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同調率99%の少女(2) - 鎮守府Aの物語

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--- 3 初遭遇



 月火水と、無人島付近の調査は何事も無く過ぎ去った。那珂が気になったことは杞憂に終わるのだと本人は感じていた。それならそれでいいかと。
 しかし五月雨たちが護衛の途中で遭遇した深海凄艦の出た日、つまり木曜日。その日の夕方の無人島付近の調査は那珂たちにとっても違う結果が待っていた。

 その日の夕方も午前と同じように出撃した那珂・五十鈴・村雨・夕立らは、無人島の本土よりの海岸線に沿って岩礁付近を大きく迂回し、裏側、つまり本土とは逆の海岸付近を探索しようとしていた。

 その途中、裏側に近いあたりの岩礁の岩にまぎれて、明らかに魚などの普通の海洋生物でない姿を発見した。

「え゛?なに……あれ?」
 那珂が裏声気味に一声出して驚く。
 数にして3匹。その姿は巨大な奇形の魚、カニ、そしてその両方が混じったような、並の人間なら生理的に受け付けぬ嫌悪感が湧きそうなグロテスクな姿形をした個体、その3匹である。

「あれが、深海凄艦よ。」
 五十鈴は鋭い目つきで3匹の深海凄艦を睨みつけて教えた。駆逐艦の二人も五十鈴の後ろでえぇそうですと言って頷いている。

 那珂は一瞬だけ吐き気を覚えたが、すぐにそれがおさまる。その際、頭の先からつま先までを涼しい風がスッと貫通していくような、妙な感覚を覚えた。
 目を閉じて胸に手を当てている那珂の様子を見て、五十鈴は肩を叩いて那珂を振り向かせ、コクンと頷いた。那珂も頷き返す。


「……よし、みんな行くよ!!」


 那珂たち4人は3匹の深海凄艦に立ち向かっていった。那珂は初めての集団戦にもかかわらず、3人に素早く指示を出していく。

「私と村雨ちゃんは真正面から、五十鈴ちゃんと夕立ちゃんは大きく迂回して反対側から、挟みこむように一気に近づくよ。」
「「「了解。」」」

 那珂と村雨は、五十鈴たちが目的の方向と距離に行くまで、ゆっくりと進んでいく。やがて五十鈴たちが那珂たちよりはるかに前、深海凄艦の背後の一定の距離のポイントまで到達し、那珂に合図を送ってきた。それを那珂は確認し、合図をしかえす。
 4人共急速に速度を上げて深海凄艦に近づく。やがて3匹の深海凄艦はそれに気づいて那珂たちと五十鈴たちの合間を縫うように移動し始めた。

 那珂と五十鈴はほぼ同時に掛け声を上げて、砲撃を開始した。村雨と夕立もそれに続く。
「てーー!」
「そりゃーー!!」

ドゥ!!
ドン!ドン!


 3匹いずれとも那珂の下半身と同じくらいの大きさではあるが、その巨体に似合わぬ素早い動きで那珂たちの砲撃をかわしていく。しかしちゃんと狙って撃てばまったく当てられぬほどのスピードと避け方ではない。しかし気を抜いて目を離すと見失う。全体的な身体能力が向上する艦娘でさえそうなるのだ。並の人間やその人間たちが扱う武器ではほぼ確実に当てられず、見失い、そして気づいたら体当たりや体液等の様々な攻撃でやられる。

 魚のような個体が村雨のほうにまっすぐ突進し、やがてトビウオのように海面からジャンプして体当たりをしてきた。

「あ、きゃあああぁ!!」
ドン!ドン!ドドン!

 村雨は悲鳴をあげながら単装砲を可能な限りの連続発射で打ち込む。

バチン!ズシャ!

 かなりの数打ち込み、そのうちの2〜3発が、魚のような個体の深海凄艦のところどころに当たり表面の鱗や肉を吹き飛ばしていく。しかしそれでも死ぬ様子はなく、体当たりの勢いは殺せずに村雨に当たる。

バチン!!!

