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もしも獅子尾エンドだったら (6)

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どのみちバレンタインも2人にはなれない。

すずめはバレンタインに、
『チョコは3/2でいいですか?』
とメールを送った。

『楽しみにしてる。』
と返事があった。

馬村にはあげようかどうしようか迷ってやめた。

今は義理でもあげてはいけない気がした。

前期試験が終わり、いよいよ卒業式の日を迎えた。

廊下でボーッとする馬村に、
ゆゆかが声をかけた。

「いつまで好きでいるの?もう諦めるの?」

「は?…なんでそんなこと
 お前に言わなくちゃいけないんだよ。」

馬村はそう言いつつ、答えていた。

「…オレの気が変わるまで何もしねえよ。」

「イモ女の気が変わるまでって
 言うのかと思った。」

「そんなに気が長くねえし。」

「どっちが長いやら。」

馬村は少しムッとした。

「女は変わり身が早えな。」

「だから女は長生きなんじゃない?」

「ああ言えばこう言うな。」

「どうもありがとう。」

馬村はフッと笑った。

「馬村くん。」

「あ?」

「馬村くんのおかげで、
 私、高校生活、楽しかった。
 ありがとう。」

「何にもしてねえけど。」

「してなくても、よ。」

「変なヤツ。」

お互い好きになることはないだろう、
という安心感からか、妙な関係が
馬村とゆゆかの間に生まれていた。

もともと察しのいいことでは
二人はよく似ていたので、
馬村もゆゆかにありがとうと言われて
悪い気はしなかった。

教室に入った馬村は、
すずめが1人でボーッとしている側に来た。

「オイ。」

「あ、馬村。」

「オマエのおかげで高校生活楽しかった。」

「え、何で。急にそんなこと…」

「さっき猫田に言われて…
 オレもこの機会に言っとくかと思って。」

「なんだよ、改まって…私も。
 私も馬村のおかげで楽しかった…」

よ、と言おうとしてボロボロと
涙がこぼれた。

「わっ、なんだよ、変なこと言ってねえだろ?」

「う~~~」

卒業したらもう馬村とは会えないかもしれない。

そう思うと悲しくて、辛くて、穴が空いたようで、
でもそれは口にできなくて。

卒業までの1日1日が待ち遠しいのと
寂しいので、すずめは
ぐちゃぐちゃな気持ちになっていた。

それを見透かしたように馬村は言った。

「オレがオマエをマジで友達として
 見れるようになったら、また連絡するから。
 だから終わりじゃねえよ。」

すずめは馬村を見て、またボロボロ泣いた。

「泣かすために言ったんじゃねえよ。」

「うん…うん。ありがとう、馬村…」

「わーーん、すずめちゃーん、
 卒業してもまた会おうねぇ!」

馬村と2人でシミジミしていると、
亀や鶴も泣きながらやってきた。

クラスのみんなでオイオイ泣いて、
泣いた顔で写真の撮りあいをした。

嫌がる馬村も引きずり込んでの撮影会だった。