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同調率99%の少女(2) - 鎮守府Aの物語

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--- 6 幕間:鎮守府のある日々




 最初の出撃任務が終わり、しばらくは本格的な出撃のないのんびりした日々が続いた。もともと激戦区の担当の鎮守府ではないため、鎮守府Aは戦いのための鎮守府というよりも、周辺海域の警備・防衛・地域からの海域調査の役割がメインなのだ。とはいえ深海凄艦が担当海域に出没することもあるので撃退もしばしばするし、海上警備がらみの依頼もたまに入ってくるので那珂たちはそれをこなす。
 本格的な出撃任務はないとはいえどのような任務でも仕事は仕事。那珂は一切妥協せず計画を練り、まだ人が少ない鎮守府Aの艦娘たちを捌く。学校の生徒会の仕事もあるため身体が2つ欲しいと思うこともあるが、那美恵は艦娘の仕事も学校の仕事もなんなくこなしていく。
 率先して働くとはいえ、秘書艦は五月雨である。那珂はあくまで彼女のサポートとして付き、作戦の立案・設計を助けた。最初の出撃で提督と五月雨から厚い信頼を得たためだ。五月雨にとっては別の学校の人ではあったが、十分すぎるほど頼れる先輩で、彼女の生徒会の仕事のテクを少しずつ学んで成長に役立てる良い機会となった。


「那珂さん、この場合の任務の進め方ってどうすればいいんですか〜?」
 アップアップした様子で軽い涙声になりながら、五月雨が那珂に助けを求める。それを落ち着いた様子かつ明るく弾むような声で答える。
「それはね……こうするんだよ〜。五月雨ちゃん、学校の成績も良いし物ごとの飲み込みも早いんだから、もうちょっと落ち着いて考えるようにすれば、あなたならこのくらいはすぐ対応策思いつくようになるはずだよ〜。頑張って!」

 那珂こと那美恵は人のフォローも上手かった。そんな光景がほぼ毎日目の前で繰り返され、提督はそれを温かい目で見守る。その様子は仲の良い先輩後輩のようでもあり、姉妹のようでもあった。
 ときおりそんな提督の視線を茶化すかのように、

「提督ぅ〜那珂ちゃんに見とれるのはいいけどJKに手を出したら犯罪だよ〜」

と言い、提督を慌てさせた。

 なお、いつからか彼女は自分の艦娘名をちゃん付けで口にするようになっていた。相当気に入っている様子が伺えた。


--

 ある日、作戦任務の資料整理が終わり、提督と執務室で二人っきりになっている那珂。
「あたしね、アイドルになりたかったんだ。」
 彼女は突然そう口にした。秘書艦の五月雨はその日は学校の行事に集中するため不在。時雨たちも同様で、鎮守府には那珂、五十鈴など、五月雨たち以外の一部の艦娘しかいない時であった。

「アイドル?過去形ってことは今は違うのか?」
「うーんと、ちょっと表現違うかな。今は艦娘もやり始めちゃったし、純粋なアイドルは無理かなって諦めたってこと。もともとおばあちゃんがアイドルやってたそれへの憧れだけだったんだけどね。でも今はその代わりね、艦娘アイドルっていうの考えてるの!どうかな提督?」
 そんなもの初めて聞いたぞと呆れる表情をして提督は突っ込んだ。
 那珂は自身の考えているアイドル像を語りだした。艦娘として、闘いながら、時には市民の前で明るく歌って踊れる、少しくらいあざとくて憎まれ口を叩き叩かれてツッコミしあう、戦いの時とはうってかわってゆる〜い態度のアイドル。

「まあでも、光主さんなんでもできる娘だし、可愛いし、那珂としてもこのところ大本営から好評価って言われてるし。今後の艦娘としての活躍次第ではその夢、叶えられるかもな。」
 さらりと、何気なく可愛いという言葉を入れてきやがったよこの人。ふつーの人っぽいけどあなどれね〜と心の中で那珂はドギマギしつつ、ほんの少しだけ鼓動が速くなったのを感じた。大丈夫。きっと顔には出ていない……はず、とも。

