英雄プルート
ごんっと鈍い音が響きました。
頭をぶつけた痛みにプルートは目を覚ましました。
目を覚ますとそこは、自分の小屋ではなく、やっぱり鉄格子の中でした。
鼻で大きくため息をつきました。
そこで異変に気付きました。
なんと、自分の口にも口輪がはめてあったのです。
驚いたプルートは急いでその口輪をどうにかして取ろうとしました。
前足でひっぱっても、鉄格子に引っ掛けてみても、全く取れませんでした。
プルートはとうとう涙を流しました。
ミッキーに会いたい、ミッキーに会いたい
そう強く思いながら、顎を地面に付け、ひたすら涙を流したのです。
するとまた大きな音がして、ドアが開かれました。
また誰か連れて行かれる…。
恐怖のあまり、プルートは自分の耳で目を隠し、震えました。
足音がどんどん近付いてきます。
怖い…怖い…
がくがくと震えます。
その足音が自分の檻の前で止まりました。
しまった…!
そっと耳を外して目を開けると
「プルート!!あぁ良かった!!」
そこにはミッキーの姿がありました。
また夢を見ているのではと、プルートは自分の頬を叩いてみましたが、夢ではないようです。
会いたかったと伝えたいのですが、口輪があるので、鼻がスンスンとなるばかり。
なので尻尾を大きく振りながら、一生懸命伝えました。
ミッキーは鉄格子の隙間から手を入れて、ひたすらプルートを撫でました。
プルートは暖かいミッキーの手に、すぐに幸せな気持ちになりました。
ミッキーは
「すぐに手続きをしてお前を出してやるから、必ずだよ」
そう言ってプルートから手を離そうとしましたが、プルートがその手を前足で掴み
撫でてと頭をこすりつけました。
今はこの幸せな時間が必要だったのです。
ミッキーはそれが分かったのか、鉄格子越しにプルートを力強く抱きしめました。
「怖い思いをしたね。」
そう言うとプルートは強く何度も頷きました。
ミッキーはよしよしとプルートの頭を撫でました。
するとプルートも落ち着き、目を閉じて安堵の表情を浮かべました。
それを見たミッキーはゆっくりとプルートから手を放し足早に出て行きました。
そのミッキーとすれ違いながら、先程の無表情の男が入ってきました。
プルートはミッキーの後ろ姿を見送りながら、いいこでお座りをして待ちました。
すると自分の目の前で無表情の男が止まりました。
そして、檻が開かれたのです。