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同調率99%の少女(3) - 鎮守府Aの物語

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--- 3 弱まる艦娘たち



 戦場の並びとしてはこうなっていた。(深海凄艦=敵)

前方:
 敵重巡級x1
 天龍(小破)、吹雪、深雪(小破)、
 白雪(中破)、龍田
 敵軽巡級x2
後方:
 那珂、時雨、夕立
 敵重巡級x1、敵軽巡級x1
 五十鈴、五月雨、村雨


「あ、雨だ……」と五月雨。
「ちょっとまずいわね。」と五十鈴も何かが気になった様子。

 一方の那珂たちも。
「雨かぁ。このまま長引くとまずいかもね。」と那珂。
「なんで?」
 とよくわかってない様子の夕立。それに対して那珂が説明をした。

「艦娘の艤装からは電磁バリアが出てるでしょ。それは雨みたいな継続して水がかかる状況だと効きが弱くなるってさ、提督から借りた本にあったから。」と那珂。
「そーだっけ?あたしよく覚えてないっぽい。」
「僕ら艦娘にとっては大事なんだからさ……ちゃんと覚えておこうよ。」
 曖昧な発言をする夕立に時雨が突っ込んだ。


 艦娘の艤装は、様々な攻撃をしかけてくる深海凄艦に対抗するために専用の最新型の電磁バリアが組み込まれている。2000年代も50〜60年経つ頃には、かつて映画やアニメなどで登場したような完全な電磁バリアとはいかないものの、かなり近い形で現実のものとなっている。
 深海凄艦が放つ特殊な体液や砲弾のようなものは装着者の100cm〜50cm以内に近づいた時点で高確率で破壊・消滅させて直接被弾する危険性をかなり減らせるようになっている(すべてではない)。深海凄艦の体当たりなど物理的な攻撃に対しては直接的な効果はなく防ぎきれないが、触れれば多少は弾いたり、電流でビリっとしびれさせてひるませる程度には有効である。

 艤装の電磁バリアの装置から放出される電流を安全に受信するチップを衣類に仕込み、その箇所を部分的な電磁バリアにさせられる仕組みも採用されている。
 そのため(一部の艦娘では制服が支給されているが)艦娘の着用する服は基本的には動きやすいもの、チップを取り付けられるだけの布地があるなら自由とされている。(戦闘中の衣類の破損を補償するため(特に学生艦娘)どういう服を着て出撃するかを事前に申請する必要がある)

 ただし艦娘の艤装の電磁バリアには弱点もある。水しぶきなど瞬間的に濡れる程度であればすぐに電磁バリアの機能は復活するが、雨天などの継続して濡れるシーンでは電磁バリアは受信するチップ等含めてショートするおそれがあるため自動的に無効化されるか、最小限の出力にまで落ちるようになっている。
 大体の艦娘は雨天時の防御能力の減退までは知らないという人がほとんどだが、勤勉な人物であればそこまで調べて艦娘をするので一部の艦娘たちはそれを踏まえて出撃任務等に挑んでいる。



 鎮守府Aの場合だと、那珂、五十鈴、五月雨、時雨の4人がそれに気づいていた。


「隣の鎮守府の人たち、もちろん知ってますよね……?」
 不安げに五月雨が言う。
「さあね。自信家の人があちらさんにはいるようだから私達が余計な口出ししなくていいんじゃないの。」
 五十鈴は冷たく言い放つ。

「隣の天龍さんたち、大丈夫かなぁ?」
 五十鈴とは違い、隣艦隊の心配をする那珂。
「一応通信して確認しておいたほうがいいのでは……?」
 時雨も心配になったので提案した。

 
 気になって那珂が天龍と龍田に通信してみると、天龍は息を飲むような様子をしたのが呼吸で読み取れたので、おそらく知らなかったか忘れていたことが伺えた。一方で龍田は知っているようだった。それから隣艦隊の状況を聞くと、小破2人、中破1人とのことだった。防御能力が弱まってしまっているこの状況は、隣艦隊にとってはかなりまずい状況なのは瞬時に理解できた。

 早く隣艦隊の支援に行ったほうがよいのはわかっていたが、那珂はひとまず自分たちに任された敵を倒すのが先だと判断し、五月雨にそう伝えた。


 五月雨から通信があり、どちらを撃破すべきかと那珂は聞かれたので那珂は五月雨を学ばせるためにあえて突き放すようなアドバイスをした。
「うーんとね。五月雨ちゃんたちとあたしたちと、深海凄艦の距離あるでしょ?目視でいいからさ、どっちがどういう位置関係か判断してターゲットにしてみよっか。」
 そういうと五月雨は少し考えたのち、軽巡級を狙うと言ってきた。
「わかった。じゃああたしたちは大きい方を引きつけて2匹の距離を離すようにするから、その間に速攻で撃破できるようにしてみてね〜」

 五月雨たちが軽巡級を狙うというので、那珂たちは重巡級に射撃をして引きつけることにした。時雨、夕立とともに五月雨たちとは逆方向に行くようにポイントを慎重に絞って射撃する。弾薬の残量も気にしなければならないのであまり多く撃つことはできない。
 那珂たちは数発だけ重巡級の本体を狙ってみたが、やはりカツンカツン!と弾く音しか聞こえない。装甲である鱗だが甲羅だかソレが軽巡級以上に硬いのが見受けられた。