もしも獅子尾エンドだったら (3)
獅子尾は3年生の担任なので、
学校に来たからといってなかなか会えなかった。
怪しまれる行動は避ける。
そう約束したので、
会いに行くことはしない。
同じ学校内に居るのに、
思ったより寂しかった。
「オイ。」
放課後、呼ばれたので振り向くと、
教室の入口に馬村が立っていた。
「亀吉達が一緒にマ〇ク行かねえかって。」
「え、あ、うん。行く。」
みんなと一緒ならいいだろう、とすずめは即答した。
「ふん…じゃあ、オレ先帰るから。
みんな下駄箱んとこで待ってる。」
「え、馬村は?」
「…オレは…用事。」
「あ…そうなんだ。」
すずめはホッとしたような、残念なような、
微妙な気持ちになった。
馬村抜きでみんなとマ〇クで喋っていても、
どことなくポッカリ穴が開いた気分だった。
馬村はいつも黙ってついてくるだけだけど、
すずめにとっては大きな存在だった。
「ひどい顔ねー。」
「え?」
「逃がした魚は大きいって?」
「は?なんでっ。そんなこと思ってないよっ。」
マ〇クからの帰り道、
ゆゆかに図星をつかれ、
慌てて誤魔化した。
「全く。いい男が2人で取り合うほどの
いい女でもないでしょうに。」
「ホント…そうだよね…」
「先生はドキドキする好きで?
馬村くんは落ち着く好き?」
「えっ、あっ、なんでっ…////」
ゆゆかに図星をつかれ、すずめは戸惑った。
「まるで恋愛するなら先生で、
結婚するなら馬村くん、
って言ってるみたいよね。」
「何それ、わ…自分サイアク…」
「よくわかってんじゃない。
でも今は獅子尾先生を選んだんでしょ?
じゃあ、それに向き合ってみるしかないんじゃない?」
「う…ん。」
ピリリリッ
メール音が鳴って、獅子尾からのメールを開く。
『まっすぐ家に帰ったか?
こっちは夜まで帰れそうにない。
新学期始まると忙しい。』
ふ、と思わず笑みがこぼれる。
どうでもいい文章だが、
それがまた嬉しい。
『亀ちゃん達とマ〇クに行って
今から帰ります。
お仕事頑張ってください。』
『キミ達若いからって
ファーストフードばかり食べてると
太るよ?』
『その分動きます。』
『まーうらやましい。俺は身動きとれない。
気をつけて帰れよ。』
「ニヤついちゃって…メール、先生から?」
「えっ、は、ごめんっ。」
「別にぃ。じゃあ、私は帰るから。」
「う、うん。また明日。」
そう言ってゆゆかと別れた。
作品名:もしも獅子尾エンドだったら (3) 作家名:りんりん