 胸元手前の村雨の70cm付近で火花が飛び散り、魚のような個体は弾き飛ばされた。艦娘専用の電磁バリアの効果の一つだ。

 弾き飛ばされていく魚のような個体を側にいた那珂はすかさず自分の単装砲を近距離から連続発射して魚の頭や尾びれなど各部位を吹き飛ばす。やがてそれが海面に着水する頃には、深海凄艦だった肉片と化して、バラバラになって浮かぶ。那珂はその肉片をじっと眺めたのち、念のためそれらを再砲撃して砕いておいた。


--

 一方の五十鈴たちはカニのような個体と、もう一匹の個体と戦っていた。五十鈴は連装砲で、夕立は単装砲でそれぞれの個体を狙って撃つ。

ドン!ドドン!
ドゥ!

 それぞれの個体はそれをかわして五十鈴と夕立の周りをぐるりと回る。それに合わせて夕立は何度も砲撃をするが当てられない。

「このっ!このおぉー!当たれ!当たったっぽい!?……ダメだぁ〜!」
「夕立、無駄に弾を撃たないで。弾薬とエネルギーを早く消耗するわ。」
「けどぉ〜!」

 砲撃をやめて文句を言う夕立が五十鈴の方を向くと、カニのような個体が浮き上がり、泡のようなものを吹き出して夕立めがけて飛ばしてきた。


 ゴポゴポ、ブクブクと泡が宙を舞い、夕立の近くまで来ると、村雨の時と同じように火花と破裂音が発して響いた。
 と同時にその泡が夕立の電磁バリアに当たった時、同時に発した火花により発火して大きな火炎となってあたりに広がった。

「きゃっ!」
「うわぁ!!」

 突然巻き起こった火炎に五十鈴と夕立は二人とも驚いて後ずさる。まさか間近で火が発生するとは思わなかったのだ。

「この泡燃えるっぽい〜!?」
「……っ! 夕立、あの泡が私達のバリアに当たるのも危険そうよ。かわさないと。」
 五十鈴が注意喚起すると夕立はそれに頷いた。

 だがその火炎に驚いたのは五十鈴たちだけではなく、2匹の深海凄艦もだった。火炎が広がった瞬間、五十鈴たちの前後に位置取る形になっていた深海凄艦らは、動きを止めて同じように後ずさっていた。
 そのため五十鈴たちはそれに気づくと、2匹の間、横へと素早く移動し囲まれた状態を脱することができた。


 その様子を見ていた那珂たち。すでに魚のような個体を倒して、二人のところに近づく途中で火炎を見ていた。そして五十鈴たちと同様に動きを止めていた深海凄艦をも。
 那珂はその一瞬の状況を見逃さなかった。

「村雨ちゃん。あたしがなんとかして二人を急速離脱させるから、一緒に魚雷、雷撃するよ。いい?」
「はい。わかりましたぁ。」

 那珂が言い終わる前に五十鈴は自主的に深海凄艦の間から離れたため、那珂は五十鈴たちには一声大声で叫ぶだけにした。

「五十鈴ちゃーーん!もっと離れてー!」
 その声に気づいた五十鈴は
「は?」
とだけ言い終わるがはやいか、那珂と村雨が離れたポイントから雷撃を同時にした。

パシャン!
ドシュウゥーーー……


 那珂と村雨が魚雷を撃った位置は、きちんと当てられる射程距離内であった。二人の撃った魚雷は海中50〜80cmまで沈んだあと、那珂たちの向く方向へ斜め上、つまり海面に向かって急にスピードを出して浮上しながら進んでいった。
 そして……



ズガン!
ドパン!!
ザッパアァーーン!!


 那珂と村雨の撃った魚雷は、村雨のは奥の複合的な個体に、村雨の数歩分後ろにいた那珂のは手前のカニ型に命中してそれぞれ綺麗に爆散させていた。

 爆発の影響で少し水しぶきを浴びていた五十鈴と夕立は、那珂たちに近づいたのち、2〜3文句を言いつつも、勝利の喜びと那珂たちのナイスサポートを評価した。