~RINNE TENSEI~
実は、俺以外にも2人記憶がある人物がいる。1人は俺の生徒である、竹中半兵衛。
そしてもう1人はここに居る…、猿飛佐助なのだ。
「―――――猿飛」
「なに?片倉センセー…いや、片倉の旦那」
口調を昔に戻し、猿飛が答える。
この口調が、昔の口調に、ほかの皆も…、政宗様も戻られれば…。
どれだけ幸せなのだろう。
しかし同時にそれは過去の死を理解することになる。
………はたしてそれは政宗様の幸せにつながるだろうか。
俺の幸せにつながるであろうか…?
それほど、俺たちの最期は悲劇的な終りであった。
俺は自分でしてないにせよ、政宗様を…、殺した。
あれはいつだっただろうか?
たしか真田と政宗様はいつもどうり戦っていらした。
それを見守りながら、俺と猿飛は平和ボケをしつつ話していた。
なんであんな経緯に至ったかは覚えてないがその日、俺は猿飛に…告白をした。
なんでかは覚えてない。だが猿飛も同じ気持ちだったようで、俺たちの恋の実は結ばれた。しかし、そのまま話し合ってしまい、俺たちは政宗様たちの行方が分からないことに
気が付かなかった。そして気付いた時には遅く、隣にベチャッと堕ちてきたものは、
なんだったのであろうか?首だ…―――。俺は、バカだった。その時気づいた。気づけば隣の猿飛は唖然としていて、そのまま―――。俺も何もできず、殺された。
これが俺たちの最期である……。
「俺は…政宗様を」
「うん。それ以上言わなくていいよ。わかってる」
猿飛も多分同じ気持ちなのだろう。
俺は転生した後初めに会ったのは猿飛で、『猿飛!』と声をかけたかったが、
また、何か失いそうで…。それならこんな恋、捨ててしまおう。
俺はそんな考え方であった。同じく猿飛も俺に声はかけなかった。
さすがに話はする。口調も昔のまま、だが…。
お互いに好きであったという気持ちは捨てた。今はもう、生徒と教師だ。
だが俺は、捨てても、捨てきられない一部がまだ、胸にのこっている。
まだ、猿飛のことが好きだ。猿飛のほうはわからないが…。
こんなことを思ったりする。
『もし、政宗様たちに記憶があって、許してもらえたら…。
今度は平和な世界だ。俺たちがずっとそばにいなくても…いいと。
言って下されば、どれだけ幸せなのだろう』…と。
これは俺の弱さだ…。
政宗様はこのまま記憶がなく、真田とよい仲を築いてほしい。
……記憶とは、とても恐ろしいものである。
「――――――悲しいもんだな。転生ってのは」
「そうだね。俺様たちだけ覚えていて、旦那たちはさっぱりだもんね。……でも」
「―――――」
「覚えてない方が旦那たちにはよかったのかも。だって旦那たち。あんなに楽しそうに」
「………猿飛。とにかく涙を拭け」
なぜか、猿飛は泣いていた。『元』忍の彼が涙を流すのは珍しいことだ。
それが合図だったのか…。猿飛の感情はどんどん表に出てきた。
「――――あれ?おかしいな。俺様なんで泣いているんだろ…?」
「もういい。話すな」
「片倉の旦那…これって何?本当に涙?止まらないよ…なんでっ」
「もういい」
「――――――――なんで。片倉の旦那も泣いてるの?」
俺もいつの間にか、泣いていた。
「――――――――――――――――――――怖いんだ」
「怖い…?」
「あの二人が前世の記憶を取り戻したら…、また世界があんなふうになってしまったら…」
「――――そうだね。こんな平和なのに…」
「もう俺は…。誰も失いたくないっ…。殺したくないッ!!」
ココロの片隅でこんなに乱れるのは久しぶりだなと思った。
「―――俺様もだよ。―――旦那ッ…!!」
嗚呼神様。もし許されるのであれば。俺たちから前世の記憶を…奪ってください。
そして…この平和な世界で。楽しく過ごさせてください。俺たちは…。
怖くて、怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて怖くて…。おかしくなりそうです。
これは罪滅ぼしなのですか?戦国の世の罪滅ぼしなのですか?
これは俺の気持ち、そして猿飛の気持ちを代弁したものでもある。
もう、どうすればいいのかわからなくなってしまっていた。
このまますべて投げ捨てて、死んでもいいだろう。
それほど…。つらかったのだ。
……記憶とは、とても恐ろしいものである。
「うっ…。うっ…」
「…ぅ、あ……」
「もういやだ…。お願い…、だれか…ッ!」
―――誰か、助けてくれ。
「―――――――――――小十郎。」
「―――ッ!!」
「佐助…」
「――――だん…な?」
作品名:~RINNE TENSEI~ 作家名:天海@牙狼