人と仲良く分担してやってます。あと一人いるんですけど、まだ艤装の配備が間に合っていなくてなんていう艦娘になるのかわからない友達もいます。
 友達いると言っても秘書艦は私だから結局私のお仕事と責任になっちゃうんですけどね〜。あとは黒崎先生。先生は羽黒っていう艦娘なんですよ!まだうちの鎮守府には来てないんですけどね。」
 必要以上のことをペラペラしゃべりまくる五月雨。他の学校の生徒や新しい人が来るのが相当嬉しい様子を見せている。


 その後那美恵は提督と会い、真面目な話、鎮守府Aを取り巻く環境、今の状況、今後の予定を聞いた。提督はあまりパッとしない人だったが、話しぶりや熱意は伝わってきたので印象はよいと那美恵は感じた。
 提督は普段はIT企業に勤務しているため、鎮守府と本業の仕事は5:5で来ている。今は自分と秘書艦五月雨と時間を分けあって鎮守府内の管理をしているが、将来的には秘書艦を役割ごとに分割して回せるようにしたいと那美恵に今後の目標も話す。そのためには採用する艦娘を増やしたいとのこと。
 なので那美恵が艦娘になってくれるなら大歓迎という状況。もちろん艤装との同調試験があるから本当に入れるかどうかは誰にも分からない。

 艦娘制度には学生艦娘という、学校と鎮守府が提携して人員を一気に集めて教育し戦力とする運用があった。提携した学校には国から補助金が出て、その学校の知名度なども上がる。学生艦娘にはそれなりの制限もあるが学校と鎮守府2つに守ってもらえる。なるほど人を集めるという点に関しては学校単位なら普通に募集するよりも人が集まりやすいかもしれないと、彼女は納得した。
 那美恵はこの鎮守府の様子を聞いて、協力したいと思うようになった。ここなら学校以上に大きなことができそうだと。

 彼女はもし自分が艦娘になれなかったときのことも考え、今後自分の学校でも艦娘を増やして鎮守府Aに協力しようと思い、提督に自分の高校と艦娘制度として提携して欲しいと願い出た。

 学校と鎮守府が艦娘制度で提携するには、その学校に艦娘部の設立が必要となる。そして3人以上の人員と、顧問の先生には職業艦娘あるいは艤装の技師免許を持ってもらう必要がある。
 那美恵は生徒会長をやっているので、どうにか学校側に掛けあってみると提督に約束を取り付けた。
 後日、学校には提督も赴いて学校側と話をするとのこと。