「えへへ、ありがとー。それでね、艦娘アイドルになったらこの鎮守府を日本で、ううん。世界で一番有名な鎮守府にしてあげる!」
「夢がでかいなー。もしそうなったら、俺は君の最初のファンになりたいな。」
「もちろんそのつもり!ファンクラブナンバー000の名誉をあげる!んで、かつ提督はあたしのプロデューサー!」

「俺プロデューサーかい!だったらどうプロデュースするかな……。君の髪型をもっと可愛く個性的なものに変えるのもいいかな?」
「ほう?ズバリ言うとなんですかな、プロデューサー?」


 腕をくんで笑みを含んだ目で提督を見ながらその回答に期待をする那珂。提督も同じく腕をくんで少し大げさに悩んだすえに、答える。
「そうだな。頭の上でなんかこうクルクルっとまとめて整えるやつ。アレ。」
 髪型のボキャブラリーがないのでうまく言えない提督。那珂もそれだけじゃ全然わからない。なので今現在ストレートにおろしている髪を使って提督に聞いてみる。

「こう?」後ろ髪を一気に束ねてポニーテールのようにする那珂。
「いや。そうじゃない。」

 次に髪を両サイド耳の上あたりで束ねる那珂。
「こう?」
「うーん。惜しい。」
「惜しいってなにさw」

「じゃあこう?」
 髪がぐしゃぐしゃになるのが嫌なので、那珂は右半分の後ろ髪と、左側の横にかかる髪だけを手に取り、それを無造作にくるくる束ねてまとめ、それを後頭部の右上あたりに持ってくる。
「そうそれだ!」
「提督。これってね、シニヨンっていうんだよ。つまりお団子ヘア。……こういうの好きなの?」

 ややジト目になりつつ那珂は提督に確認する。それを受けて少し焦りつつも、自分の好みをペラっと喋ってしまう提督。
「いやまぁ、俺としては五月雨や今の那珂のようなまっすぐな髪がどっちかっていうと好きだけど、そういう変わり種もいいねということで。って何言わすんだ!?」
「自分で言ったんじゃんw ふぅん。提督はこういうもの好きなんだ。ふーん。」
「那珂は嫌か?」
「めちゃくちゃ嫌ってわけじゃないけど、まとめ方によっては子供っぽく見えちゃうのがね〜。でも提督が言うんだったら、今度試しにお団子ヘアにしてきてもいいよ。」
 まとめた髪を下ろして手櫛で整えながら那珂はそう言った。
「お、君も実はまんざらでもないってことか〜」
「エヘヘ〜。未来のプロデューサーの貴重な意見ってことでさ!」


 などと、那珂のアイドルの夢にノって冗談を交えて語らう。
 実現は難しいことと二人とも頭の中でわかってはいたが、夢を語るのは自由だ。軽い冗談なら意外とノリがいい提督は那珂の言葉にノリノリで冗談めかして言った。
 祖母がアイドルだったという彼女。提督はアイドルだったという彼女の祖母のことは時代が古すぎてわからなかったが、なんでもできる彼女が尊敬するくらいだ。きっとすごい人物だったのだろうと推測するにとどめておいた。

 光主那美恵という少女は人に自分がまじめに努力している光景をあまり見られたくなく、普段皆がいるところでは明るくお調子者っぽく少しおちゃらけている。それは学校でも鎮守府内でも同様だ。ただ一部の親友や責任ある場、鎮守府の責任者であり一番身近な大人である提督の前では、普段の陰の自分の様子を見せることもしばしばある。提督は那珂こと那美恵の素顔・人となりを知る数少ない人物となる。

 おちゃらけていたかと思うと、ふと真面目な面を見せる那珂。