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もしも獅子尾エンドだったら (2)

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ピンポーン ガチャ

「いらっしゃい。」

休みの日の先生だ。

ちょっとボサボサの髪と、ラフな格好。

「あがって。」「おじゃまします…」


「今日、ここ来てること、ゆきちゃんは…?」

「あ、言ってません…」

「この間、怒られた?」

「いえ、でも…許さないよって
 言われました。」

「だろうなぁ…」

獅子尾はコーヒーをいれながら、
フッと苦笑いをした。

「はい。コーヒーだけど。」

「ありがとうございます。」

何から、何を、話していいのか
躊躇っていると、獅子尾が先に口を開いた。

「馬村とはどうなった?」

「えと、……わ、別れました。」

「馬村は何て?」

「私が幸せならそれでいいって…」

「マジか!アイツ大人だな。」

16のくせにどこまで男前なんだと、
コーヒーを飲みながら獅子尾は
ブツブツ言っている。

「いいの?オレ、大人なのに
 すごいガキみたいだけど。」

「私もガキですもん。」

「そっか。精神年齢一緒か。」

「え…いや、そんなつもりで言ったんじゃ…」

すずめは焦って手を前にして振った。

「生徒の彼女を盗るとか
 教師としてサイアクだろ。」

「盗るだなんてっ…」

先生を選んだのは自分だ、と
すずめは思った。

「うん…でも、サイアクだろうと格好悪かろうと
 もう馬村にはやれない。」

ジッと獅子尾にみつめられ、
真顔でそんなことを言われると
どうしていいかわからず、
一気に体温があがるのを感じた。

「すずめ。」

「はい…」

「何があっても好きだから。」

すずめは、カァァァッと顔が熱くなって、
パッと俯いた。

以前は、獅子尾が自分のことを
好きなのかどうか、何を考えているのか
さっぱりわからなかったが、
今度はちゃんと言葉にしてくれる。

もうきっと大丈夫、と、すずめは思い、
顔をあげ、獅子尾の目を見据えた。

「たぶん…」

「どこも連れて行けないし、
 誕生日もクリスマスも人の多いとことか、
 普通高校生が行きたがるとこには
 行けないと思う。
 でも、気持ちはずっとあるっていう自信はある。
 そういう不確かなもので…ホントに待てる?」

獅子尾の言葉を少し考え、すずめは応えた。

「先生こそ。」

「たぶん私、同級生とでかけたり、
 普通に話したりしますよ?
 その中には男の子もいるかも…
 もちろん2人ではしないようにするけど、
 疑われないように、先生のこと
 無視するかもしれないし、
 馬村も同じクラスだから
 ずっと近くにいると思いますけど…
 それでも私のこと、信じてくれますか?」

獅子尾はジッとすずめの目を見て
話を聞いていたかと思うと、
そっと目を伏せ、しばらく黙った。

そして目を開いてすずめのほうを見た。

「信じるよ。もうあんな思いはしたくないんだ。」

「ごまかしたり、言葉を濁すことももうしない。」

「同じ間違いはしないようにする。」

「すずめにはちゃんと自分の将来とか進路とかも
 考えて欲しいし。
 すずめが高校生の間は教師と生徒でいる…
 でも俺のことで不安になったら
 メールでもいいからすぐ言ってほしい。」

獅子尾の真剣な言葉に、
すずめは、なぜ前はあんなに
何もかもが不安だったのだろうと
不思議に思った。

それと同時に、獅子尾とも
穏やかな気持ちになれることを感じた。

「わかりました。」

そう言って笑うすずめの顔は屈託がなく。

思わず獅子尾はすずめの体を抱き寄せた。

「えっ。」