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同調率99%の少女(3) - 鎮守府Aの物語

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 もう一匹の重巡級のことは天龍らに任せて那珂たちは双頭の重巡級をどうにか倒そうと模索する。
 那珂たちの位置は、次のようになっていた。

村  双頭の重巡級  
          那
       鈴
       五

 村雨が他の3人とやや離れている。村雨は自身の被害状況を3人に伝える。片足の魚雷発射管が取れてなくなってしまっていること、それ以外は無事だということ。
 那珂はそれを確認し、胸をなでおろした。そして、頭の別の部分ではさきほどの五月雨の何気ない砲撃の結果を思い出していた。

 五十鈴を誤射してしまったが、そのうち一発は、五十鈴ではなく別の何かに当った音が聞こえたのだ。那珂はとっさに想像を張り巡らせ、確証を得るために少しだけ双頭の重巡級の正面になるように移動し、当たったであろう部位を探すために探照灯を直に当てた。


 那珂はそれを見つけた。そしてすぐさま3人に伝える。

「みんな、あの2つ頭のでっかいヤツには、普通の砲撃が効くよ!あたしが照らし続けるから、みんなで撃ちまくって!」
「わかったわ!」
「はい!」
「わかりましたぁ!」

 那珂に近づこうとしていた五十鈴と五月雨は那珂から距離を置き、双頭の重巡級を半周取り囲むような位置取りをした。

村  双頭の重巡級  那

   鈴    五

 村雨は移動しなかったため、探照灯が当たった双頭の重巡級めがけていち早く単装砲で砲撃し始めた。続いて那珂、五十鈴、そして五月雨も砲撃を始めた。

ドンッ!!ドン!ドドン!!
ゴッ!!
ドカン!!
バーン!

 単純な爆発音に混じって、装甲らしき皮膚や鱗を弾き飛ばす音が聞こえる。4人の耳には確実にダメージを与えている音が聞こえてきた。

 何発か当たると双頭の重巡級は苦しみもがいている様子を見せ、そして砲撃から逃れるように移動を始める。図体がでかいので移動しても那珂の探照灯にすぐに当てられる。那珂たちの陣形を崩そうとするかのように一角である五月雨の方に向かってきた。

「わ!わ!どうしよ!?」
五月雨がどちらの方向に避けようか迷っていると、五十鈴が叫んだ。
「五月雨!私の方に逃げて来なさい!」

 その言葉を聞いて五月雨は五十鈴の方に進もうとした。移動し始めるのが遅かったので、双頭の重巡級の突進にかなり近い位置での回避となった。そのため双頭の重巡級が突進してきたときに出来た大波に足を取られ、日中と同様に身体の横から海面に倒れこむ形で身体の半身を濡らしてしまった。

「ふえぇ〜ん。またびしょ濡れだよぉ……」
「それくらい我慢しなさいな。それよりもまたあいつを囲むように位置を取るわよ。そうでしょ!那珂!」

 最後に五十鈴は大声で那珂に確認を求めると、那珂は探照灯を縦に振って答える。頷いたという印だ。

 元々五月雨がいた位置からぐるりと大きく方向転換をして那珂の方にむかってくる双頭の重巡級。探照灯を照らすために那珂も合わせて方向転換をする。それに合わせて他3人も双頭の重巡級を狙える位置に移動した。



「さー、来なさいな〜一番の見せ場なんだからさ〜!」
 あたかも挑発するように那珂はひとりごとを言う。もちろん深海凄艦に聞こえたところで理解されないので挑発の意味は全くない。


 那珂に近づいてくる最中、双頭の重巡級は身体のいたるところに開いているすこしだけ管状のものが飛び出た穴から、一斉に体液らしき"何か"を発射してきた。それの第一波が着水した。那珂たちはいない、何もないポイントである。激しい水しぶきを立てて爆発を起こした。

「うわっとっとっと!あっぶなぁ〜」
「きゃっ!」
 幸いにも4人とも当たらずにすんだが、その威力は肌で感じた。当たってしまえば艤装の電磁バリアでも防ぎ切れるかどうか怪しいとふむ。


 "何か"の発射の第2波が来た。今度は那珂達の位置にかなり近い場所に飛んできたのでそれぞれその場から移動して避ける。

 続いて第3波、第4波。あたり一面に"何か"の爆発で起きた水柱が立ちまくる。水柱という障害が夜間の視認性の悪さに拍車をかける。

「っ……!これじゃあせっかく砲撃が有効だってわかっても思うように攻撃できないわ。狙いにくっ……」
 "何か"の爆発と水柱を避けながら五十鈴が愚痴る。

 発射している間も双頭の重巡級は少しずつ移動していた。まったく狙えないわけではなかったが、水柱にあたると砲弾の速度が若干落ちるので、当然威力も落ちる。人の当然の反応として水柱を避けようとしてうまく狙えなくなる。直接本体をしっかり狙える状況でないとしっかりダメージは与えられそうにないことは明白であった。

 爆発と水柱を避けているためすでに当初の陣形は崩れている。しかしながら探照灯を持っている那珂を狙って近づいているであろうことだけは全員わかっているので、それだけが頼りだった。
 狙える位置に近寄ろうとするも、第5波、第6波が飛んできて4人の進路の邪魔をする。これがこのまましばらく続くのなら埒が明かないと4人は思っていた。