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同調率99%の少女(3) - 鎮守府Aの物語

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--- 8 勝利の帰還



 探照灯の光が海上に落ちてきた。那珂は双頭の重巡級だった破片の上に一旦着地し、その後よろけるように着水した。敵の撃破をわかっていたので、次に那珂が発した一言は、五十鈴が聞き覚えのある一言だった。


「いえ〜い!那珂ちゃ〜んスマイルぅー!」
 那珂はその場でくるりと回転してポーズを取った。夜間で誰からも見えてないそのポージングに対して、五十鈴が大声でツッコミを入れた。

「探照灯で自分を照らしなさいな!それじゃあせっかくの決めポーズも誰も見えないわよ!」
「アハハ、確かに!」
「那珂さぁ〜ん! こっちきてもう一回ポーズしてくれないと〜」
五月雨は心から笑い、村雨は五十鈴につづいてツッコミにノる。


 天龍たちはその少し前に重巡級を倒しており、那珂たちが勝利したのがはっきりわかると、那珂たち4人のもとに近寄っていった。

「よぉ、そっちも片付いたようだな。」
「えぇ、那珂が最後に決めてくれたわ。」
「探照灯が宙に舞ったと思ったら大爆発を起こしたって……あいつは一体なにをやったんだ?」

 天龍が五十鈴にそう質問をすると、離れたところで探照灯をくるくる回して五月雨と村雨の二人と一緒になってはしゃいでいる那珂を見て、こう言った。
「講習や教科書どおりにしか扱わない私たちじゃ、思い浮かばないような魚雷の撃ち方よ。ほんっとあの娘、いい発想してるし、いろんなものによく気づく人だわ。」
 ふぅん、となんとなく察しがついた天龍は納得したという表情をした。

「五十鈴ちゃん!天龍さん!」
五月雨たちと一しきり喜び合った那珂が五十鈴たちのいる場所に来た。
「おー、那珂さん。やったようだな。」
「うん!バッチリね〜。」

 軽々しく勝利の言葉を述べているが、五十鈴はやや納得していない様子を見せる。
「ちょっと那珂!あんた、あのふっとばされるのも、前みたいな魚雷の撃ち方するのも、すべて狙ってやってたの? どうなのよ!? 下手したらあんた……あのまま食われてたかもしれない最悪の事態だったのよ!?」
 五十鈴はついつい激昂してしまった。そんな様子を見た那珂はやはり軽々しく五十鈴に説明する。

「まっさか〜。狙ってやってたわけないじゃない!さすがのあたしも実は本気で焦ってたよ?」
手をブンブンと顔の前で振って否定する那珂。
「じゃあ……」
「魚雷をとっさに撃てたのも、水しぶきが近くを舞っていたのも、化学反応ぉ?してお口に飛び込んでいったのも、すべて偶然。今回は、ホントに運がよかっただけ。いや〜参ったね〜。」
 事実那珂は本気で焦り、恐怖を感じていたが、機転だけは聞かせるだけの冷静さがあった。
「偶然って……それでもその判断、すごすぎる。私じゃ……きっと出来ずに喰われて死んでたかもしれない。」
「はぇ〜。すべて偶然で片付けちまう那珂さん、あんた只者じゃなさすぎるわ。こういうのなんつうんだっけ龍田?」
「…脱帽した。」天龍のすぐ後ろに佇んでいた龍田は一言で天龍に回答した。
「そうそれ!脱帽したわ。」

「も〜三人共おおげさ〜! でも死んでたかもしれないってのはホント、ありえたかもしれない。そんな心配させたのはゴメンね、五十鈴ちゃん。」
 身体を揺らしておどけながら口を動かしていたが、最後に五十鈴に真面目に謝った。
「べ、別に本当にあんたの心配してたわけじゃ……!」
 五十鈴はテレビドラマや漫画でよくある紋切り型の照れの仕草をして那珂に言葉をかけた。その真意では本気で心配していたという意味がこもっていたのに、那珂は気づいていた。


--

 その後、撃破証明のため天龍は自身の眼帯型のスマートウェアで双頭の重巡級だった肉片のうち、その形がわかるような部位を撮影した。
 一方の那珂たちは周囲に新手の深海凄艦が近づいていないかどうかを確認し、安全を確保して最後の一仕事をする天龍と龍田を警護した。

「終わったぜ。さ、帰ろう。那珂さんよ、指示を出してくれや。」
 天龍は背伸びをしながら那珂に催促する。
「うん。よーしみんな。敵倒したし、帰るよ!」

 各々その指示に返事をし、那珂を先頭としてその場から離脱、6人は護衛艦のもとへ帰路についた。那珂から連絡をもらって、甲板照射灯が全部つけられて目立っていた護衛艦がすぐに見えてくる。


 護衛艦に戻り、那珂と天龍は待機していた艦娘たちに勝利と事の顛末を伝えた。隣艦隊の艦娘たちも鎮守府Aの時雨と夕立も、まるで自分のことのように喜び、戦闘から帰ってきてヘトヘトな6人にねぎらいの言葉をかけた。
 そしてその場での報告会をもって、2つの鎮守府それぞれ所属の艦娘たちによる、臨時編成の艦隊は解散した。


 護衛艦はその海域から一旦離脱し、自衛隊隊員や艦娘のもろもろの作業のために再びしばらく停止したあと、本土へ向けて進みだした。艤装を外して普通の少女に戻った各々は休憩したり食事をとったり、旗艦を務めた艦娘らはそれぞれの鎮守府に向けての報告メールを作成する。そうこうしていると、時間はすでに0時を回っていた。日本本土まではまだあと2〜3時間ほどかかる。