二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

同調率99%の少女(3) - 鎮守府Aの物語

INDEX|11ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 


 射撃を行なっていると、突然重巡級が口を大きく開け、舌を筒のように丸めて何かを吐き出してきた。それは吐き出すというよりも、発射や砲撃したという表現がふさわしい行動であった。


ボフン!!!

「!!」「!!」「!!」


 重巡級の突然の行動に回避行動を忘れる那珂たち3人。狙われたのは……時雨だった。自分に向かって何かが飛来してくるのがわかった時雨。そのままでは真正面からその何かが当たる。その何かはよくわからないが艤装のバリアが弱まった今、素肌と距離が近くて薄い学校の制服にあたるとまずいと直感で時雨は感じ、とっさに背をむける。その何かに対して、背中の艤装を向ける形になった。

 時雨を助けようと移動しかけた那珂と夕立だったが距離的に二人とも間に合わない。夕立のほうが近いとはいえ、彼女も時雨に対して何かをしてあげられるほどの近さではなかった。が、夕立は時雨を突き飛ばすか最悪かばうために距離を詰めようと試みる。

 時雨が背を向けるのと、夕立が近づいたのはほぼ同時に行われた。
 そして当たる直前時雨がふと横に視線を送ると、かなり近くに夕立が近寄ってきていることに気づいた。


ズガアァァーーン!!!


 重巡級の筒上の舌から発射された何かは時雨の艤装に当たった瞬間爆発を起こした。その場には爆風が吹き荒れた。爆風で吹き飛ばされたのは直接当たった時雨だけでなく側まで接近していた夕立もで、二人とも海面に横たわるように着水する。

 直接被弾した時雨の艤装は表面の装甲が砕け散り、めくれ上がって内部構造もところどころ破壊されていた。艤装のコアと魚雷発射管の連動ができなくなっており全基使用不能、艤装の浮力を発生させる装置の一部も故障し、移動に支障はないが時雨は海面に浮かびにくくなってしまった。中破と判定されうる状態である。時雨本人は肉体に当たらないようにしたのが幸いしたのか、目立った外傷はなかった。背中から吹き飛ばされたときに衝撃で首を強めに曲げてしまったことによる軽いむち打ちと、強く海面に倒れた衝撃で軽い打ち身をした程度だった。

 一方夕立は爆風で吹き飛ばされ、なおかつはじけ飛んできた時雨の艤装の破片がスカート付近と片足の魚雷発射管にあたった。かろうじて残っていた電磁バリアで当たる速度は少しだけ落ちたがその衝撃で魚雷発射管は足から外れて無くなっていた。そしてスカートは破けてふとももがあらわになり、かすめた部分からは血がにじみ出ている。こちらは小破と判定されうる状態となった。
 
 夕立はすぐに起き上がって移動できたが、時雨は艤装の浮力が効くぎりぎりの体勢でしゃがんだまま立とうとしない。
「時雨!時雨ってば!大丈夫?ねぇ!」

 夕立が必死に呼びかけると反応はするが意識が朦朧としている様子。急いで那珂に大声で知らせる。通信するのを忘れるくらい夕立は慌てていた。
「那珂さん!どぉーしよぉ!!時雨が死んじゃうよぉー!!」

 爆風の影響を多少受けていた那珂だったが時雨が吹き飛ばされた位置まですぐに辿り着いた。
「時雨ちゃん、大丈夫?死んでない?」
「だいじょう……ぶです。ふたりとも、僕を勝手に殺さないで……ちょっと頭がふらふらするだけだから。」

 二人の状態を把握する那珂。夕立は1基の魚雷発射管が吹っ飛んでなくなっただけで健康状態も良さそう、まだ戦えそうだと把握したが、時雨は艤装は実質的には大破同様、本人の健康状態も思わしくなさそうで、戦闘続行は不可能と判断した。

「うーん……夕立ちゃん。時雨ちゃんを連れて護衛艦に戻ってくれるかな?」
「え、はい。それはいいけど、それじゃあ那珂さんは?」
「あたしは一人でも大丈夫。適当にあしらって五月雨ちゃんたちと一緒に残りを倒しておくよ〜」
 さっさと行けといわんばかりに、手をひらひらさせて時雨を早く連れ帰るように夕立を促す。
 
 爆発音を向かい側で見聞きした五月雨から通信が入る。爆発から少し経ってから通信を入れたということは、その最中までは五月雨たちは軽巡級とのまさに戦闘まっただ中ということが伺えた。今は落ち着いたのだろうと那珂は推測した。
「ついさっきものすごい爆発音しましたけど、大丈夫ですか?」と五月雨。

「うん。時雨ちゃんが中破したの。敵の砲撃食らっちゃって。」
「え!?中破ですか!?だ、大丈夫なんですか……!?」
 一気に取り乱して五月雨が聞き返す。
「落ち着いて五月雨ちゃん。本人に外傷はないから。だけど意識がちょっとふらふらして危なそうだから護衛艦に引き返すように指示したよ。夕立ちゃんも小破してるから彼女に護衛してもらって一旦二人とも下がらせるから。ところでそっちの小型のやつはどーお?」
「問題ないわ。倒したから安心して二人を戻らせて頂戴。」
 返事をしたのは五十鈴だ。

 残った重巡級は那珂や五月雨たちの周りをぐるりと大きく回ろうとしている。そのため逆の方向から時雨と夕立を逃がすことにした。念のため隣艦隊の天龍にも通信する。自分らにも中破のやつがいるから下がらせたいが、素早い軽巡級に回りこまれてて逃がせそうにないとのこと。手が空く艦娘がいるなら自分らのほうの撃破を手伝って欲しいとお願いしてきた。
 彼女らはまだ、重巡級と軽巡級に苦戦しているのだ。軽巡級のほうは1匹倒していた。